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一話

 椎名遥翔は森で目覚めてからプエルと話していたとおりにそのまま森で生活し、武術と魔法の訓練を行い自分を鍛えていた。

 それから約二ヶ月が経ち、神に貰った才能のお陰でこの短期間の内に知識の大部分を習得できていた。

 森での生活は神に貰った知識の中にはこの世界の動植物に関するものもあったので食べられる、食べられないなどの問題がなく、その御蔭で森で暮らすのにもあまり不自由がなくこのまま篭っててもいいんじゃないかと思うことがあった。

 だが、プエルには冒険者になるつもりでいると言っていたのを思い出し、そろそろ森を出て冒険者になれるような大きな街へ行こうとしていた。


「さて、森を出るのはいいんだが街までどのくらい掛かるかわからないな。知識の中に周辺の地理についても入れてくれればよかったんだが、ないものは仕方ないか」


 そう、神に貰ったものには大体の現在位置がわかる縮尺の分からない世界地図しか地理に関するものがなく、街が何処にあるのかわからない状態だった。


「地図を見る限り南にはなにもないらしいから取り敢えず北に行くか。途中に村でもあればいいんだが」


 そう言って歩き出したのが一時間前、かなり高くなっている身体能力と貰った靴の効果があるので結構な速度を出していたはずだがまだ森の出口は見えない。途中、魔物がいくらか出てきたがこの辺りの魔物であればそもそも弱いこともあって一撃で仕留めることが出来るようになっていた。


「具体的なゴールが見えてないのはキツイな。景色が変わらないから飽きてきた」


 そう言いつつも今更引き返す訳には行かないので黙々と歩いていると少し離れたところに数人の気配を感じた。まだ遠いと魔物や動物とそれ以外の区別が出来る程度だが気配を感じ取れるまでになっている。


「人のようだな。狩りに来ている人たちなら案内を頼もう。盗賊なら片付けるか」


 俺が住んでいたのはかなり森の奥だったがたまに盗賊が来ることもあり、人を殺すのに躊躇いはない。

 とにかく相手を確認するため木陰から様子をうかがう。


「クソが、なんだって俺が食料集めなんか」

「仕方ねえだろ、俺等下っ端なんだから」

「んなこと言ってないでさっさと終わらせるぞ」


 男三人が並んで歩いている。その外見を見る限り清潔にしているとは言えないので盗賊のようだ。会話の内容からして他にもいるらしい。移動中に他の奴らと出会わないためにもアジトに乗り込んで片付けるか。

 アジトを聞くための一人を残して他を片付けるため刀を呼び出す。三人の後ろを疾風の如き速度で駆け抜け、抜刀からの一閃で二人の首を刎ねる。そのまま刀を叫ぼうしたと三人目の首に当て、黙らせる。


「騒ぐな。騒げば殺す」

「わ、わかった。わかったから武器をどけてくれ」

「……まあ、いいだろう」


 そう言って首から刀を離すとその盗賊は膝から崩れ落ちた。

 まだ怯えているが日が落ちまでに森を抜けてしまいたいので質問させてもらうか。


「質問に答えるなら殺さないし誤魔化すなよ。まず、お前等は盗賊団だな。他の仲間は何処にいる」

「こ、ここから北東へ十分ほどのところに破棄された坑道がある。そこがアジトだ……」

「次にお前とそこの二人以外は何人いる」

「に、二十人だ……」


 大体情報は集まったが、二十三人は多くないか?まあ、基準がわからないから判断できないが。どうするかな……自分の実力も見たいし問題無いか。それと一つ聞いておかないとな。


「最後に一つ、森を抜けるまで走って後どのぐらい掛かるかわかるか?」

「?一時間ほどだったはずだが」

「そうか、ならもういいぞ」


 そう言って盗賊団のアジトへ向けて駆け出す。

 その後、アジトまでは何事も無く到着し、様子を窺っているが見張りが二人いるだけで残りの盗賊は坑道内のようだ。

 その見張りもお互いに何か喋っていて全く警戒していなかったので両方とも首を刎ねて片付けた。


「それにしてもこれで五人ということは坑道の中に十八人もいるのか。閉鎖空間だし魔法で蒸し焼きにでもするか?あーでも、そうすると相手の持ってる金目の物が駄目になるかもしれないし、正面から行くしかないか」


 そう言って気配を殺し坑道の中に入る。入り口周辺には誰も居ないようだが奥の方に気配がする。

 そちらの方向へ進んでいくと野太い笑い声が聞こえてきた。どうやら五人ほど集まっているようだ。

 位置の近かった二人の首を一刀のもとに刎ね、三人目を斬り倒すが他の二人には反応されてしまった。


「誰だてめえ!」

「侵入者だ!増援を寄越せ!」

「さすがに三人までか、仕方ない『アースランス』」


 その言葉の直後、二人の盗賊の足元から石の槍が数本突き出し、盗賊を串刺しにする。

 この五人は片付けたが坑道の奥から複数の足音がこちらへ向かってきている。


「バレてるし制限なしでいきますか『アースランス』」


 今度は下から突き出すのではなく敵に向かって射出する。かなりの速度で射出された数本の石の槍は三人ほど貫いたようだが、まだ三人残ってる。射出された石の槍に合わせて敵陣に斬り込み、槍で崩れた残りの敵を斬り殺す。


「これで十六人、後七人か。出て来ないということは盗賊団のボスと待ち構えてるのか」


 そう言いながら刀を鞘に収め、奥へと進んでいく。因みに神の武器なので血が付くことはない。

 そのまま進んでいくと開けた部屋に出た。部屋の奥には盗賊団のボスと思われるかなり大柄な男が一人。その左右に三人ずつ男が立っている。部屋に入るとそのボスらしき男が話しかけてきた。


「十人ほど相手にしている筈だが無傷か。お前、結構強いようだな。俺の名前はバークレイ。どうだ俺の盗賊団に入らねえか」

「生憎やることがあるから無理だな」

「そうか……なら仕方ないな。お前等、殺れ!」


 バークレイの号令で六人の盗賊が襲い掛かって来る。


「まあ、そうなるよな『アースランス』」


 今回は今までと違い相手の頭に向けて正確に槍が放たれる。バークレイは斧で弾いたようだが他の六人は頭を貫かれ、息絶えている。


「短縮詠唱でこの威力とかどうなってんだ。これは久々に本気を出さないとマズイな」


 バークレイが飛び上がり斧を振りかぶったままこっちに突っ込んでくる。


「くらいやがれ!」


 そう言われて素直に当たるわけもなく、相手に向かって飛び、脇腹を抜けて腹を斬り払った。そのまま着地してバークレイを見ると、かなり血は流れたようだがすでに傷が塞がり始めている。


「再生能力の大幅な活性化か」

「そういうことだ。簡単に殺せると思うなよっ!」


 バークレイが一気に間合いを詰め、斧を横薙ぎに振るう。その一撃を屈んで避け、足を落とすため斬りつける。

 どれだけ再生能力が高くてもこの世界で欠損を治すことが出来るのはごく一部の特殊な魔法のみ。

 それ故の攻撃だったのだがバークレイもそれはわかっているようで強引に斧で防ぐ。普通なら腕が駄目になるような動きだが再生能力で可能にしているようだ。

 その為、防がれるとは思っていなかったので一瞬動きが止まってしまいそこにバークレイが腕を振り下ろしてくる。と言っても反応できない速度では無いので一気に後方へ飛びその攻撃を避ける。

 

「仕方ないな『アクセル』」

「何っ!」


 強化魔法により俺の動きが加速される。その動きにバークレイは対処しきれず、大きな隙ができた。そこを逃さずバークレイの首を刎ねる。首を失った体は血を噴き上げ倒れる。

 刀を鞘に収め一息付く。


「他の盗賊に比べてかなり強かったが有名な賞金首とかだったのか」


 そう言った直後頭の中に声が響く。


《規定された魂の収集を完了しました。魔力吸収Ⅰを開放します。これにより武器による直接攻撃でダメージを与えた場合与えたダメージに応じて魔力を回復します》


「プエルが言っていた追加効果の一つ目か。これは便利だな。消費した魔力を回復できるなら魔法を撃ちまくれる」


 その後、まだ坑道に先があったので探索してみると盗賊団のものだと思われる金銭を見つけたので回収しておいた。最初目覚めた時、野営の道具や着替えなどは置いてあったのだが金銭は一切入っていなかったので無一文だった。これで街に入れないということはなさそうなので一安心だ。

 金銭を回収して、来た道を戻っている時、隠し部屋がないか調べるため魔力探知を行いながら進んでいたのだが、バークレイの斧が探知に引っ掛かったので調べてみるとどうやら魔法武器のようだ。

 魔法武器とは様々な効果の付与された武器のことで、あの再生能力はこの斧によるものらしい。捨てていくのは勿体無いと思い『アイテムボックス』を発動し、その斧を回収して坑道を出た。


「やっと外か。狭いところにいると息が詰まるな」


 そう言って空を見上げると太陽が傾き始めている。


「思ったより時間を取られたな。日が落ちる前に森は抜けられるだろうが、それ以上は無理だな」


 さすがに夜の森で野営するのは遠慮したい。そう思い遥翔は森を抜けるために走りだした。

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