8.砦のルール
ぐだぐだ……
Side:セド
砦に戻ったら待っていたのはケーキだった。
「セド、カエデとアケビに助けられたらしいが、大丈夫だったか?」
「助けられてねえしっ」
反射的に答えてから、そういえば助けられたと思い出す。双子がくすくす笑っているのが悔しい。
「そういう意味じゃない。予備知識なしにあの双子に会って、大丈夫だったのかってことだ」
予備知識。確かに必要な奴らだった。
臆面もなく誘われたことまで思い出して、赤面する。
「アイツって男なんだろ?何でスカートなんかはいてるんだよ!」
「今日はたまたま、スカートだっただけだよ」
「セドがそこまで言うなら、明日はパンツにするよ」
質問と答えが合ってねえっての。
「あの双子はああいうモノだ。そういう風に思っておけ」
「シン、それじゃあ全然わかんないよー?せめて《2人にわかれた異能》のことぐらい話さなきゃ。
あ、あとセドお疲れ様。はい、ご褒美のケーキ!」
おいちょっと待て。
小隊を虐殺→お疲れ はまだいい。
小隊を虐殺→ご褒美が必要→ケーキ って、どっかで間違ってるだろ!?
そもそも俺ケーキとか好きじゃねえし。
「嘘は駄目だよー、ナグサ」
「攻めてきたなんて知らずに、遊びに行ってたんでしょ?」
「え……と、てへぺろっ」
「可愛く言っても駄目だよー」
「今晩お相手してくれるならいいけどね」
「夜の相手?えっと、チェス?あたし得意だよっ」
「そっかぁ、ナグサには早かったか」
「うん、仕方ないね」
ああ、そうか。コイツら誰にでも同じこと言ってるのか。本気っぽいのが怖いけど。
「てか、ケーキ?作ったのか?」
まずそう。食べたくねぇな。
「双子が『遊びに行った』と言っただろう?町で買ってきたに決まっている。この砦にそんな能力を持った奴はいない」
町で?その言葉に違和感を覚える。町って行っていいのかよ。
「ああ、そうだったな。双子の話をするよりも、セドにここのルールを説明しておくか。
安心しろ。糞ッタレな役人どもは規則がなんたらってよこしてきたが、ここのルールは3つだけだ」
そう言ってシンが振りかえれば、真っ先にナグサが反応した。
「ひとーつ。一般人には手をださないこと!」
「ふたつ」
「砦の仲間は信用すること」
「最後に、命を惜しまないこと。まあ、お前は3つめは大丈夫そうだな。
そして、この中に『身分を詐称してフレアロンティに遊びに行っては行けない』というものはない。ゆえに遊びに行く。わかったか?」
わかったも何も。
「とにかく、この砦が非常識すぎて面白すぎるってことだけはわかったぜ」
双子が顔を見合わせてにっこり笑った。
「「そう来なくっちゃ!」」