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二話

 走りだしたのだがその後すぐ、廃坑とはいえ坑道があるんだから近くに道があるかもしれないと思い、周辺を探してみると草に埋もれていてわかりづらいが森の外へ向かう道を見つけた。道の荒れようからして廃坑になってから随分と経っているようだ。


「この様子だと村があってもすでに廃村になっているかもしれないな」


 だが今は考えても仕方が無いと思い、取り敢えず道に添って進んでいく。

 三十分ほど進んだ頃、まだ少し先ではあるが木が途切れ太陽の光が射し込んでいる。ようやく森を抜けたようだ。


「やっと外か」


 更に進むと家と柵のようなものが見えてきた。村があるようだ。

 かなり近づいたので村の様子を確認する。随分と寂れてしまっていて人の気配がなかった。一通り村の中も確認したが目ぼしい物はなく廃村になっているようだ。


「建物の状態も悪いな。廃村になったのはかなり前か。しかし……どうするかな」


 村の出口、恐らく街に繋がっているだろう街道の近くまで移動し茜色の空を見ながらこれからどうしようか考える。

 今から街道に出れば野宿は避けられない。そうすれば、夜盗は……出ないかもしれないが確実に魔物は襲ってくるだろう。まともに寝れない可能性が高い。


「今日はここで休むか……ん?」


 街道の先に何か見えないかと眺めていたのだが、かなり先の方で土煙が上がっている。


「こんなところに誰か来たのか?」


 人のことは言えないんだがなと思いつつしばらく眺めていると何が走っているのか視認できた。どうやら二台の馬車がこちらに向かってきているようだ。


「そういえば名乗る名前を考えてなかったな……確かドイツ語の名前にレオンハルトとかハルトと付く名前が結構あったな。それなら苗字を省いてハルトとだけ名乗ればいいか。そこまで違和感はないだろう」


 考え終わったのでこちらに向かってきている馬車の方へ目を向ける。さっきは見えなかったが鎧を着た人物が馬に乗って馬車と並走しているようだ。


「並走している二人は護衛か?しかも盗賊が着るようなものじゃないな。それならどこかの騎士かな?」


 隠れようかとも考えたが別に悪い事をしたわけじゃないし、いきなり斬りかかってくることもないだろう。それに、街までどのぐらい掛かるのか聞きたかった。そんな訳で突っ立っていたのだが御者と並走していた二人がこちらに気がついたようだ。馬車内の者と話している。

 少しして馬車が近くまで来ると俺の立っている場所より少し離れた場所に止まり、中から一人の鎧を着た男が出てきた。

 その男だが若いように見える。二十代前半といったところか。しかもかなりイケメンで金髪だからかとても騎士には見えない。

 その後ろに二人続いて出てきたが金髪の男に何か話している。その様子からしてその男がリーダーのようだ。その男は近くまで来て話しかけてきた。


「私はフェルミエ王国、第四騎士団、団長フレデリック・ランバートです。冒険者ですか?」

「いや、違う」

「そうか……少し話を聞かせてほしいのですがいいでしょうか?」


 逆らうと面倒なことになりそうなので素直に答えておく。


「わかった。聞きたいことというのは?」

「数日前、盗賊団がこの辺りに逃げてきたはずなんですがそれらしきものを見ませんでしたか?」


 盗賊というと潰した彼奴等のことだろうか。


「バークレイという名前で斧を持った男がボスの盗賊団か?」

「ええ。その盗賊団について何かしリませんか?」


 彼奴、本当に有名だったのか。さて……誤魔化しても仕方がないし、正直に答えるか。


「バークレイなら俺が倒した」

「は?」

「森の中にある廃坑をアジトを偶然見つけたので、乗り込んで他の奴等も一緒に片付けた」

「何か証明できるものはありますか?」


 そう言われたのでバークレイの持っていた斧を取り出してフレデリックに渡す。


「確かにバークレイの斧ですね」


 フレデリックがそう言うと後ろに居た二人は、何言ってんだこいつ。という顔から驚愕した顔になっている。フレデリックはそこまで驚いていないようだ。

 フレデリックは斧をこちらに返した後、少し離れて他の騎士と何か話している。

 報奨金とかあるんだろうかと考えている内に話が終わったようで再びこちらに話しかけてくる。


「そういえば名前は?」

「ハルトだ」

「ハルトですか。今回はバークレイ盗賊団の残党の壊滅、感謝します。ついてはバークレイ討伐の報奨金を支払いたいので我々と王都へ同行して頂きたい」 

 

 これは有難いな。歩き回る必要がなくなる。それに報奨金もあるらしい。


「わかった。同行させてもらう」

「今日はもう日が落ちるので出発は明日になります。野営を行いますが道具は?」

「大丈夫だ。ちゃんと持ってる」

「それなら大丈夫ですね。それと、野営ですが見張りをこちらで行うので出来るだけ近くに居てください。大丈夫だと思いますが一応、同行者ですから」

「わかった」


 こちらが了承したのでフレデリックは馬車へ戻り他の騎士に指示を出している。俺も野営を行うためアイテムボックスから道具を取り出して騎士たちの近くに行く。野営の準備が終わり騎士たちと夕食を摂ることになったのだが、アイテムボックスのおかげか保存食ではあったものの重量を気にせず味の良い物を持ってきているようだ。

 ただ、バークレイ討伐のことでフレデリック以外には恐れられているようで、少し雰囲気の悪い食事になってしまい、その後は自分の陣に戻ってすぐに寝てしまった。


 次の日になり。朝、騎士団の馬車に乗り廃村を出発した。

 道中、バークレイについて聞いたが、元々王都周辺で活動していた盗賊だったようだ。あの斧による再生能力のせいでなかなか仕留めることができず梃子摺っていたらしい。それでも少し前にバークレイが拠点にしていた場所を見つけ襲撃を行ったようだ。だが、バークレイ本人と何人かの部下に逃げられたためそれを追ってここまで来たとのことだ。

 そのことを聞いている内に昼になり、馬の休憩も兼ねて昼食を摂る事になったので食事の準備してる者以外は自由時間ということになった。俺も座りっぱなしで疲れていたので軽く体を動かしているとフレデリックが声をかけてきた。


「ハルトさん、少しいいですか?」

「ああ」

「良ければですが、手合わせ願えませんか?」

「手合わせ?」

「バークレイを倒したという貴方の実力を実際に見てみたいと思いまして」


 そういうことなら断るとマズイ気がする。それに騎士団長の実力も知っておきたい。そう考えたのでフレデリックの申し出に頷く。


「では少し離れましょうか。ここで行うと他の者を巻き込みかねないので」

「そうだな」


 フレデリックの提案に頷き審判役で呼ばれた一人と少し移動する。

 他の騎士たちは興味津々と言った風にこちらを見ている。食事の準備をしている者まで見ているな。


「ルールはどうするんだ?」

「制限をつけてしまうと実力が見れないので、欠損させるような攻撃以外は何でもありで行きましょう」

「……わかった」


 了承したが何でもありとか何考えてるんだ?死なないまでも大きな怪我とかしたら今後に差し障るだろうに。でも、欠損していなければ回復魔法でどうにかなるのか。そんなこと考えていたがフレデリックは既に鞘から剣を抜いて構えている。こちらも少し遅れて刀を抜く。

 お互い武器を抜いたので審判役の騎士が合図を出した。


「では、始め!」


 それと同時にフレデリックが一気に間合いを詰め斬りかかってくる。人としてはかなり速い。普通であれば対応できないだろう。しかもその速度を維持したまま連続で攻撃してくる。さすが騎士団長といったところか。

 守っていても仕方が無いので反撃に出る。フレデリックの横薙ぎの一閃を弾き、首を狙い斬りつける。

 だがフレデリックはしゃがみ、その一撃を避ける。そのままフレデリックの剣が足を狙って突き出されるが、俺は後方に跳躍し一旦距離を取る。

 フレデリックが立ち上がりながら声をかけてくる。


「本気を出していないようですが」

「あまり手の内を見られたくないからな」

「なら、本気を出してもらいますよ!『サンダーショット』!」


 『サンダーショット』名前そのまま電撃を相手に飛ばす雷属性魔法だ。だが、収束している魔力を見ると同時発射数をかなり増やしているようだ。その数、約二十。流石に避けきれない。


「面倒な『アースウォール』!」


 フレデリックの魔法が放たれるのに合わせて土の壁を作り魔法を防ぐ。だが、フレデリックが土の壁を破り突っ込んでくる。


「ハァッ!」


 フレデリックは弾丸の如き速度で踏み込み、雷撃を纏わせ強化された突きを放つ。すれ違うようにその攻撃を避け、フレデリックの腹を魔力を込めた拳で殴り、その魔力を放出する。


「ガハッ!」


 そのままフレデリックは5mほど吹き飛ばされた。そこで審判役の騎士が声を上げる。


「そっそこまで!」


 刀を収め、観戦していた他の騎士たちを見ると唖然としているようだ。人としてはかなり強い団長を倒されたのだから当たり前か。

 フレデリックの方を見ると、もう近くまで戻ってきていて、話しかけてきた。


「やっぱり強いですね。傷ひとつ与えられないとは思いませんでしたが」

「お前が本気出してたら行けたんじゃないか?」

「殺し合いでは無いんですから出さないですよ」

「だろうな」


 そう、殺し合いでもないのに本気を見せるわけがない。実際、お互いに強化しているが下級魔法しか使ってない。そんなことを話しながら他の騎士たちがいる場所へ戻る。

 そこで、他の騎士たちからの視線に違和感を感じた。どうやら、フレデリックと試合を見てから俺に対する恐れが尊敬に変わったらしくそれが違和感になっているようだ。

 その後は昼食を摂り、再び王都へ向けて出発した。


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