表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
砦の日々  作者: 花屋
≪界渡編≫
60/68

54.界渡り


題名から予想がついているかもしれませんが……


砦の日々の設定をすっかり忘れている方は、

21話を読んでからのほうが「ああ~」と納得できると思います。



Side:カエデ&アケビ


 扉を開けた途端、目に飛び込んできたのは、太く長い大蛇の尾。


 うーん……これは面白いけど、計画上戦わないんだろうね。シンのことだから、あのポーカーフェイスの裏で「魔王にぎゃふんと言わせてやりたい」とか考えてそう。

 ナグサやセドたちには、これから思う存分戦えると思って、我慢してもらわなきゃ。


 ……ん?セドって計画のこと知ってたっけ?


 あの話のとき、寝てたよね? うん、寝てた。


 あれ?じゃあ知らないの?


 まあ僕らには関係ないからいいよ。


 それもまあそうだね。


「やあ、いらっしゃい。ちょうど君たちの話をしていたんだ。人間諸君、紹介しよう。これらが君たちの同胞を殺し、そして今から死んでいく愚か者たちだ。わざわざこちらへ出向いてくれたようだよ」


 初めてみたけど、これが魔王……様?なんだか胡散臭い。小さい女の子におじさんが話しかけるときに、「ほらおじさん怖くないよ~このアメちゃんあげるから、こっちへおいで~」とか言うけど、いや絶対お前危ない奴でしょ!ってツッコミたくなる、そんな感じの胡散臭さ。


 シンのほうがまだそれっぽい。


 蛇の証が出てるから、強そうだなあってのは思うけど。


「悪いが、俺たちは殺されてやるつもりはない」


「ほお、そうなのか?」


 人間たちは、魔王の言ってることが突拍子もないから、反応しきれないって感じ。又は魔王が怖すぎて何も考えられない。


 おーじさまが一応止めようと考えてるってのは、ちょっと嬉しいかも。結果的には魔王の尾が怖いから動けてないけどね。

 今まで僕らの心配をしてくれたのは、砦の仲間ぐらいだし。その中でもミミは「死んじゃえばいいでしょ。どうして嫌なの?」なんて言うし、ナグサは仲間が死んだって全く平気だし。悲しくなってくる仲間たちだよ。


「今まで自由に戦わせてくれたことには感謝する。だが、そう易々と殺されてやるわけがない。悪いが俺たちにも意思ってものがあるからな。


 人間たちが向かってくるから戦う?魔王(お前)の遊び?

 いずれにしても興味はないな。


 俺たちの目的は戦い。そして自由。わかってるだろ?

 戦争が終わったなら、もうここでは平和に(、、、)殺せない(、、、、)


 ならば違うところへ行くしかないな」


 尾を打ち鳴らす魔王をまっすぐ見据え、シンが宣言する。


 やっぱ格好いいよ、うちのリーダー。今度アメを交えて抱いてあげようか?


「御託はわかった。……では、どこに逃げる?」


 魔王は口の端に笑みを浮かべている。僕たちと気が合いそう……って、嫌なこと考えちゃった。


「確かに、この世界に俺らの逃げ場はない。どこへ逃げても、俺らに“戦わない”なんて選択肢はないからな。どこへ逃げても、すぐに見つかるだろう」


「そこまでわかっているなら、なぜ素直に従わない?もしかして私を殺す気なのかな」


「いや。この世界に逃げ場はない――この世界にはな」


 魔王が驚愕の表情を浮かべた。


「まさか」


 シンが後ろを振り返って、無造作に腕をあげ、


「そのまさかだ」


 空を縦一文字に切り裂いた。


「なんだ、あれはっ」「見たこともない術だ…」「あれはまさか、魔物出現の前触れの印では?」


 人間たちから困惑の声がもれる。魔王はとみると、さっきまでの余裕ぶった笑みは完全に消え、何も言わず宙にぽっかりと空いた暗い穴をみつめている。


 魔物たちが向こうの世界からこちらへと現れるときにできる穴。そこだけ何も無いかのように暗く、奥に何があるのかは全く見えない。まともな人が見れば、恐怖だけが喚起されると思う。


 魔物と同じくコアを持つ彼ら。じゃあ、魔物と同じように行き来できないのか?


 答えは見ての通り、YES。


「そうか……くくくっ。ますます魔族から離れていくな、お前らは」


「上等だッ」


 セドがニヤリと笑って返答し、迷いなく暗闇に飛び込んでいく。

 前もって話も聞いてなかったのに、よく躊躇せずできるよね。さすが脳筋。


「2番、あたし行きまぁす!」


 ナグサが飛び込む。


 ……さてと、僕らもこの世界に別れを告げなくちゃね。



 アメがうっすらと笑みを浮かべ、父親に向かって手を振るのを横目でみながら、僕らは手をつないで地面を蹴った。








 ね、シン。親からも見捨てられた僕らだけどさ、いやだからといえばいいのかな。


 魔物の血が開花してない僕らにも、「一緒に来い」って言ってくれたとき、ホントに嬉しかったんだよ。


 ありがと。


 そしてバイバイ、この世界。





……ふむ。子供が笑顔でいると親も嬉しいというのは、私と娘にも当てはまることだったのか。最後になって初めて知るというのは悲しいな。


これからやらなければならないことがたくさんある。

一度人間たちに言ってしまった「実行者の処分」も撤回せねばならぬし、

歴史や風習の異なる魔族と人間が手を取り合うことは、ただ条約に印を押せばいいということではない。

ああ、それから、どうせ倒されているだろう息子も看にいかねばならぬな。



だが、今だけは。


素直に娘の門出を祝ってやろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ