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砦の日々  作者: 花屋
≪界渡編≫
48/68

42.あたしの戦い

Side:ナグサ


「あはははは!!」


 何だろこれ。すっごく楽しい。


「悪魔だ……」


「悪魔ってなーに?そんなのいないよぉ?」


 だって本当に悪魔がいるなら、誰よりも助けてと祈ってたあの子たちは、助かったはずだもん。他人の命を売ってでも生きようとしてた、すっごくポジティヴなあの子たち。


 今頃なにしてるかなぁ。


 今度カエデとアケビに頼んで、連れて行ってもらおうかな。だって、2人だけ人間界に遊びに行ってずるいもん。

 それで、もし死にたいって思ってる子がいたら、殺してあげるの。たぶん、自殺しに向かってくる()もいるはずだから、その人も殺してあげて。


 すっごく楽しみ!


「逃げろッ!」

「こんなん無理だッ。死ぬぞ、逃げろォォ!」


 あれ、考え事している間に、周りの人が減ってる。逃げてる人もいるじゃん。確か追わなくてもいいんだよね。どうしよっかなぁ~。


「あああぁぁあッ!」


「んー、とりあえず向かってくる人から殺してけばいいよねっ」


 実のところをいうと、追えるほどの力が今のあたしにはない。


 だって魔法は使えないし。この剣は短めにつくってあるから、どっちかっていうと双剣の片方にするほうが向いてるんだよね。

 スピードは出せるけど、重さが足りない。


 あたしだってこれぐらいは考えられるもんね!


「はぁッ!」


 ガキッ!キィン!


「うわっ」


 左腕が切り裂かれる。問題なんかぜんっぜん無いけど。だって、左腕なんか使わないから。使わないものが壊されたって、別に困らないでしょ?

 あとあと困るかもしれないけどー……うん、やっぱり、そんなの今はどうでもいいよ!


 鎧の隙間から短剣を差し込んで、首もとの血管を切り裂く。血が噴きでて、視界が真っ赤になる。

 魔法でガードできないって結構つらいなぁ。



「ナグサ!って、うわっ」

「真っ赤じゃん!どしたの?」


 仲良く手をつないだ双子が、突然宙から現れた。


「魔法が使えないんから、血を防げないんだよぉ。それより、二人こそどうしたの?」


 魔法が使えないから、連絡するには直接来るしかないんだけど……何かあったのかな?

 合流する、なんて作戦聞いてないけど。そもそも作戦なんて、あって無いようなもんだし。


「それは敵の血っていうより、ナグサの血も多いんじゃないの?」


 え?


「あ、そっか。さっき左腕を怪我したんだっけ」


 すっかり忘れてた。だって痛いとか考えてたら、戦えないもん。


「怪我とかいうレベルじゃないと思うけどねぇ」

「いや、とにかく!しゃべってる暇は無いんだよ」


 魔法が使えない中で現れた二人に、周りの兵士たちは困惑してる。様子を見てるっていうのも正しい。

 でもきっとすぐに、武器を掲げて向かってくる。


 あたしたちに向かって来ている間はいいけど、砦まで行かれると困るんだよね。

 だから早く死ぬか、逃げるかしてもらわないと。


「ああもう、急がなきゃ!」

「送るから、その先にいる敵を止めて!」


 そう言われて、無理矢理手を掴まれた直後、視界が一瞬だけ真っ暗になって、浮遊感がした。着地したときに、ふらっとしちゃった。

 スキル《瞬間移動テレポート》の応用。初めての感覚じゃないけど、やっぱり慣れない。


 移動させられたってことは…ここにカエデとアケビの目的があるはずなんだけど。


 ゆっくりと前を向くと、


「あれ?こんな所で何してるの、ルウくん」


呆然としている人間が何人か――これが二人が心配してたことかな――それから、やんちゃな子供たちを背中に庇う、ルウくんがいた。


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