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砦の日々  作者: 花屋
≪界渡編≫
59/68

53.死刑宣告


Side:セド


「久しぶりだな、アメ」


 上から目線のコイツはアメの兄らしい。魔王城にやってきた俺らだが、魔王とは未だに会えていない。 つーか、何のためにここまで来たんだ、俺ら?魔王に呼ばれたんだよな。


「相変わらず小汚い服装をしている。まあ、もう貴様も俺の妹でなくなるのだから、いいか」


 アメは何も言わない。兄じゃねーのか?

 ん?兄じゃなかったら殺していいよな!?


「なあなあシン、コイツ殺していい?」


「駄目だ」


「えっ、駄目なの!?じゃあ何しに来たの、ここ」


「ナグサ馬鹿だなてめえ。魔王をぶっ殺しに来たに決まってんだろ」


「あ、そっかあ」


「違う。黙って」


 反応したのはアメ。

 ほんとに違うのか?じゃあ何しに来たんだ、ここ。


「まったく、話に聞いたとおり野蛮な奴らだな」


「野蛮というのは否定しません」


 シンが敬語使ってる。変な感じだな。シンはこういうの嫌いだろ?我慢するぐらいなら、殺せばいいのにさ。


「それよりさあ」

「ここ、何しに来たの?」


「妹じゃなくなるってどういう意味?」

「今までも妹なんていう扱いじゃなかったと思うけどなあ」


「簡単なことだ。貴様らは死ぬ。報告もせず、人間たちを虐殺していた罪でな」


 は?

 俺らが死ぬ?なんで?意味わかんねーんだけど。ちゃんと魔族の言葉しゃべれよ。


「やはりか」


 なんでシンはわかってんだ?カエデとアケビは――も、わかってるみたいだし。

 この偉そうな男が何かするなら、「死ぬ」じゃなくて「殺される」だろ。自然死するってか?予言かよ。ユニークスキルか?


「わかってて来るとは愚か者だな。それとも下賤の者らしく、死ぬ覚悟でも決めたか?」


「わかってない奴もいるみたいだが――」


 ちらりとこちらを見る。俺!?


「戦争が終われば俺らは用済み。もともと人間を撃退するために砦に送られたわけではなく、むしろ人間たちに殺されてくれればいい――そんな考えだったんだろう?」


 あ、敬語が抜けてる。

 つーことは、コイツを殺すことにしたってことだな。


「戦っていなければすまない俺たち。強い者、より強い者と強者との戦いを求める。生きていれば、いつか魔界の脅威になる。厄介者でしかない。だから、戦争(処分場)がなくなったなら、不良品は殺さなくてはならない。そういうことだろう?」


 そういうことなのか。


「わかっているなら話は早いな。自害は父上の前でしてもらおう」


 清々しいまでの権力思考。確かに魔界は実力主義、力ある者が上に立つ、ってわけだから仕方ないかもしれないけどさ、どうしてこうまで、自分に逆らう者がいないって考えるんだ?


「嫌だっつの」


「は!?」


 男が俺をみて驚く。

 いや普通死ねとか言われても嫌だって答えるだろ。ばっかじゃねーの、コイツ。


「あたしもヤダ!まだまだ殺したりないもん」

 笑顔で吠えるナグサ。


「「僕らも嫌だね」」

 顔を合わせてほほ笑むカエデとアケビ。


「俺も嫌だ」

 苦笑するシン。


 男の目は、必然的に残ったアメに向く。


「……嫌」


「ば、馬鹿がッ!ここまで来て、むざむざ帰れると思うな。いやここから逃げられたとしても、一体どこに隠れるというんだ?すぐに見つかるに決まっている!」


 別に隠れなくたって、来た奴から順番にぶっ殺せばいい話だろ。


「問題ないな。魔王の息子というから、どんな奴だろうと思っていたが――口ほどにもない」


「ふざ――」


「悪いが返答は求めてない。アメ、ナグサ、カエデ、アケビ、シン――行くぞ」


疾風の天衣(ブラスト)


 シンの魔法で馬鹿男が吹き飛ぶ。


 困惑する周りの兵士たちを余所に、俺たちは悠々と扉が出て行った。


「んで、これからどうするんだ、リーダー?」


「言うまでもないだろう」


 王宮の地理が頭に入っているらしく、迷いなく先行するアメ。ま、砦に来るまではここに住んでいたんだから当たり前か。





 ドでかい扉をぶち開けて、俺らは堂々とその部屋に入る。


 にしても、ふーん。おもしろいことになってんじゃん。来る途中で感じた殺気はこれか。


「どうも、魔王様。お邪魔してるぞ」


「やあ、いらっしゃい。ちょうど君たちの話をしていたんだ」


 とぐろを巻いた魔王サマがニヤリと笑った。


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