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四話

 ギルドを出て言われた通りに進むと流れ星の書かれた看板が見えてきた。


「あれか」


 目的の宿の名前は北の流星亭のためあの看板は名前をそのまま表したものだが北というのは何処から出てきのだろうか。

 宿の大きさはここに来るまでにあった宿よりも一回りほど大きいが作り自体はオーソドックスなものだ。一階は食堂で二階と三階が宿になっている。他の宿と違うのは泊まる客層だ。北の流星亭は中規模の商会やキャラバンなど商人が泊まることの多い宿である。その為、安全という面は他の宿よりも良いがその分、宿泊代が高くなっている。後、食事が美味しいらしい。

 ここに来るまでに聞いた北の流星亭の情報を思い出している内に宿の前についたのでそのまま中に入る。一階は食堂になっているが今は昼を過ぎて三時間ほど経っているので殆ど人の姿はなく、数人いる程度だ。


「いらっしゃいませ。宿泊ですか?それともお食事で?」


 女将らしき中年の女性がこちらに気がついたようでそう声をかけてきた。


「宿を頼みたい」

「ありがとうございます。宿泊料金は前払いになっていまして、朝と夜の食事付きで一泊銀貨四枚です。もし十日以上滞在されるのであれば一括払いになりますが金貨三枚と銀貨六枚になります」

「それで頼む」


今から他の宿を探すのは面倒臭い。それに、他にいい宿を知っているわけでもないので殆ど悩む事もなく金貨を四枚取り出してその女性に渡す。


「はい、ありがとうございます。では、お釣りの銀貨四枚になります。他に何かありますか?」

「今から食事って出来るか?」

「ええ、大丈夫ですよ。ただ、宿泊代に含まれない食事になりますので別料金になりますが」

「ああ、頼む」


 そう言ってお釣りの中から銀貨一枚を渡す。


「承りました。それと、申し遅れましたが私はこの宿の女将をやっているベルタと言います」

「俺はハルトだ。当分はこの街にいるつもりなのでしばらく世話になる」

「はい、よろしくお願いします。食事はすぐ用意できるので席でお待ちください」


 言われ通り席で待っているとすぐに料理が来た。出されたのはパンとシチュー、サラダにワインだった。

 この二ヶ月は森の中に居たので森で採れる香辛料を使っていたが森の中だけでは何か足りな事が多かった。なので、しっかりと香辛料の使用された食事は久し振りだ。

 食べ終わった後は特にやることもないので借りた部屋に行って荷物を整理することにした。料金が高いだけあって部屋は綺麗でベットや布団も柔らかい。


「そういえばベットも二ヶ月ぶりだな。森の中じゃずっと寝袋だったしな」


 そのままベットに寝転んで息を吐く。このまま寝てしまいそうだが荷物を整理するため起き上がりアイテムボックスを開く。

 今、アイテムボックスにはバークレイのところから回収した金とバークレイの斧、野営に使う道具、後は森の中で自作した物が色々が入っている。

 バークレイのアジトを襲撃した時は片っ端から放り込んでいたのでどれだけあったのか確認していないなと思い、回収した金を取り出す。数えてみると白金貨が三十六枚、金貨が三十二枚、銀貨が四十五枚、銅貨が十三枚だった。


「有名な盗賊団だったようだがかなり持ってたんだな。まあ、商隊なんかも結構、襲撃されてたらしいしこんなもんか」


 金に悩まくてもいいのは有難い。そう思いながら確認も済んだので硬貨ごとに分けて袋に入れ、アイテムボックスに片付ける。そして、バークレイの斧を取り出す。こちらもしっかり確認していないので詳しく解析するためだ。


「『アナライズ』」


 アナライズは物を解析する魔法だ。人など生物には使えないが解析阻害などがかかっていない限りどんな物でも解析できる。

 それによるとリジェネレーターと言う名前のようだ。効果もあの時見たままで欠損しない限り肉体を再生し続け、それに合わせて肉体の活性化を行うというものだ。


「さて、こいつをどうするか。使う……のは武器はあるし無理だな。予備に持っておくのも悪くないが魂喰らいはどっかに飛ばされても呼べば手元に戻ってくるから意味が無い。売るのもバークレイを倒したのが俺だと言っていない以上できない。……アイテムボックスの容量はあるしすぐに決める必要もないか」


 結局、使い道を思いつかなかったのでアイテムボックスに戻す。


「もうやることがないな。流石に寝るには早すぎるし……宿の周りを一通り見ておくか」


 そう思ったので宿を出る。王都なだけあって外は人酔いしそうな程の人がいる。

 元の世界では田舎という程でもないが交通機関が車メインになる場所に住んでいたのでここまでの人が歩いているのを見るのは初めてだ。

 そんな人混みの中を進みながら色々見ていく。と言っても武器や防具は貰ったものがあるし、ポーションなどの薬類は魔法を込めた物でないと即効性がなく、そういった物は非常に高価だ。

 その為、特に何か買う事もなく大通りを歩いていたのだが人混みに疲れたのであまり人の居ない路地に入る。そのままその路地を進んでいくとハンマーと金床の書かれた看板が見えた。


「こんな所に鍛冶屋か……ここなら丁度いいかもしれないな」


 ここに来るまでに考えていたことがあるのでその鍛冶屋に入る。


「客か?済まねえが今日はもう店仕舞いだ、注文なら明日にしてくれ」


 入るときにドアベルが鳴ったのでそれで気がついたのだろう。戦士と言っても通じる程の筋肉がついたドワーフが声を掛けてきた。


「いや、注文じゃなくて聞きたいことがあってな、マジックアイテムの作成をしてもらいたいんだが出来るか?」


 マジックアイテムとはバークレイの持っていた斧、リジェネレーターのような特殊な効果を持つ物のことだ。マジックアイテムには手に入る方法が二つがある。

 一つは人工的作れる方法で魔法を使える者が時間さえ掛ければ割と簡単に作れる。

 この世界では魔力を凝縮することで魔石と呼ばれる球体の結晶が作られるのだがこの魔石は魔法を込めることが出来る。そして魔法を込めた魔石を装備品に取り付けると込められた魔法の効果を発揮するマジックアイテムになる。また、魔石は凝縮された魔力の量が多いと込めることの出来る魔法の数が増えるので莫大な魔力を凝縮して作られた魔石は複数の効果を発揮する事ができる。因みに、込めることの出来る魔法が一つの魔石を三級、二つの魔石を二級、三つの魔石を一級と呼んでいる。四つ以上込められるようにすると凝縮された魔力が多すぎて不安定なものになってしまい、いつ砕けて凝縮された魔力が爆発するかわからないので出回ってない。

 そして魔石を手にれる方法は基本的に三つある。

 一つ目は魔法使いが魔力を凝縮することで作る物。ただ、この方法は熟練した魔法使いでも一年かけて三級魔石が一つと非常に時間が掛かる。しかも、二級以上にしようとするとどんどん必要な魔力が上がっていくので二級以上は殆ど作られない。

 二つ目は魔物の体内で魔力が凝縮され、魔石になることがあるのでそれを倒して回収する方法。これは一つ目と違い時間はかからないが高ランクの魔物でないと殆ど作られ無いのでかなり危険が伴う。また、魔物が強ければ強いほど作られる魔石の等級が上がるので一級魔石はAランク以上の魔物でないと手に入らない。

 三つ目は自然に存在する地脈などの高濃度魔力領域の中でも極端に魔力の濃い場所で発生したのを回収する方法。こちらは凄まじい魔力が存在する場所で作られるので等級の高い魔石が手に入りやすいが高濃度魔力領域は高ランクの魔物が出現しやすいので二つ目より危険度が高い。

 マジックアイテムを手に入れるもう一つ方法はダンジョンから手に入れることだ。

 この世界には世界各地にダンジョンが存在する。どのダンジョンも迷宮のような作りになっていて宝箱が置いてある。その宝箱にマジックアイテムが入っていることがあるのでそこから手に入れる。

 こちらは魔石を使い人工的に作る物とは違い魔石がついていない。その為、魔法では再現できない効果か魔石で付与した場合よりも強力な効果になっている。リジェネレーターは魔石がついていないためダンジョンで手に入れたものになる。

 なぜダンジョンが存在するのか?なぜ宝箱があるのか?といった謎は解明されていないらしいが神に貰った知識の中に答えがあった。

 どうやらこの世界のダンジョンは神が作ったもので簡易的な神の試練らしい。ダンジョンという名の神の試練を命を対価に挑ませ、突破した者には強力な装備という力を与える。そういうシステムになっているようだ。その為、ダンジョン内で手に入るマジックアイテムは簡易的な物とはいえ神の武器になるので加工ができない。その代わりに非常に高い耐久力があるのでほとんど折れたりすることはないようになっている。

 で、この鍛冶屋に入ったのはその魔石を取り付けて貰うためだ。

 俺は莫大な魔力を持っているため、込められる魔法が一つの魔石であれば一日掛ければ作ることが出来る。だが、金属加工はできないのでマジックアイテムを作ろうとするとその魔石を取り付けて貰う必要があった。


「そりゃ出来るが、んなもんは大通りの工房に頼め」

「事情があってな。これを見てもらえればわかる」


 そう言って一級魔石を取り出してそのドワーフに渡した。


「こいつは……一級魔石か!確かにこんなもん持って客の多い店はいけねえな」


 一級魔石は非常に珍しいためとてつもなく高価だ。それこそ一つ手に入れば過度な贅沢をしない限り一生暮らせるほどの価値がある。持っているのが知られたりすると奪おうとかなりの数が襲ってくるだろう。


「そういうことだ。それで、頼めるか?」

「ああ、いいぜ。だが、さっきも言ったが今日はもう店仕舞いだ。明日持ってきてくれ。それと、まだ名乗ってなかったが俺はエリクだ」

「冒険者のハルトだ。これから何度か加工を頼むだろうからよろしく」


 エリクの工房を出て空を見上げるともう随分と暗くなり始めているようだ。


「そろそろいい時間だな。宿に戻るか」


 付与する魔法を考えながら宿へと戻り、夕食を摂った後は二ヶ月ぶりのベットだったこともありすぐに寝てしまった。

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