2.ナグサという少女
Side:ナグサ
朗報、朗報だよっ。
ミミちゃんが死んじゃったから、その後釜が来たんだって。「後釜じゃなくて追加だって」「ナグサは本当幸せだよね~」なんてカエデとアケビに言われたけど、馬鹿にされてることぐらいはわかるからね!
「あっ、シン~!その子が新しい子?」
そう言ってから、あれっと思った。その子はあたしより年上っぽくて、しかも男の子だったんだ。その「子」なんて感じじゃなかった。ついてる耳も黒い犬耳で、全然可愛くない。
んー、でも、新しく入るのは楽しいよね!
「そうだ」
「初めまして!あたしは菜草。よろしくねっ」
「ああ……俺は瀬怒だ」
そう言ってから、セドはあたしを品定めするみたいに見た。その上、
「お前、戦えるのか?」
だって。失礼しちゃうよね!
「むぅ!いい!?こうみえてもあたし、近接線ではこの砦で1番なんだから!」
「カエデとアケビには勝てないけどな」
うっ。そこを言われるとキツいんだけどな……。でも、相手は2人がかりなんだから、仕方ないよね!
「それに手合わせでは俺も本気を出してないし……」
「うーるーさーいっ!ていうか、いい?セドはこの砦に来て1回も戦ってないでしょ?そんな人よりあたしのほうが絶対上だから!犬がキャンキャン吠えないで!」
「犬!?馬鹿にすんなよ、狼だっ!」
……え。ホント?
っていうのがわかったのかな。セドもあたしが本気でわかってないとは思ってなかったみたいで、言葉につまっていた。
「え……と、ごめんね?」
さすがに狼を犬って言うのはマズイ。格が違うもん。
そもそも、あたしたち獣人ってのは、高位の魔物の血が入ってる……って言われてる。高位の魔物は人型になれたから、らしいけど、本当かどうか知ってる人はいない。そんな魔物いないもん。
で、その中でも、あたしの猫や犬は下位に近い。狼は上位で、砦の中ではシンが1番高いかな。獣人は数が多いし、潜在的な人もいて、魔物の血が入ってない人はいないなんて言われてるから、差別されたりはしない。でも逆に、その含まれてる血に誇りを持ってるっていうのはよくある。
あたしがあっさり謝ったのが意外だったのか、セドも大人しく頷いた。
「あ……ああ」
なんとなく気まずくなったときに、シンがはかったかのように口をはさんだ。
「ナグサは確かにガキにしか見えないが(セドより失礼だよっ!)戦闘能力は確かだ。ここでしばらく過ごした後ならともかく、今はセドは絶対勝てないぞ。手合わせしてもらえ。
それから――」
シンは声をひそめたけど、あたしの耳にはちゃんと届いたんだからね!照れるから言わないけどっ。
「それから、ナグサは根は善良だから、あんまりからかわないでやってくれ」
シンって、ぜったいあたしのこと馬鹿にしてる!
ナグサの口調は書きやすいですが、説明に向きません…