61.住民発見
Side:シン
再びシンが焼いた肉を、アメとカエデ、アケビで奪い合っている。ナイフや魔法が飛び交っているが、極めて平穏な日常だ。
「シン」
くい、と袖がひかれる。横をみれば、アメが遠い目をしていた。
千里眼でこの世界の様子を確認していたんだろう。
「どうした?」
「魔族……村、ある」
魔族の村がある?
こっちの世界にか?
「俺たちみたいに、あっちの世界から逃げ出してきた奴がいるってことか?」
あの通り穴を、普通の魔族が開くことができるのか?俺は、開こうと思ったら開くことができたが。
「魔族……みたいな」
「魔族みたいな形の生き物ってことか」
「……」
黙ったままのアメ。わからない、ということだろう。
スキル《千里眼》は遠くの物を見ることはできるが、それらを解析することはできないわけだから、当然といえば当然だ。
「どっちにしろ、この世界には俺たちより先に住んでる奴らがいるんだな」
「村」と称したということは、俺たちを追ってきた奴らじゃないだろう。
どうするか……。
「おい、お前らちょっと聞け」
「あ?」
「ふぁいふぁーい、はぁひぃ?」
「「どしたの、シン?」」
奴らが集まってくる。1人は肉を口に詰め込んだままだけどな。
「今アメから報告があった。この世界には魔族らしき生物が生きているらしい。どうする?」
顔を見合わせ、首をかしげているセドとナグサ。段々と馬が合うようになったのはいいが、絶対に理解してないだろ……。
カエデとアケビは困ったような顔をしている。
「だから、殺すか殺さないかってことだ」
「「やっぱりそこ!?」」
当たり前だ。それ以外に何を考えることがある。
「もうちょっと選択肢もとうよ」
「関わるか放置するかとか」
どうせ双子達は俺たち以外の魔族や人間で遊びたいだけだろ。
「えー、殺すか殺さないかって……」
「殺すに決まってるだろ?」
戸惑ったようにナグサとセドが言う。
「アメもか?」
「……(こくん)」
うん、やっぱりそうだよな。殺したいよな。
「よし、殺すか」
「「いやいやいやちょっと待ってよっ」」
「僕たちの分は?」
「僕たちがにゃんにゃんする分とっといよっ」
お前ら、本当に頭の中がお花畑だな。俺たちだって人のことは言えないが、それにしたってひどいと思うぞ。
「にゃんにゃん……?」
「ばあかナグサ、知らないのかよ。あれだろ。猫みたいにふるまわせて魔族としての尊厳を奪い、それから殺すっていう遊びだろ」
セド、お前もわかってないだろ。確かに近いが……最終的な結論が正反対だな。
「違うよ、セド」
「これは一種のぷれ
「セドもナグサも、覚えなくていいことだからな。それからカエデとアケビの私利私欲にまみれた欲求は、多数決により却下だ」
「ひどいなあ、シン」
「そんなことしたら、僕たち欲求不満でアメを襲ったりしちゃうかもよ?」
それは困る。
“殺す”それだけを考えて生きている俺たちが、愛だなんだと語るのは馬鹿みたいだと思うが、確かに俺はアメを大事にしたいと思っている。心臓をえぐりとり、血の一滴まで自分の物にしたいと思うような、そんな強烈な愛じゃないがな。
だからと言って、双子たちの要望にそうですかと頷くわけにもいかない。
だが、俺がその魔族らしきモノを殺すと明言したのにも理由がある。
今まで俺たちは魔王に命令されて殺してきた。勇者や俺たちを討伐するために組まれた軍隊、エトセトラ。確かに奴らを殺すのはとても楽しかった。俺の欲求を満たす役割を担ってくれた。別に殺す相手に不満があったわけじゃない。だがたとえそうでも、自分で狩る獲物を選べない、この事実はいつも俺の中にあったのは否めない。
誰からの命令も受けず、自分で獲物を選び、自分で殺し方を選び、自分で狙いをつけて、自分で殺す。この過程すべてが、どうしようもなく俺を興奮させる。
というわけで、殺そう。
「「だから駄目だってば!!」」




