27.新たな住人
Side:ナグサ
窓から差し込む光が、朝だよって知らせてくれる。でも、あたしの上に落ちるのは影。
……誰?
「ナグサ、起きてよ」
「今日は2人が来る日なんだから」
あたしのプライベートルームに無断で入ってきていたのは、カエデとアケビだった。2人ならスキル《瞬間移動》が使えるから簡単だよね。
でも、2人って誰?
あ、そうだ!
「今日なの!?」
「そうだよー」
「はやく着替えてね」
「うん、ちょっと待って!」
2人がまたスキルを使って消えるのをみて、急いで服を脱ぐ。
もう、いつかなんて全然言われなかったから、わかんなかったよ。昨日のうちに言ってくれればよかったのに。
衣装箪笥からテキトーに服を引っ張り出す。
理由はよくわかんないけど、ルウくんがスカートじゃなくていいよって言ってくれたのは嬉しい。だってパンツのほうが絶対動きやすいもん。
鏡でさっとチェックしたあと、扉の外へと駆け出る。
「おまたせっ」
「こんにちは。えーと、……誰だっけ?」
酒が入ったグラスを優雅に傾けていた女性は、クスリと笑った。
「アケビとカエデから名前を聞いていないのかい?それとも忘れてしまった?
私は亜音亜。こっちが夫の斬都だ。これからよろしく頼む」
髪型はショートカットだから男性っぽいけど、はちきれんばかりの胸元がそれを否定している。口調もクールで格好いいし、酒場兼ギルド支部にはあんまり似合わない人だ。
「斬都だよ。よろしくね」
男の人のほうは、優しく笑ってみせる。こういうのを……「尻に敷かれる」?
「あたしは菜草。よろしくね!」
にっこり笑うと、2人は顔を見合わせて何かをささやきあった。
「可愛いな…双子といい、この町には美形しかいないのか?」
「にい……リアが見たら、危ないかも。あれでも両刀なところがあるから」
両刀?双剣使いってことかな?
「はいはい、2人とも。ナグサに丸聞こえだから止めようね」
「でも、本当によかったの?子供ができるまで冒険者を続けてもよかったのに」
「いや、両親に結婚の報告を言ったら、いい加減地に足をつけろと怒られてな。子供ができてからじゃ襲いとね。だから、ちょうどよかったんだ。
私もキルトも、子供の世話は嫌いじゃないしな。
それに、ギルドのほうも辞めないぞ?週に2,3回は仕事をしようと思っている」
実は、カエデとアケビの知り合いだっていうこの2人には、ルウくんの孤児院を手伝ってもらうことにしたんだ。
ルウくんは「あの2人の知り合い……?」とかいって、心配そうだったけど、あたしの魔法で話したときに、安心したみたいだった。確かに、知り合いっていっても信用できない人は困るもんね。
「それぐらいなら、大丈夫じゃないかな?
でも、ごめんね。ほんとはルウくんが来れればよかったんだけど、1人で孤児院をまわしてると、大変だから。最近は成長した子が手伝ったりもしてるんだけど」
「いや、仕方ないさ。逆に、それでよく今までもってきたなと驚いているぐらいだ」
「ルウくん、真面目さんだから……って、カエデとアケビ、なに驚いてるの?」
目を丸くしてこちらを見ている2人に問いかける。
「いや、カエデがまともなことを言って、ルウをフォローするなんて……」
「明日は槍が降りそうだなって思って」
「ひどいよ2人ともっ!!」
酒場に快活な笑い声が響き渡った。
少しずつ話は進んでいきます。




