22.生真面目青年と孤児の子供たち(上)
Side:ナグサ
今日は、あたしにしては珍しくスカート。
本当はパンツのほうが楽なんだけどね、ルウくんてば、それでいくといっつも怒るんだから。もっと女の子らしい格好しなさい、って。
「あれ、ナグサがスカートだ。めずらしいね」
「どっか遊びに行くの?」
「うん、久しぶりに孤児院に行こうかな、って」
ああやって、小さい子たちが群れてるのをみると、あたしの昔を思い出すんだよね。
「へえ?……ああ、ルウってばいっつもナグサの生足みて照れてるもんね。今もそう変わりないと思うけど」
「ねえ、僕らも一緒に行っていい?」
「いいよ~」
人数が多いほうが楽しいもんね。
魔界は比較的平和だ。人間界に比べれば、それは際立ってる。
だって、戦争なんて砦の向こうだけだし。魔物だって冒険者が倒すし、住民だって力が強い者が多い。
ただ、フレアロンティは砦に近いから、“ワケアリ”ってのが多くいる。それに人口も多い。
だからここの孤児院は、城下町と同じくらいの数と規模がある。
「やほー、ルウくん!遊びに来たよ。いつもお疲れさま」
「ナグサ、また来たんですか?手伝いが増えるのは嬉しいですが――」
そう言ったルウくんは、あたしの後ろをみて固まった。
あ、そういえばルウくん、前に「あの2人は金輪際連れてこないでください」って言ってたっけ。
仲が悪いってことでもなさそうだけど。苦手なのかな?
でもほら、連れてきちゃったものは仕方がないよね!
「ルウ、久しぶり」
「ねえさ、そろそろ一緒に寝ようよ?」
あれ?カエデとアケビは、ルウくんと一緒に寝たいの?もう子供じゃないのに、添い寝が好きって、2人とも変だよね。でも可愛いからいいかな。
「ちょっと、ナグサ!あの2人は子供たちの情操教育上よくないから、連れてくるなって言ったじゃないですか!?」
「じょーそーきょーいくって何ー?」
「ああ、そうでしたっけ……あなたは子供たちと同じレベルの頭脳なんでしたね」
そこはかとなく馬鹿にされてる気がする。ひどいよ、ルウくんてば。
「ルウくん、カエデとアケビは仲良くしたいって言ってるんだから、そんなに嫌がっちゃ駄目だよ?悪い子じゃないんだからね?」
「悪気がないのが逆に困るんですよ」
仕方がありませんね、とルウくんはため息をついた。
「追い返すのもなんですから、子供たちと遊んでやってください」
ルウくんは20代後半の美青年だ。
獣人でなく、力も魔力も弱かったために、孤児院に捨てられたらしい。そこでダンジさん――ルウくんがいう“お祖父ちゃん”に育てられて、数年前に死んだ彼のあとを引き継いだ。
生真面目な性格で、子供たちからは鬼って呼ばれてるそうだけど。
「はい、これ、おみやげ」
「ケーキですか?ありがとうございます。子供たちには、なかなかこういうものを食べさせてあげられなくて。僕が作れればいいんですけどね」
魔界の福祉制度はしっかりしてるから、子供たちは服をきて、食べていくことはできる。でも、さすがに嗜好品までは手がまわらないらしい。
「あたしも、料理は駄目だからね。セドも、作れるのは雑な料理だけって言うし」
「でも、その割に」
「セドって何でも作るよね」
しかも、どれもおいしいよね。
前は、香辛料が手に入った、とか騒いで、ステーキ作ってたしね。前よりおいしかったからいいけど。
「セドって誰ですか?」
「うーんとね…………隣人?」
「ナグサ、それ嘘って言ってるようなもんだよ?」
「正しくは僕らの家に新しく住むことになった男の子、かな」
そこまで言っていいのかな?
それにしても、ルウくんには何も伝えてないけど(嘘も言ってないけどね)、あたしがどこに住んでて何をしてるとか、知らなくていいのかな?
うーん、やっぱり、こういう人付き合いがあるから、あんまり町の人と関わるのは面倒だなあ……。ルウくんはここに来たときから、兄みたいに接してるから、今さら離れるっていうのは無理だけど。




