4.勘違い
Side:シン
砦は一見小さな城のような形態をしている。その両脇は森が続いていて、さらにその内側にフレアロンティを含めた魔界がある。だが、当然人間界側からは城しか見えない。砦=魔王城と見られてしまうのも仕方がない。俺たちの否定しない態度も、それを助長しているだろう。
ひととおり砦をみてまわったセドも嘆息していた。この城は6人で使うには広すぎる。
「この砦で何をするか聞いているか?」
「戦えばいいんだろ」
端的な説明だ。まあ、合っている。
「そうだな。戦闘は二種類あって、1つは勇者だ。人間は勇者とかいう奴を中心にして、パーティを組んでやってくる。神の守護とか意味わからないことを言ってな。
もうひとつは国が軍をよこしてくることだ。今まで、そんなに大きいのは来なかったが……個々の能力は低いから、全員であたれば余裕だ」
セドをみれば、案の定、意味がわからないという顔をしていた。
「神の守護?何だよそれ。神なんているのか?」
「さあな。肝心なのは、奴らが信じてるってことだ。奴らの理屈から言うと、俺らは神に反抗し、人間を襲う野蛮な種族、らしいぞ」
「はあ?人間を襲うって、魔人はほとんど魔界から出ないじゃんかよ」
そう。だが、人間は大きな勘違いをしている。いつ正せばいいのかと思いつつ、ずるずるとひきずっている間違いだ。俺たちにも責任の一端はある。……魔族と人間の因縁に興味はないから、反省もしていないが。
「人間は、魔物を魔族が使役していると思っているんだよ」
「マジかよ。そりゃあ、俺たちにも魔物の血は入ってるけどさあ……あんな知能のない奴らを使役できるわけねえだろ」
そもそも魔物と普通の獣はどう違うのか。
人間は「魔物は魔族が使役している」とかぬかしているが、これは全く違う。
実際のところ、この2つはそう変わりない。しいていえば、魔物は魔法を使う……だが、もちろん魔法を使わない魔物もいるし、この区別は曖昧だ。
そして、知能がない上に、凶暴は魔物など、使役できるはずがない。
「俺たちも否定していないからな。それに、否定したらつまらないだろ?」
否定して、もしそれが人間側に認められたら。
人間は戦争をふっかけてこなくなり、俺たちの戦闘の場は失われるかもしれない。
「……意外だ。シンって意外と熱いタイプだったんだな」
「そんなの、わかりきっていることだろ?」
やっぱりシンの口調が1番書きやすいですね