42.あたしの戦い
Side:ナグサ
「あはははは!!」
何だろこれ。すっごく楽しい。
「悪魔だ……」
「悪魔ってなーに?そんなのいないよぉ?」
だって本当に悪魔がいるなら、誰よりも助けてと祈ってたあの子たちは、助かったはずだもん。他人の命を売ってでも生きようとしてた、すっごくポジティヴなあの子たち。
今頃なにしてるかなぁ。
今度カエデとアケビに頼んで、連れて行ってもらおうかな。だって、2人だけ人間界に遊びに行ってずるいもん。
それで、もし死にたいって思ってる子がいたら、殺してあげるの。たぶん、自殺しに向かってくる人もいるはずだから、その人も殺してあげて。
すっごく楽しみ!
「逃げろッ!」
「こんなん無理だッ。死ぬぞ、逃げろォォ!」
あれ、考え事している間に、周りの人が減ってる。逃げてる人もいるじゃん。確か追わなくてもいいんだよね。どうしよっかなぁ~。
「あああぁぁあッ!」
「んー、とりあえず向かってくる人から殺してけばいいよねっ」
実のところをいうと、追えるほどの力が今のあたしにはない。
だって魔法は使えないし。この剣は短めにつくってあるから、どっちかっていうと双剣の片方にするほうが向いてるんだよね。
スピードは出せるけど、重さが足りない。
あたしだってこれぐらいは考えられるもんね!
「はぁッ!」
ガキッ!キィン!
「うわっ」
左腕が切り裂かれる。問題なんかぜんっぜん無いけど。だって、左腕なんか使わないから。使わないものが壊されたって、別に困らないでしょ?
あとあと困るかもしれないけどー……うん、やっぱり、そんなの今はどうでもいいよ!
鎧の隙間から短剣を差し込んで、首もとの血管を切り裂く。血が噴きでて、視界が真っ赤になる。
魔法でガードできないって結構つらいなぁ。
「ナグサ!って、うわっ」
「真っ赤じゃん!どしたの?」
仲良く手をつないだ双子が、突然宙から現れた。
「魔法が使えないんから、血を防げないんだよぉ。それより、二人こそどうしたの?」
魔法が使えないから、連絡するには直接来るしかないんだけど……何かあったのかな?
合流する、なんて作戦聞いてないけど。そもそも作戦なんて、あって無いようなもんだし。
「それは敵の血っていうより、ナグサの血も多いんじゃないの?」
え?
「あ、そっか。さっき左腕を怪我したんだっけ」
すっかり忘れてた。だって痛いとか考えてたら、戦えないもん。
「怪我とかいうレベルじゃないと思うけどねぇ」
「いや、とにかく!しゃべってる暇は無いんだよ」
魔法が使えない中で現れた二人に、周りの兵士たちは困惑してる。様子を見てるっていうのも正しい。
でもきっとすぐに、武器を掲げて向かってくる。
あたしたちに向かって来ている間はいいけど、砦まで行かれると困るんだよね。
だから早く死ぬか、逃げるかしてもらわないと。
「ああもう、急がなきゃ!」
「送るから、その先にいる敵を止めて!」
そう言われて、無理矢理手を掴まれた直後、視界が一瞬だけ真っ暗になって、浮遊感がした。着地したときに、ふらっとしちゃった。
スキル《瞬間移動》の応用。初めての感覚じゃないけど、やっぱり慣れない。
移動させられたってことは…ここにカエデとアケビの目的があるはずなんだけど。
ゆっくりと前を向くと、
「あれ?こんな所で何してるの、ルウくん」
呆然としている人間が何人か――これが二人が心配してたことかな――それから、やんちゃな子供たちを背中に庇う、ルウくんがいた。




