48.熟考
お待たせしました。
もっと早くだせるかと思いましたが、テストがあり執筆が遅れました。
Side:セド
有り得ねえ。意味わかんねえし。
何で戦争が終わるんだよ。
魔王の命令?んなの無視すればいいだろ。もう失うものなんてねえんだからさ。シンは姉だか母親だか知らねえけど、いまだに思いこがれてるらしいけどさ、そんなの俺には関係ねえし。
あー殺したい。誰だっけ。あの人間共は魔王城に行ってるらしいけど、帰ってきたらぶっ殺す。つうか、そうだあれだ。シンが駄目とか命令するから、それに素直に従ったのが、そもそもおかしくね?マジ有り得ねえし。
とりあえずシャワーだけ浴びて部屋を出た。まだ髪が濡れてる。
シンは魔王城に報告に行った。そのためにスキル《瞬間移動》が使える奴が必要だから、カエデとアケビも一緒だ。
ナグサは俺と同じようにシャワーを浴びてるだろう。
食堂に降りると、アメと、何故か男がいた。
あー……誰だっけ。名前が出てこねえ。特徴がないからド忘れした。孤児院を経営してる奴。
「セド!?はあ、君もですか……」
あ、そうだ。“ルウくん”だっけ。
「意外と平気そうじゃん。てことは、ナグサはあんたの前で殺さなかったのか?」
「そんなわけないじゃないですか!ナグサは……」
いきなり叫んだルウが「うっ」と口をおさえた。吐き気すんなら休めばいいのに。
あ、いやあれか?こんな戦闘バカたちがいるとこでは、寝れないのか?
「大丈夫だぞ?俺たちはあんたみたいな弱っちいの、わざわざ殺さねえし。ゆっくり寝ろよ」
「そういう問題じゃないです!」
何だよ。ヒス?女じゃねえんだからさ。
「どうしてあなたもナグサも、こう少しずれているんですかね。――ッ!そういえば、ナグサは!?」
「は?今さらかよ。アイツなら、部屋に閉じこもってんじゃね?」
「それは、その……?」
そのって何だよ。最後まで言えっての。
こういうのっていらつく。ただでさえ戦争が終わりそうでむかついてんだからさ。
あー、イライラする!!
ダンッ!!
「そう“その”だよ。何かアイツすげえテンション上がっててさ、部屋でナイフでも磨いてんじゃね?」
「そそ、そうですか……」
ん?ナグサのテンションが高い?
つーことはあれじゃね?実は戦争が終わらない秘訣があるとか?で、ナグサとシンはそれを知ってる?
うわ、俺気づいちまった。天才だろ。
確かに、これならシンが魔王の命令に素直に従ったのも頷けるな。
どこだ?強い魔物は大半が双子に狩られているだろ?
ずっと殺せるようなとこじゃねえと、容赦しねえぞ?
あ?さっきの音?
むかついた俺がテーブルにナイフを突き立てた音だが、何か問題でもあるか?
「つうかアメも話せっての。俺に任せてないでよ」
テーブルに座ったアメはちら、とこっちを見た。だがすぐに正面に視線を戻す。
じっと固まって何してんだ?
1年一緒にいるけど、あいつのことって
、未だによくわかんねえ。
「ナグサは……僕たちが日常を過ごしている間も、戦っていたんですよね」
「あいつが、嫌々戦ってたと思うか?」
シンいわく、ルウはナグサの兄のような立場だったらしい。もちろん、常識的に考えれば、ってことだが。
実際のとこ、ナグサはそれほどルウのことを大事に思ってねえと思う。好きじゃないってことじゃねえけど、あいつの中じゃ戦闘以外のすべてのことの価値は低い。
はたから見ただけじゃそれがわかんねえから、気持ち悪いんだよな、あいつって。
「子供たちも、ショックを受けているみたいです。トラウマになるかもしれません」
「へえ」
んな深刻そうな顔されたって、あの身の程知らずたちがどうなろうと俺の興味の範疇じゃねえし。そもそもガキって嫌いだしな。
「何で…!?どうしてあなたもシンもナグサも、そんな他人事みたいな……」
いや、だって他人事だし。
「魔物の血が開花した奴ら、って聞いたことねえ?俺たちそれなんだけど」
「その話は聞きました」
じゃあ何でそんな、ウジウジ悩んでんだよ。
真面目、とかナグサは言ってたっけ。まったくその通りだ。俺とは頭が違う先祖から出来てるに違いない。
ま、冗談抜きにしても、俺たちの本能は魔物なんだから、違う先祖ってのはあながち外れちゃいねえよな。
「“殺す”ためだけに生きる……君たちは、悪です。魔族を悪だという人間たちは意味がわかりませんでしたが、今なら納得できます。君たちは悪魔ですね」
「あ、そう」
人間たちもそういうけどさ、悪とか正義とかって、そんなに、大事なのかよ?それなら、お前らは問答無用で正義なのか?そういうのって、メンドくねえの?
「僕は、ナグサの本質を見れなかった。何年も一緒にいて、それこそ兄弟みたいだったのに」
だから、ナグサは兄弟だなんて思ってなかったって。 いや、あいつのことだから、兄弟でさえも笑顔で殺すか?
つうか、ナグサの本質って何だよ?
あいつは結構ワガママだ。笑いたいときには笑うし、殺したいときには殺す。だから、あいつがルウの前で笑ってるのって、それこそが本質なんじゃねえの?
他の奴の性格とかを、自分の見えてる範囲で考えて、それで全部だって思うのが、傲慢だろ。
そんなことを思いつつも、俺はそれを口に出さなかった。
そんなことした日には、アメからシンに伝わって笑い者にされるのがオチだからな。
もしかすると、あくまで体は普通の魔族のカエデとアケビは、ルウの気持ちがわかるかもしれない。
そう考えると、あいつらって意外とまともなのか?
だが俺は、目の前の男を見てその考えを打ち消した。
あいつらは可愛い顔の下で、こいつを狙ってるんだった……まともなはずがない。俺も何度犯されそうになったことか。




