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砦の日々  作者: 花屋
≪日常編≫
30/68

25.砦の喧騒(下)

Side:セド


『《零度の剣(アイスクル)》!』


 廊下の先から声が響いた。宙から数本の氷柱が飛び出す。無詠唱だから威力は弱いし、数も少ないが、当たれば脅威になる。それらはそのまま、俺が寸前までいた場所を貫いた。

 危ない、とは思わない。《零度の剣(アイスクル)》は発動地点が敵がいる場所じゃねえから、敵の動きを予測して発動しなきゃならない。

 さっきまでの戦闘では、俺は本気を出していなかった。だからスピードも全く違う。つまり、今の動きはナグサの予測外なはずだ。氷柱が命中するはずがない。


「ちょ、速いよっ!」


「当たり前だ!」


 こっちは本気を出したんだからな!


 魔法は対象の地点を目視していないと難しい。それゆえに廊下の先に立っているナグサは、俺の脚力によって、すでに目の前にまでせまっていた。


 右手の剣を横一文字に振り切る。


 スピードと獣人の腕力が重なって、ナグサは手に持った剣でガードしたものの、そのまま後ろへ吹き飛ばされた。

 半ば壁にうまるようにして止まる。ガラガラと壁の土が崩れた。


「いったああ!!」


 それで痛いですむってある意味すげえ。


「意外と力が強いね、セド」


 俺の一撃を防いだナグサの短剣はひびが入り、構えれば途中で折れた。使い物にならない。

 それに焦った様子もなく、ナグサは腰から短剣をまた引き抜いた。どうやら俺が砕いたほうは本命じゃないらしい。ま、あんな簡単に折れるのが得物だったら困るよな。


「セド、ドキドキする?」


「すっげえするに決まってンだろ!」


「だよね!たのしいなぁー!!」


 肩から血が垂れている。傷つけられたことで戦闘欲求が高まったらしい。キャハハハッと壊れたみたいに笑って、逆手に短剣を構えた。


『《飛び散る炎の粉(リトルディファイア)》!』


 って、見てる場合じゃねえだろ!


 上空に浮かぶ大きな炎の塊。そこから小さなボールのような炎球が飛び出してくる。そのつど炎は小さくはずだが、消える様子はまったくない。


 あー、無詠唱のくせにやっかいな魔法使いやがって!


「――チッ!」


 左に跳んで、床を蹴る。そのまま体を傾けて、壁をつたう。あくまでも魔法は発動者の判断によって発動する。ナグサが俺の動きに反応する前に、俺はナグサの後ろに跳んでいた。


「背中、ガラ空きだぜッ!」


「セドもねッ!」


 俺の剣はナグサの左腕を切り裂き、


 放たれた炎球は壁をはねて(、、、、、)俺の背中へと直撃した。


「いってえええ!!」


 前の左腕の時より痛い。何でだ?


「セドって痛みに弱いよね~。火傷って初めて?」


「経験したくなかったけどな!!」


 剣をふるえば、キィンと短剣にはじかれる。――っと、何も考えずに攻撃したけど、ここだと《飛び散る炎の粉(リトルディファイア)》の本体があるからマズイな。


「悪いが場所変えるぜ」


「え、ちょっと!」


 困ったことに俺が移動するとナグサは立ち止まる。近接戦が得意な俺と違って、ナグサには魔法っつうアドバンテージがあるからな。距離をとったほうが楽ってわけだ。

 じゃあ、戦闘の場所を変えるにはどうすればいい?


 ナグサを移動させればいい。


 剣をふるう。ナグサが避けたすきに、その足に蹴りを叩き込んだ。


 文字通り吹っ飛ばされるナグサ。俺は足でその後を追う。

 残念ながら地面を蹴る俺よりも、宙を飛ぶナグサのほうが速かった。


 立ち止まった先では、先ほどと変わりない様子でナグサが立っている。受け身はとるよな、そりゃ。仕方ねえ。


「ちょっと、あたしもさすがに怒るよー?」


「ハッ、だから何だよ」


 剣を構えて、切りかかる。近接だと、スピードはナグサの短剣のほうが速いが、力は俺の剣のほうが強い。スピードなんか動体視力と筋力でおぎなえばいいし、俺のほうがリーチが広いっていう利点がある。


『其は土 其は火


 硬い殻、押し込められるは爆発すべき力


 弾丸となりて駆け、爆弾となりて壊せ


 押し込められた(ソリル)――


「言わせねえよッ!!」

 

 呪文スペルを唱える余裕があるなんて信じられねえ。

 それが完成する前に、剣を押し込む。焦って口をつぐみ、たたらを踏むナグサに、さらに一撃を繰り出した。


 だが実際に焦っていたのは俺だった。


――キィン!


 力を流すようにして、はじかれた剣。その向こうで、きらきらと輝く瞳と目が合った。


 ――土塊(バム)!!』


 魔法の完成。


 意外にも現れたのは親指の爪ほどの球だった。

 危ないと思うのは、高速で俺に向かってきていることか。でも当たったとしても、それほどダメージはない。おそらく、「あ、痛ぇ」ぐらいだ。


 いや待て。


 「其は火」?どうして土の塊を生み出すだけで、火の属性が必要になる?


 ゾク――


 寒気がして距離をとろうとしたが、みくびっていたがために、既に間近に迫っている。

 せめて避けようと、体を反転させたとき、


「弾けちゃえッ!」


 楽しそうなナグサの声がして、親指大の球が、


 爆発した。


「うわぁぁあああッ!?」


 爆発自体はそれほど大きいものじゃない。


 だが完全に不意をつかれた俺は、その向こうから飛来する短剣を防御することすらできなかった。



 グサリ。


 血が抜けていく。あ、これちょっとヤバイとこ貫いてんじゃねえの?


「たっのしー!ほらね、あたしの勝ちー!!」


 それに反論する暇すらなく、俺の意識は闇に沈んだ。


なぜか戦闘シーンが長くなるという謎…


セドが負けてばっかりですが、ほら、新人ですから

閑話で書きますが、もともとは剣すら握ったことのない小僧ガキです


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