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砦の日々  作者: 花屋
≪界渡編≫
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閑話 忘れられない記憶4 Ame

 彼女と彼は同じ兄弟。

 同じ父を持ち、同じ母から生まれ、同じだけの魔力を持つ。


 唯一、彼女が獣人の血を開花させたことを省き。





 王宮だからこそ、彼女が“そうだ”という事実は簡単に判明。


『いつ凶暴化して殺されるかわからない』

『あの天使のような顔の下では、闘争本能が煮えたぎっている』

 恐ろしい怪物――そんな奴を甘やかすどころか、彼女に近づく者すら皆無。


 その代わりに、跡継ぎとなる王子は大切に育てられる。

 具体的には、愛情が与えられ、教育が施され、多くの玩具により暇など感じさせず、期待を集め、期待に答え、父母への敬愛をそなえ、時に王族としての威厳を持ち、順調に次期王として育っていく。


 ただ、感情すら知らない少女を、彼は妹だと認識せず。




 そんな彼女に転機がおとずれるのは、奇しくも自身の誕生日。


 忘れ去られたその誕生日に、彼女は襲撃を受ける。正しくは、王宮が襲撃を受け、その現場に出くわしたのが彼女。

 普段は誰もいないはずの庭で人の気配を感じた。数十人の男たちを発見――囲まれる。彼らが手に持つ武器、その凶暴な表情、血にまみれて倒れる庭師をみて判断――彼らは敵。

 同時に、その血の臭いをかいで、強い思いが沸き起こるのを感受。


 何か(、、)が彼女にささやく。


 戦えと。


 戦え。殺せ。戦いぬけ。戦いの中で死ね。目の前の敵を殺せ。本能に忠実であれ。素直になれ。武器をとれ。無いなら魔法を振りかざせ。使えないなら噛み付いてでも止めを刺せ。殺してみせろ。殺されてみせろ。


 戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え。


 初めての感情。


 彼女はその本能に従う。

 具体的には、図書室で読んだ魔道書の知識を手繰り寄せ、その身にあふれる魔力を吐き出し、理不尽に庭ごと(、、、)蹂躙した。


 結果。

 庭は侵入者もろとも大破。

 残るは焼け焦げた遺体――記憶と数は合致せず。だが問題は無し。


 “彼女”は砦に送られ、“私”となった。




 私が最も興奮したのは、最初の戦闘。

 戦え(、、)という体を燃えつくすように激しい感情。


 2つの光景が同時に見えるという常軌を逸した状況の中、あの感情を(、、、、、)もう一度(、、、、)とそれだけを考えている。

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