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【初挨拶一言目 Hello, world!】

挨拶は大事ですね。

 熱気にあふれた寿司詰めの電車から下りて改札を出る。もう雨が上がっていて肌寒いくらいの風が心地いい。

 俺は小鳥遊ジョージ、ブラックキギョーの埼玉支部で働くごく平凡な構成員(しゃちく)だ。



 ちらりと何か違和感を覚える。おっとトラックが、ここの近くの高校の女子生徒に向かってるぞ。足をくじいたようで、彼女は座り込んだまま、動けずに目を見開いている。最近多い不注意運転だな。

 

 身を屈めブレーキ音が聞こえたと同時に地面を弾き飛ばす。急速な負荷と空気の壁が体を打った。そのまま加速しサイドミラーをタッチしてさらに加速、女の子をキャッチ。


 ここで焦ってはいけない。滑って転んでは二次災害。濡れた路面をしっかりと踏みしめ、全身のバネに力を十分蓄えてから解き放つ。トラックが俺たちがいた場所を通って止まった。歩道へ見事に着地して女子高校生をリリース。


 最近は事務作業ばかりで体がなまっていたから危ないところだった。国民健康保険に入っていなければ死んでいたかもしれない。



 やれやれと歩きだしたところで足下から地面が消えた。どこまでも続く奈落への転落中に俺は思った。


 こういうときは意外に人は冷静になって、それほどパニックにはならないのだな。怪我したら労災は降りるかな、ボーナスに響かねばいいが。責任者はどこだ、手抜き工事しやがって。



 いつのまにか気を失っていたようだ。いつの間にやら薄暗い森の中にいた。時計を見るとそれほどたってはいなかったので、遅刻の連絡の電話を掛けるがつながらない。くそ、圏外だ。


 深呼吸して準備体操をしてみる。よし怪我はなさそうだ。明日はちゃんと出勤できるだろう。


 改めて周りを見る。全く見覚えのない景色だ。2台持ちのスマホ方のを持っていればマップアプリで場所がわかるのかもしれないが、あいにく修理に出したばかりだ。サムリンのやつめ、間が悪いことこの上ない。

 

 暴対法でおとなしくなっているはずのヤクザマフィアがいきなりここまでするとは思っていなかった。


 持ち物を確認してみる。食料は間食用のスシバー4パックがあればしばらくは持つはずだ。問題は水だ。ハツラツ栄養マムシドリンクが数本とプロテイン入りカロリーチャージ4パックでは心許ない。貧弱な文明人の腸では自然の生水は危険だ。さっさと人里に降りるに限る。



 時計と太陽の位置を使い方角を確かめる。ちょうど木がまばらで草が比較的生い茂っていない側が南のようだ。印を付けながらまっすぐに進むと舗装されていない道に出た。



 道に出る直前に物音がしたのでそちらへ向かうと、なにやらおかしな格好をした奴らが暴れているのが見えた。最近の若者の趣味はわからん。


「ども、小鳥遊ジョージと申します。君たち、暴力はやめたまえ」


 奇声を上げながら斧を振りかぶる腕に躊躇わず名刺を撃ち込む。当然だ、挨拶もできない人間に手渡しする必要はない。


 

 手裏剣の真価は威力にあらず。手短なものを即座に武器に変える応用性にある。とくに名が刺すと書いて名刺は、キギョーファイターのメインウェポンだけあって切ってよし刺してよし。投げてよし。おまけに交換することで情報の共有もできる優れものだ。


 

 武器を持って襲い掛かってくる不良たちを研修通りに捌いていく。こっちは、曲りにも社会人なのだ。社会経験が違う。最後の親玉らしき男が臆して後ずさった隙を逃さず踏み込んで掌底を腹部に叩き込む。因果応報。自業自得。痛い目を見なければ冷めない幻想もあるのだ。

 

 女性の声がするので振り向いておやと思った。馬が二頭布をかぶせた荷台につながれていた。これは相当な田舎だぞ。

 

 続いて声をかけている女性を見る。困った、外国人だ。何語を喋っているかもわからない。

 

「Hello, world! My Name is George Takanashi」


 挨拶してみたが、駄目だ。通じない。



 ふと思いついてぶら下げていたカバンからリニーのReaderを取り出した。確かセール中で思わず買ってしまった言葉がわからないときのためのビジネス本があったはず。あった。


「真心と肉体言語」


 これを読めばある程度通じるかも知れない。苦戦すること数十分余り、なんとかある程度意思疎通ができた。

眼鏡と魔王はもう少しお待ちください。

2013/10/16 15:16:17 

アドバイスされて、とりあえず改行と空行を鬱陶しいくらいに入れてみました。

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