30.金髪の美女?
Side:シン
「ん?」
人の群れの奥に、見覚えのある茶髪と猫耳をみつけた。
アイツ、朝からカエデとアケビと喜びいさんで出て行った(このあたりですでに怪しい。関わりたくない)んだが、その双子はどうしたんだ?それに、ナグサと一緒に歩いている金髪女は誰だ?
「おい、アメ。あのむこうに、ナグサと金髪美女が歩いているだろう?この町の人間じゃないよな?」
「……」
返事がない。
「アメ?」
隣をみれば、上目使いで俺をにらんでいた。
いや、可愛いだけなんだが。効果ねえし。
「浮気は、駄目」
「いや、浮気じゃないって。隊員が見知らぬ人と歩いていたら、気にするのがリーダーとしての務めだろう?」
非常に不本意だが、俺はこの砦をあずかる小隊長を任じられている。あの男の部下とか最悪。それなら無職のほうがまだマシだ。
食ってくためには仕方ないけどさ。
「……なら、いい。
あれは双子の知り合い。マリマスの冒険者」
いや、見たことがないかだけ聞きたかったんだが。
「どうして知ってる?」
「………」
ぷい、と横をむく。可愛い。
いや、可愛いけどさ。いま思いっきり誤魔化したよな?
はあ……どうせ、《千里眼》で覗き見てたってところだろうけど。ストーカーっぽいから、いい加減やめような?
「あれ?シンにアメじゃん!どうしたの?買い物?」
気がつけばナグサと金髪(美)女はここまで移動してきていた。
ストレートの金髪に、整った顔。問題は胸がないってところか。だが、骨格はしっかりしてるし、冒険者としては成功しているだろう。どっちみち俺はアメ以外の女に興味はないし。今のところは。
「ナグサの知り合い?あたしはリアよ。弟とその妻がこの町で仕事を始めるっていうから、遊びに来てやったの。あなたたちは――カエデとアケビとも知り合いなのかしら?」
「そうだな。同じ家に住んでいる」
「あらそうなの。うふふ、いつも仲良くしてもらってるわ。夜もね」
さらっと言われた言葉に、ピタ、と俺とアメの動きが止まる。
オイ、ちょっと待て。
普通、そんなコトを昼最中に町中でガキ相手に示唆するか?
いや――カエデとアケビの知り合いなら、あり得るか。
砦に来たときは、不幸面した兄弟だなと思ったが、どの教育が間違いだったんだ……?
そもそも、戦闘狂の中で育ったのが駄目だったか。アイツらは獣人の血が開花したわけじゃないからな。
「弟たちね、2人の紹介で仕事をみつけたのよ」
「ルウくんのところで仕事するの!」
ナグサが笑顔で補足する。
ルウ――って、ナグサと仲よくしてる、あの孤児院の男か。俺もアメもうるさいのが嫌いだから、あんまり行かないけどな。
「両親ったらね、「あの子がそんな善行を……!」って泣いて喜んでいたわ」
「いいお父さんとお母さんだね!」
おい、何をしたんだ、その弟は。
いや、ただ姉から離れられたのを喜んであげただけじゃないのか?
「ねえねえ、アメたちがここにいるってことは、家はいまセドだけなの?」
「ああ、そうだ。アイツもここに来て1ヶ月経つし、大丈夫だろう」
「あら、セドって?他にもこんな可愛い子がいるの?」
期待に満ちた目でこっちを見てくる。
駄目だ、コイツ。カエデとアケビほどじゃないが、変態だ。間違いなく。
「カエデとアケビの意地悪。あぁ、あたしもこの町に住みたいわぁ」
意地悪……ってことは、2人は拒否したんだろう。それは褒めてやってもいい。いろいろと面倒なのは確かだからな。
「だからぁ、止めるって言ったでしょ?前言撤回はナシだよー?」
「言っておくけどセドはリアのタイプじゃないよ?初心だけど、恋愛とか興味なさそうだしね」
聞きなれた声がしたなと思ったら、リアとナグサの後ろにカエデとアケビ、さらに見知らぬ男女が立っていた。追いついたか、みつけて合流したらしい。
おそらく、この2人がこの町に新しく住むという夫婦だろう。
とりあえず形だけは挨拶しておいた。
遠い町だから、カエデとアケビが深く関わるのは認めたが、同じ町だとろくなことにならない。2人はどうせ、甘くみているだろうがな。
さらに元冒険者だ。いつか砦の向こうのことに、関わってくるかもしれない。
……憂鬱だ。あとで2人を搾ろう。
リアは今日は孤児院に泊まるらしい。子供たちも美人がいたほうが喜ぶに違いない。
ナグサを寂しそうに見ていたが、あれは人形というよりヌイグルミに対する愛情のほうが近いだろう。
ああ、それから、ずっと気になっていたんだが。
「リア、失礼だが」
別れ際に、トントン、と額を指差した。
俺と同じドラゴンの獣人、というのは親近感がわくが、翼を隠したまま角を出すなんて微妙なことは見ていて恥ずかしい。角が隠せないとかそういうことなら、何かを巻くだろうし。
「あ……本当ね。ありがとう」
美女がぽかん、とした表情をするのは、なかなか面白かった。
何故かカエデ・アケビ・リアが変態化していきます……




