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三話

 王都へはあれから二日ほど掛かり、廃村を出てから三日目の昼に到着した。道中は一日目にフレデリックと試合をした以外何もなくのんびりとしたものだった。

 当然行ったことがないので王都について聞いたところアレルドという名前の街だそうだ。

 外を眺めていると外壁が見えてくる。


「あれが王都アレルドですよ」


 そのまま外壁に近づいていくと門の所に行列ができていた。関所の順番待ちだろう。こちらは王国騎士団の馬車なので、特に確認など無いようだ。

 関所に並んでいる列の横を通り過ぎ、門を抜けると街の喧騒が聞こえてくる。そのまましばらく馬車に揺られているとフレデリックが話しかけてきた。


「もう少しで到着しますよ」

「そういえば何処に向かってるんだ?」

「王国騎士団の本部ですよ。貴方が冒険者ならギルド経由で報奨金を渡したのですがそうではないようなので直接渡すためですね」

「そうか、申し訳ないな」

「仕事の内ですから気にしてませんよ」


 その後すぐ騎士団の本部に到着し、フレデリックに続いて建物の中に入る。エントランスホールには二人の男女がいて何か話している。

 男の方は短く刈り込んだ赤い髪と厳つい顔をしている。そのお陰で老けて見えているかもしれないが三十代後半といった所だろうか。体は鍛え上げられた筋肉に包まれていてかなり体格が大きく重量感が凄まじい。

 その隣にいる女性でまず目についたのは先端の尖った長い耳。それに加えて金髪に切れ長の目とエルフの特徴が揃っていることからエルフなのだろう。二十代半ばぐらいに見えるがエルフは長寿種族なので正確な年齢はわからない。

 その二人がこちらに気がついたようで声をかけてくる。


「おっフレデリックか。バークレイの討伐は終わったのか?」

「ええ、と言っても私が倒したのではありませんが」

「どういうことだ?」

「バークレイを倒したのは彼なんですよ」


 そう言って促されたので軽く前に出る。


「ほぉ……お前、名前はなんて言うんだ?」

「ハルトだ」

「ハルトね、俺はローレンス・ディズリー、第一騎士団の団長をやってる。そんでこっちが第五騎士団の団長、オリヴィア・ピナルディだ」

「オリヴィアよ。よろしくね」


 こっちは素性のわからない奴だというのに随分と軽いな。まあ、今は後ろ盾とか何も無いから国の上層部と繋がりを作れるのは有難い。そんなこと考えているとローレンスがやたら楽しそうな声で話しかけてきた。


「なあ、バークレイを倒したってんなら結構強いんだろ。オレと勝負しようぜ」


 見た目と雰囲気から予想できたがやはりこういうタイプだったか。別に勝負自体はいいのだが、ローレンスは体格からして大型の武器を使うだろう。そうなると折れないとはいえ刀で相手する事になるので、出来れば遠慮したい。

 そう思って断ろうとしたがその前にオリヴィアから助けが入った。


「ローレンスさん。まだ仕上がってない書類がありますよね」

「最近、書類仕事ばっかであんま動いてねえから体を動かしたいんだが……」

「今まで溜めていた書類が終わったらいいですよ」

「ぐっ……仕方無えか。ハルト、次は絶対勝負してもらうからな」

「二人とも引き止めてしまってごめんなさいね。ほら、行きますよ」


 そう言ってオリヴィアとうなだれたローレンスは去って行った。

 その後は応接室に通され、報奨金の話になった。


「まずこれがバークレイ討伐の報奨金である白金貨二十枚です。確認して下さい」


 この世界には銅貨、銀貨、金貨、白金貨があり、銅貨十枚で銀貨一枚。銀貨十枚で金貨一枚。金貨十枚で白金貨一枚となっている。ついでに貴族が泊まるような高級宿の一泊で金貨数枚、ワンランク落としたそこそこの宿だと銀貨数枚らしい。

 それにしても白金貨二十枚か、バークレイのところで回収した中にも大量に白金貨があったはずだからそれと合わせるとかなりの額になるな。

 そんなこと考えながら枚数の確認を終え、受け取る。


「それともう一つ、バークレイを貴方が討伐したということを公表しますか?」


 さて、どうするか。バークレイは結構有名だったようなので公表すれば一気に有名になれるだろう。だが、俺のような全く無名の奴が急に出てくると面倒な事になる可能性が高い。そのメリット、デメリットを考え答えを出す。


「いや、公表しないでほしい」

「わかりました。ですが、討伐の完了は公表する必要があるので騎士団で討伐したことになりますがいいですか?」

「ああ、それで構わない」

「報奨金に関する話はこのぐらいですね。そういえば、この後はどうするつもりですか?」

「取り敢えず、冒険者ギルドに行こうと思ってる」


 武器を強化するのに冒険者が一番やりやすいからな。


「そうですか……予定がなければ騎士団にでもと思ったのですが目的があるなら仕方ありませんね。表に辻馬車が呼んであるので使ってください」

「助かる」

「いえ。今回の件ありがとうございました。また、お会いできるのを楽しみにしていますよ」


 フレデリックに見送られて騎士団の本部を出た。そのまま辻馬車に乗り、冒険者ギルドまで移動する。

 しばらく馬車に揺られていると冒険者ギルドと書かれた看板がかかっている建物が見えてきた。馬車が止まったので御者に礼を言いギルドの中へと向かう。


「テンプレのように絡まれなきゃいいが」


 そう思いながら建物の中に入り、受付へと向かう。受付というだけあって皆、女性のようだ。その受付嬢の一人がもこちらに気がついたようで声を掛けてきた。


「いらっしゃいませ。ご用件は何でしょうか?」


 他の受付嬢もそうだが、ギルドの顔というべき受付を任されているだけあって美形ぞろいだ。それに獣人やエルフらしき女性もいる。その中で俺に声をかけてきたのは人間の受付嬢だった。


「ギルドへの登録を頼みたい」

「では、この用紙に名前、年齢、職業や特技があればそれについてもご記入ください、代筆は必要ですか?」

「いや、問題ない」


 文字については神に貰った知識から初めの二ヶ月で一通り覚えたので問題なく書ける。

 渡された紙に名前をハルト、年齢は17、職業は魔法剣士と書き込み、受付嬢へと渡す。


「はい、ありがとうございます。ギルドカードが出来るまで少々掛かりますのでギルドの説明をさせていただきます」


 そう言って受付嬢はギルドの説明を始める。

 冒険者ギルドはランク制であり、G~Aまでの七段階になっている。その上にSランクも存在するが四人しかいないらしい。その一人はこの街にいるとのことだ。

 一番下のランクであるGランクは戦闘能力のない者達専用のランクであり、多少でも戦闘能力を求められる依頼はFランクにならないと受けられない。その為、戦闘能力のチェックをするため登録後、簡単な試験を行う。そこで問題無いと判断されれば登録初日からFランクになる。

 ランクの昇格については基本的にランクごとに規定された数の依頼を達成し、申請することで可能。ただし、EからD、CからBへ上がる時はギルドから昇格試験を受ける必要がある。

 依頼はボードに貼られている依頼用紙を受付に持ってくることで受理できる。もし依頼を規定日数以内に達成できない場合や何らかの事情で達成不可能になった場合は報酬の三割を違約金として支払わなければならない。

 基本的には自分のランクと同じランクの依頼しか受けることはできないが、パーティーを組むことでそのパーティーの平均ランクより一つ上までなら受けることができるようになる。

 また、街が危機に晒されるなどの緊急事態が発生した場合ギルドから召集が掛けられることがある。これを断ることもできるが正当な理由がある場合か、免責金を支払う必要がある。

 

「以上です。何か質問はありますか?」

「大丈夫だ」

「では、戦闘能力チェックのため試験を受けていただきます。ジュードさん、今大丈夫ですよね」


 受付嬢がそう呼ぶとガタイのいい男が出てきた。


「大丈夫だが登録者か?」

「はい、彼が今回の登録者です」

「そうか、俺の名前はジュードだ。試験には裏の訓練場を使うからついてきてくれ」


 そう言ってジュードは歩き出したのでついていく。ギルドの裏口を出るとすぐそこにかなり大きな建物が見える。その建物に向かっているようなのでそこが訓練場だろう。

 建物の中に入ったがやはり広い。だが、今はあまり人がいないようで十人ほどがそれぞれ訓練をしている。

 ジュードは空いていた真ん中辺りに移動すると少し距離をとってこちらに向き直った。


「この辺りでやるか。そういや聞いてなかったがお前の名前と職業は何だ?」

「名前はハルト、職業は魔法剣士だ」

「魔法剣士か、魔法は使用してもいいが地面を荒らすなよ。それと武器は持ってるか?」

「ああ、大丈夫だ」


 そう答えて刀を取り出す。


「刀か……そんなもん持ってる時点で試験いらねえと思うんだが、まあいい」


 そう言ってジュードは担いでいた大剣を構える。


「この試験はお前の実力を見るためのものだ。そっちからかかってこい」


 どちらかと言うと相手の動きに対処するような動きの方がやりやすい。そう思っているが仕方ないので持っていた刀を相手に向けて投げつける。


「なっ!」


 当然、いきなり物を投げられたら驚くし、対処せざるを得ない。ジュードは試験官なだけあっていきなり投げられた刀を大剣で弾いた。


「ガッ!」


 だが刀に気が行ってしまい懐に飛び込んだのには反応できず、鳩尾に拳を叩きこまれ膝をついた。

 投げつけた刀を拾い、ジュードに声をかける。


「大丈夫か?」

「ゲホッゲホッ……んなこと言うぐらいなら最初からするなよ!」


 凄いな、普通なら息するのがかなりきつくなるはずだが噎せただけか。


「そんだけ言えるなら大丈夫だな」

「他にも言いたいことはあるが試験については合格だ。受付に戻るぞ」


 ジュードに促されギルドへ向かう。

 受付に戻ってジュードがさっきの受付嬢に合格したことを伝えるとすぐにカードを渡してきた。


「こちらがギルドカードになります。表記されている内容が正しいか確認して下さい」


 渡されたギルドカードを確認したがランクもFになっていたので特に問題はなかった。


「間違いはないようですね。ギルドカードは紛失した場合、再発行できますが金貨五枚が必要ですので失くさないようにしてください」

「わかった。それと一つ聞きたいんだがこの辺りで安全な宿とかないか?」

「予算はどのぐらいあるんだ?」

「一泊銀貨数枚であれば問題なく払える」

「それなら、北の流星亭がいいんじゃないか。ギルドを出て左に真っ直ぐ進めば流れ星の看板が出てるからすぐわかるだろ」

「ああ、ありがとう」


 受付嬢とジュードに礼を言い、ギルドを出る。

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