43.私の戦い
Side:アレクレイ
悪魔、化物、魔王。
決して侮っていたわけではないが、それらは誇張だと思っていた。
戦場から帰ってきた兵士は、仲間が死んだことに恐慌状態に陥っている。それゆえ、冷静な判断ができないのだと。
全て真実だった。
私の目の前では、人間たちが絶え間なく死んでいく。遠目にしか見えなかったが、たった5人の子供によって。
「隊長……駄目です。魔法が使えません」
「何だって!?」
周囲が混乱しないよう、囁きかけてきた部下の言葉に、私自身が動揺してしまった。
魔法が使えない……何かのスキルか?だが、そんなスキル聞いたことがない。
まさか、魔族は人間にはない能力を持っているというのか?
いや、今さらそんなことを言っていても仕方がない。魔族が常識ではかれないものだというのは、いま身を持って知っている。
「気にするな。魔法が使えないなら剣をとればいい」
実際は、こうして剣で戦っていても、倒せる気配が無いのだが――それは言わないでおく。
ただでさえ、この部下たちは仲間を置いていくことに罪悪感を持っている。それを助長させるようなことは、したくない。
「全隊員、作戦を開始する」
この作戦が成功すれば、この戦争は終わるかもしれない。そう自分に言い聞かせる。
義姉上の予想が外れているはずがない。
もし、この城の向こうに魔族の町が無かったとしても、何か弱みか、あるいは戦争終結の手掛かりになるようなものがあるはずだ。
「「「はい!」」」
揃った声を聞いて、私は戦場を後にし――城の左右から連なる森に入る覚悟を決めた。
義姉上の予想を確証にするため、私たちは森の向こうへと侵入する。
仲間が死んでいくのを見ながら走る中で、わき起こった1つの感情。
それは、単なる好奇心だった。
私だって1人の騎士だ。一騎当千に値する敵。どんなものなのかを、見てみたかった。
こちらの姿を見られても、死ぬのが嫌で逃げ出した貴族にしか見えないだろう。
しかし、兵の隙間からその小さな体を垣間見て、私の体は固まった。
どうして、あいつらがここに。
いや、それはあまりにも愚かすぎる問いだ。状況をみれば、彼らが今戦っている敵なのは明白なのだから。
だが、信じたくなかった。
仲良く手をつないだ双子が、血飛沫のあがる戦場で舞っていた。




