60.焚き火を囲んで
Side:セド
現在俺たちは全員で焚き火を囲んでいる。
ついさっきまで戦闘に明け暮れてたんだが、これじゃいつまで経ってもキリがないってことで、いったん食事にすることにした。
戦ってたら興奮で疲れてるとか腹へったとか感じないからな。倒れる前に食っといたほうがいいだろ。
といっても、こんな世界でできる料理なんてない。食材はそこらへんに転がってる肉だけだ。その上香辛料なんて持ってきてないし、調理法としては「1.焼く」で終了。
こんなの俺がする必要もねえと思うんだけど、みんな俺に押し付けて手伝う気はさらさらないらしい。
まあ、コイツらに料理スキルを求めるだけ無駄か。アメに双子は貴族だろ。シンは男だから料理はやってこなかったらしいし。ナグサは……馬鹿だから仕方ないか。
「うーん、やっぱり運動するとお腹すくよねー!」
黒胡椒すら振ってねえから旨くもねえけど、ナグサを初めガツガツと食ってる。
俺が持ってるこれは……角が体からとびでたベア種っぽい何か、の肉か。得体がしれないし、調味料をふっていないため味がしないことを俺は知ってるけど、肉汁があふれているのを見ると自然と食欲がわきあがってくる。
頬張る……が、やっぱり味が薄い。
「そんなに旨いか?」
「うーん?おいしいっていうか、肉だー!って感じ」
要するに食べれれば何でもいいってことだな。
「いやいや、充分おいしいと思うよ」
「素材の味が出てるし」
「逆にけなしてるだろ、お前ら」
「えっ?違うよー。ほら、僕らよく人間界に行ってたじゃん?」
「人間界って物が行き渡ってないから、調味料なんて使えないんだよね」
これよりマズイ物が普通に食堂とかで出されてるよ、と言われて滅茶苦茶驚く。別に俺は料理人なんてモノじゃねえし、むしろ解体だけでいい。だがそんなことを聞くと、自然とイラッとする。
んな変なモン金取って出してんじゃねえよ、殺すぞ馬鹿、って感じだ。
「それで、こっちにきてからの異変のことだが」
異変って……?
「空が真っ赤ってことー?綺麗だよねー!」
確かに、ずっと夕焼けみたいで時間間隔がわからなくなるよな。
ん……?時間がわかんないのは確かにそうなんだが、割と長く戦ってた気がするんだよな。次から次へと敵が湧き出す……ってか、現れるし。
けど俺、全然疲れてなくね?
「違う。それじゃなくて、俺たちの身体能力は魔法の威力が上がってるってことだ」
あー、なるほどな!そういやあ戦闘中に、ナグサがそんなこと言ってたっけ。戦いに集中してたから、テキトーに流した記憶があるけど。
「俺は、俺たちは元々こちらの生き物だから、こっちの世界に来たら体が順応して強くなった……と俺は仮定したんだが、アケビとカエデはどうだ?」
なるほど、アケビとカエデは俺たちみたいに覚醒してないわけで、シンの仮定からいけば2人の能力が上がっているのはおかしい。
だが2人は首を縦にふった。
「よくわかんないけど」
「前より動きやすくなった気がするよー」
「ということは、先の仮定は間違っているってわけか。まあそう簡単にわかるほうがおかしいよな」
てか、原因ってそんなに気にするべきことなのか?別に何だっていいだろ。
他の世界に来たら強くなってた。前より楽しく戦えるようになった。サイコー。
でいいんじゃね?
「そんなに考えなくてもさあ、強敵と戦ってハッピー♪でいいじゃん!」
「ナグサの言うとおりだぜ。俺たちだけじゃなくて、アケビとカエデも戦いを楽しめるようになりました、ってだけだろ?むしろいいことじゃんか」
意外とこういうことじゃ、ナグサと意見が合うかもしれねえな。
少なくとも双子よりはムカつかない。
「セドとナグサって意外と馬が合うよね」
「その楽観さを分けてほしいよ」
なんか貶されてるような気がする。
「つまり、お前らは次の肉はいらないってことだな」
「へっ?いるに決まってるじゃん」
「セドの馬鹿!」
「いい?僕らは2人で2人の体を動かしてるんだよ」「当然体を動かすとお腹がすくでしょ」「2人分の体を動かしてるんだから、他の人の2倍の食事がいるわけ」「それが2人分だから、他の人の4倍いるの」「だから僕らは他の人の4倍は食事をとってもおかしくはない」「それをたったの2人分で我慢してるんだから、有難いと思ったほうがいいよ」
コイツら何を言ってるんだ?
やっぱり界を渡るのって、普通の魔族には危険なことだったんじゃないか?頭がおかしくなってるんだろ。
第一、肉がもっと欲しいらしいけどさ、
「よくわからないが……」
俺はナグサを指差した。
「肉ならナグサが全部食ったから、もう残ってないぞ?」
「「ええっ!?」」
「へ?アケビちゃんとカエデちゃん、もっとお肉欲しかったの?」




