53.死刑宣告
Side:セド
「久しぶりだな、アメ」
上から目線のコイツはアメの兄らしい。魔王城にやってきた俺らだが、魔王とは未だに会えていない。 つーか、何のためにここまで来たんだ、俺ら?魔王に呼ばれたんだよな。
「相変わらず小汚い服装をしている。まあ、もう貴様も俺の妹でなくなるのだから、いいか」
アメは何も言わない。兄じゃねーのか?
ん?兄じゃなかったら殺していいよな!?
「なあなあシン、コイツ殺していい?」
「駄目だ」
「えっ、駄目なの!?じゃあ何しに来たの、ここ」
「ナグサ馬鹿だなてめえ。魔王をぶっ殺しに来たに決まってんだろ」
「あ、そっかあ」
「違う。黙って」
反応したのはアメ。
ほんとに違うのか?じゃあ何しに来たんだ、ここ。
「まったく、話に聞いたとおり野蛮な奴らだな」
「野蛮というのは否定しません」
シンが敬語使ってる。変な感じだな。シンはこういうの嫌いだろ?我慢するぐらいなら、殺せばいいのにさ。
「それよりさあ」
「ここ、何しに来たの?」
「妹じゃなくなるってどういう意味?」
「今までも妹なんていう扱いじゃなかったと思うけどなあ」
「簡単なことだ。貴様らは死ぬ。報告もせず、人間たちを虐殺していた罪でな」
は?
俺らが死ぬ?なんで?意味わかんねーんだけど。ちゃんと魔族の言葉しゃべれよ。
「やはりか」
なんでシンはわかってんだ?カエデとアケビは――も、わかってるみたいだし。
この偉そうな男が何かするなら、「死ぬ」じゃなくて「殺される」だろ。自然死するってか?予言かよ。ユニークスキルか?
「わかってて来るとは愚か者だな。それとも下賤の者らしく、死ぬ覚悟でも決めたか?」
「わかってない奴もいるみたいだが――」
ちらりとこちらを見る。俺!?
「戦争が終われば俺らは用済み。もともと人間を撃退するために砦に送られたわけではなく、むしろ人間たちに殺されてくれればいい――そんな考えだったんだろう?」
あ、敬語が抜けてる。
つーことは、コイツを殺すことにしたってことだな。
「戦っていなければすまない俺たち。強い者、より強い者と強者との戦いを求める。生きていれば、いつか魔界の脅威になる。厄介者でしかない。だから、戦争がなくなったなら、不良品は殺さなくてはならない。そういうことだろう?」
そういうことなのか。
「わかっているなら話は早いな。自害は父上の前でしてもらおう」
清々しいまでの権力思考。確かに魔界は実力主義、力ある者が上に立つ、ってわけだから仕方ないかもしれないけどさ、どうしてこうまで、自分に逆らう者がいないって考えるんだ?
「嫌だっつの」
「は!?」
男が俺をみて驚く。
いや普通死ねとか言われても嫌だって答えるだろ。ばっかじゃねーの、コイツ。
「あたしもヤダ!まだまだ殺したりないもん」
笑顔で吠えるナグサ。
「「僕らも嫌だね」」
顔を合わせてほほ笑むカエデとアケビ。
「俺も嫌だ」
苦笑するシン。
男の目は、必然的に残ったアメに向く。
「……嫌」
「ば、馬鹿がッ!ここまで来て、むざむざ帰れると思うな。いやここから逃げられたとしても、一体どこに隠れるというんだ?すぐに見つかるに決まっている!」
別に隠れなくたって、来た奴から順番にぶっ殺せばいい話だろ。
「問題ないな。魔王の息子というから、どんな奴だろうと思っていたが――口ほどにもない」
「ふざ――」
「悪いが返答は求めてない。アメ、ナグサ、カエデ、アケビ、シン――行くぞ」
『疾風の天衣』
シンの魔法で馬鹿男が吹き飛ぶ。
困惑する周りの兵士たちを余所に、俺たちは悠々と扉が出て行った。
「んで、これからどうするんだ、リーダー?」
「言うまでもないだろう」
王宮の地理が頭に入っているらしく、迷いなく先行するアメ。ま、砦に来るまではここに住んでいたんだから当たり前か。
ドでかい扉をぶち開けて、俺らは堂々とその部屋に入る。
にしても、ふーん。おもしろいことになってんじゃん。来る途中で感じた殺気はこれか。
「どうも、魔王様。お邪魔してるぞ」
「やあ、いらっしゃい。ちょうど君たちの話をしていたんだ」
とぐろを巻いた魔王サマがニヤリと笑った。




