44.僕らの戦い
“僕ら”とありますが、残念ながらSideアレクレイです
ご了承ください
Side:アレクレイ
戦場とは思えないほど優雅だった。
もっとも、そう思ったのは、あの雅な姿を知っている私だけだろうが。
あのときと同じように、2人仲良く手をつないでいる。そして空いているほうには、大振りのナイフ。
だが、それは多少血に濡れているものの、ほとんど使われていないように思える。なぜなら、彼らの服には血が少ししかとんでいないからだ。
いや、服に血をとばさないような余裕があるほどの、つわものなのか。
答えは両方だった。
「《召喚》!」
朗々とした声が響きわたり、それに合わせて数多の小型ナイフが宙に現れる。
「《念動》!」
そしてもう1人の声によって、それらは飛び出し、兵士へとつきささった。
ノーマルスキル――の、はずだ。
置いてきた仲間の中にも、使えた奴はいた。だが、こんな簡単に、まるでこれは手始めですよというかのように使った者はいない。
人間はスキルを使いこそすれ、活かしはしていないのだ。
そしてそのナイフにひるんだ隙に、あれほど固く結んでいた手を離し、短剣で兵たちに切りかかる。一歩たりとも立ち止まらない。時折2人が示し合わせたように合流しては、またスキルを使って翻弄する。
何より異常なのは、兵士たちが振りかざす剣は、彼らに掠りもしないことだ。
1人の背中に突き刺さるかと思ったら、もう1人のナイフがその兵を殺して、攻撃できなくしている。死角からの攻撃も、まるで見えているかのように避けられる。
ふいに笑いがこみあげてきた。
無理だ。こんな化物に、勝てるはずがない。
戦闘が始まってからかなり長い時間が経っているはずなのに、彼らの動きは落ちることをしらない。どれほどの体力があるというのだろう。
そういえば、混じり物は他の人間に比べて身体能力が優れているという噂をあったのを思い出した。もしかすると、混じり物を差別せずに実力で測っていたならば、そうしてこの戦場へ連れてきていたならば、あの化物たちにも勝てたかもしれない。
双子の動きはゆるぎない。
人を殺すことへの恐怖も、逆に殺されるかもしれないという危惧も感じさせない。
それはまるで放たれた弓のように。迷うことなく敵の心臓を貫く。
すべてが計算しつくされたような完璧な舞に、私は言葉が出なかった。
「隊長……」
気がつけば、隣の部下が、固まって震えていた。
鬼神のごとく戦う姿をみれば、そうなるのも仕方ないかもしれない。
「行くぞ」
私はきっぱりと言い切った。
迷わない。つかの間の邂逅はこころよいものだったが、決して彼らに弁明を求めたりはしない。ここは戦場で、彼らは敵。それだけが真実だ。
私は彼らを殺す。
『正義とはどうせ偽善なのですよ。偽善でない正義などただの独りよがりにすぎません。』
ずっと前に義姉上が言っていた言葉を思い出す。その真の意味を、理解した気がした。
最後に一度だけ振り返る。部下たちに惜別の思いを込めて。
私の最初の間違いが、敵の姿を見ようとしたことならば、最大の間違いは、ここで振り返ったことだろう。
「――ッ!」
幾多の敵に囲まれている中で、私は確かに双子と目が合った。
間違いなく彼らに認識された――それは彼らの攻撃の手が、一瞬止まったことから明らかだ。
「急げッ!どれでもいい、馬を捕まえろ!」
見つかった。ならば、どうすればいい?捕まる前に逃げ切れ。その問答だけが頭に浮かぶ。
私は大声をはりあげて、自ら近くの騎手を落とした馬の手綱に手をかける。
部下がついてきていることすら確認せずに、無我霧中で馬を走らせた。
有難いことに優秀な部下たちは着いて来てくれた。なぜか追っ手も来ない。おそらく、向こうとしてもあそこを離脱して、敵にあの城を攻められるのは不本意なのだろう。
草原をぬけ、ようやく森に入って、私たちはほっとため息をついた。
シリアスが続きますね……
《界渡編》が終わるまでは、コメディ要素はおあずけです




