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砦の日々  作者: 花屋
≪日常編≫
27/68

22.生真面目青年と孤児の子供たち(上)


Side:ナグサ


 今日は、あたしにしては珍しくスカート。


 本当はパンツのほうが楽なんだけどね、ルウくんてば、それでいくといっつも怒るんだから。もっと女の子らしい格好しなさい、って。


「あれ、ナグサがスカートだ。めずらしいね」

「どっか遊びに行くの?」


「うん、久しぶりに孤児院に行こうかな、って」


 ああやって、小さい子たちが群れてるのをみると、あたしの昔を思い出すんだよね。


「へえ?……ああ、ルウってばいっつもナグサの生足みて照れてるもんね。今もそう変わりないと思うけど」

「ねえ、僕らも一緒に行っていい?」


「いいよ~」


 人数が多いほうが楽しいもんね。





 魔界は比較的平和だ。人間界に比べれば、それは際立ってる。

 だって、戦争なんて砦の向こうだけだし。魔物だって冒険者が倒すし、住民だって力が強い者が多い。


 ただ、フレアロンティは砦に近いから、“ワケアリ”ってのが多くいる。それに人口も多い。


 だからここの孤児院は、城下町と同じくらいの数と規模がある。


「やほー、ルウくん!遊びに来たよ。いつもお疲れさま」


「ナグサ、また来たんですか?手伝いが増えるのは嬉しいですが――」


 そう言ったルウくんは、あたしの後ろをみて固まった。


 あ、そういえばルウくん、前に「あの2人は金輪際連れてこないでください」って言ってたっけ。

 仲が悪いってことでもなさそうだけど。苦手なのかな?


 でもほら、連れてきちゃったものは仕方がないよね!


「ルウ、久しぶり」

「ねえさ、そろそろ一緒に寝ようよ?」


 あれ?カエデとアケビは、ルウくんと一緒に寝たいの?もう子供じゃないのに、添い寝が好きって、2人とも変だよね。でも可愛いからいいかな。


「ちょっと、ナグサ!あの2人は子供たちの情操教育上よくないから、連れてくるなって言ったじゃないですか!?」


「じょーそーきょーいくって何ー?」


「ああ、そうでしたっけ……あなたは子供たちと同じレベルの頭脳なんでしたね」


 そこはかとなく馬鹿にされてる気がする。ひどいよ、ルウくんてば。


「ルウくん、カエデとアケビは仲良くしたいって言ってるんだから、そんなに嫌がっちゃ駄目だよ?悪い子じゃないんだからね?」


「悪気がないのが逆に困るんですよ」


 仕方がありませんね、とルウくんはため息をついた。


「追い返すのもなんですから、子供たちと遊んでやってください」




 ルウくんは20代後半の美青年だ。

 獣人でなく、力も魔力も弱かったために、孤児院に捨てられたらしい。そこでダンジさん――ルウくんがいう“お祖父ちゃん”に育てられて、数年前に死んだ彼のあとを引き継いだ。

 生真面目な性格で、子供たちからは鬼って呼ばれてるそうだけど。


「はい、これ、おみやげ」


「ケーキですか?ありがとうございます。子供たちには、なかなかこういうものを食べさせてあげられなくて。僕が作れればいいんですけどね」


 魔界の福祉制度はしっかりしてるから、子供たちは服をきて、食べていくことはできる。でも、さすがに嗜好品までは手がまわらないらしい。


「あたしも、料理は駄目だからね。セドも、作れるのは雑な料理だけって言うし」


「でも、その割に」

「セドって何でも作るよね」


 しかも、どれもおいしいよね。

 前は、香辛料が手に入った、とか騒いで、ステーキ作ってたしね。前よりおいしかったからいいけど。


「セドって誰ですか?」


「うーんとね…………隣人?」


「ナグサ、それ嘘って言ってるようなもんだよ?」

「正しくは僕らの家に新しく住むことになった男の子、かな」


 そこまで言っていいのかな?


 それにしても、ルウくんには何も伝えてないけど(嘘も言ってないけどね)、あたしがどこに住んでて何をしてるとか、知らなくていいのかな?


 うーん、やっぱり、こういう人付き合いがあるから、あんまり町の人と関わるのは面倒だなあ……。ルウくんはここに来たときから、兄みたいに接してるから、今さら離れるっていうのは無理だけど。


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