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砦の日々  作者: 花屋
≪界渡編≫
43/68

38.馬鹿共の叫び声

Side:シン


「グァァアアアアアアアア!!!」


 砦ぐらいの大きさがあるんじゃないかという、赤いドラゴンが咆哮をあげると共に。


「キャァッ!楽しそー!!」


「もっと興奮させろよトカゲ野郎!!」


 という何とも形容しがたい悲鳴(馬鹿共の叫び声)が響く。


 セドもなぁ……砦に来たはあんなに常識人だったのに、この1年ですっかり枷が外れてしまった。

 砦にいれば思う存分戦えるし、自分を偽らなくていいから楽なんだろう。


 砦の3番目のルール――命を惜しまないってのに真っ向から賛成してるわけだから、文句はないけどな。


 今回はアメも双子も来ていない。カエデとアケビは普段から冒険者の仕事を受けているんだから、我慢してもらった。

 アメにやめてもらったのは、俺がスキルを使うためだ。これが発動すれば、魔法使いたるアメは不要になるからな。


「いくぞ――《血塗れの戦場アンチマジックフィールド》!」


 見た目には何も変わりがない。

 だが俺にははっきりと変化(、、)がわかっているし、セドもナグサも体で感じているだろう。


 俺は腰の剣を抜き放った。


 真っ直ぐ見つめる。ドラゴンの目にすでに理性はない。殺意を浴びて、ゾクゾクするような快感が突き抜けた。



 俺はいま間違いなく戦場に立っている。



「はああああッ!」


 大地を駆け抜け、思い切り跳ぶ。無防備に宙にさらされた体に、レッドドラゴンが炎のブレスを吹きかけようとして――失敗した。


 ドラゴン種は魔法を使う。特にレッドドラゴンはその口から炎を吐き出すから厄介だ。

 だからそれを封じさせてもらった。


 《血塗れの戦場アンチマジックフィールド》。スキル所持者が指定した空間での魔法発動を阻害するユニークスキルだ。

 魔法によって燃やし尽くすことも、氷漬けにすることもできない。己の剣と体で戦うのみ。その戦場フィールドは血で染まることになる。それゆえの《血塗れの戦場》。


 本当は、アメと組み合わせればもっと効果的になるんだがな。こんな狭い空間で戦おうと思ったら、アイツは邪魔になる。


 混乱しているらしいドラゴンに顔に、剣を叩きつける。

 咆哮をあげるドラゴン。悲鳴、ってヤツか?


 感情のままに頭を振られて、俺は剣もろとも吹っ飛んだ。


 宙に放り出されるが、間一髪で背中の翼を出せた。さすがに丈夫にできてるとはいえ、3階から地面に叩きつけられるのは御免だ。


 痛みに微かな怯えを感じているところに、ナグサとセドが足へ切りかかる。本来ならば皮を削り取るか、跳ね返されるかといったその攻撃は、彼らの獣人の筋力をいかし、肉まで突き刺さった。


 そのまますぐに引き抜いて退却。

 セドの体ギリギリの地面をドラゴンが尾が叩いた。悲鳴みたいな叫び声をあげて飛びのく。奴の頬を血がつたっていた。


 仲間が死ぬかもしれない。自分が死ぬかもしれない。

 そんな戦場が楽しいだなんて、やっぱり狂ってるか?


「せやぁ!」


 可愛らしい――血塗れの戦場に不似合いな――掛け声とともに、ナグサが剣をふるう。アイツの要は剣と魔法の両立による撹乱であって、剣だけで戦うのは苦手なんだがな。


 もっとも、獣人の血が開花してるんだから、苦手というだけだが。


 当然のように、その一撃はドラゴンに少なからぬダメージを負わせる。


 そこへ俺が追撃。その巨大な体に似合わぬスピードで足が振られ、その爪が俺の服を切り裂き、衝撃を与えたが、それさえも俺を興奮させるだけだ。下に回りこんで、腹を剣で裂く。


「グォォォォォオオオオオ!!」


 ドタドタと巨体を揺らし、数歩下がった。 


「ハッ、震えちゃってさ。全然おもしろくねーじゃん」


「3人で来たのが間違いだったかな……」


 多すぎたかもしれない。


「シン、さっきの大丈夫ぅ?」


「余裕」


 チラッとみたときは、裂けた服から金の鱗がのぞいていた。ドラゴンの攻撃を受けるのに、これ以上の防御はないだろう。


「さてと。第二ラウンドいくか?」


「「もちろんッ!!」」


 頼もしい声を巨体をはさんできき、俺は剣を握る右手に力を込めた。


読んでくださってありがとうございます。

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