28.夫婦と兄(上)
Side:カエデ&アケビ
「あなたちが、アネアさんとキルトさんですか?」
美人な妻と穏やかそうな夫をみて、ルウは目を見張った。
普通の夫婦だと思うけど……何か変かな?
「あ、いえ失礼。カエデとアケビの知り合いですから……普通な人で驚きました」
「私としては、予想以上に美人と言ってほしいところなんだがな。まあいい。それにしても……魔法で話したときも思ったが、カエデ、アケビ……狙っているな?」
「「あれ、ばれちゃった?」」
まあ、2人には「リアは美人さんだけどタイプじゃないんだよね~」って、僕らの好みを伝えたことがあるからね。
綺麗な美人さん。腕力や魔力――力は弱いが、そんなことは気にせず、頭ですべてを動かしてみせる。負けず嫌いだが、勝ちにこだわるほど頭は悪くない。だけど意外と純情で、恋愛事には真っ赤になって反応してみせる。
いちいち僕らのツボを押してくるんだから。
可愛すぎて困っちゃうよ。
「ベタぼれだね。食われないように気をつけなよ?」
「食われ……?」
数秒ののち、意味がわかったらしいルウが「絶対ありえませんッ!」と猛烈に反論していたけど、顔が真っ赤だからいまいち真剣味がない。
うん、でもそうだね。食べちゃいたいってのは否定しないかな。
「ねえねえ、はやく子供たちに会いに行こうよぉ」
理解できない会話に匙をなげたのか、ナグサが催促する。おそらく無意識下で判断したのか、この中で場を動かすのに最も適切で、しかもナグサに目をかけているアネアに話しかけていた。
「へー!アネアとキルトって、冒険者だったの!?すごーい!」
「なあ、俺たちを鍛えてよ!ルウって弱いからさ、そういうのぜんっぜん当てになんないんだって」
「ミライ、ユーゴ……あなたたち、またお仕置きされたいんですか?」
心なしか空気がひんやりしてきた気がする。ううん、ルウにアメほどの魔力はないから有り得ないんだけどさ。
ひっ、と怯えたように2人の子供が首をすくめた。
「アネアさん、キルトさん。この2人は要注意人物ですからね。目を離さないでください。森に行こうなんて考える馬鹿たちですから」
「……森?」
キルトが首をかしげる。その目がこう言っている。「この町は砦と他の町に囲まれているし、森なんて近くにないはずだけど?」
フレアロンティって町は、砦の1番近いのに、砦に関心がない。なぜって、「砦があって日常的に戦争が行われている」のは、フレアロンティでは当たり前だからだ。当たり前のことをいちいち口に出す人はいない。
だから逆に、余所から来た人はこの“常識”に慣れず、苦労することになる。
僕らとしては、あんまり砦のことにふれないし、わざわざ嘘をついてごまかさなくてもいいから、嬉しいけどね。
「そうか、あなたたちは遠くから来たんでしたね。森というのは――」
心優しい――というよりは責任感の強いルウが、説明しようとしたとき。
「みつけたわよ――ッ!!」
「兄さん!?」
僕らの他には子供たちだけのはずの孤児院で、金髪美女が部屋に飛び込んできた。




