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砦の日々  作者: 花屋
≪日常編≫
26/68

20.5.セドの左腕


割り込みするかどうか迷いましたが、

この話は閑話に近いものとして読んでください


Side:セド


 目を開けば、目の前には頭を失って混乱している軍隊。


 30人ぐらいか…?量は少ない。問題は質だな。


「ナグサ、いっきまーす!」


 隣でナグサは大声をあげる。


「うるせえっての!てめえは黙って剣を振ってろ!」


 そういや、ナグサの力量はこうやって戦いで見たけど、実際に手合わせしたことはねえな。これが終わったら戦うか。

 やっべえ、テンション上がる。なんだよ、けっこう生きるのって楽しいじゃねえか。


 ――ガキン!


 なんて考えてたら敵の剣と俺の剣が交わる。意外と強いな。抵抗できるレベルってのはいい。俺のスピードについてこれず、剣を持ち上げることすらできないのよりは、いい。


 力押しで剣を弾き飛ばして、胴をなぐ。チッ、これ妙な魔法がかかってやがる。硬化か?邪魔なもん、つくるなっての。こっちは身体1つで来てんだからさ。


 いったん引くと、剣を失った男と俺の間に、他の奴が割り込んでくる。

 何だよ、今度はお前が相手?いいな、それも。ローテーションってヤツ?


 振り下ろされた剣をよける。耳元で風切り音がした。命の危機に、どうしようもなく心が躍る。ついでに、コイツを殺したいとも思う。

 お前さ、俺に何してくれちゃってんの?


 足に力をこめて、跳躍。


「――な!?」


 軽々と男の上を飛び越える。同時に回転。防御なんてしようがない、その無防備な首に、剣を叩き込んだ。


 くるりと猫のように着地。まあ、狼なんだけどさ。


 そのまま、邪魔されて殺せなかった男も、頭と身体におさらばしてもらう。


 噴き出す血。呆然と見ている、周りの男たち。

 濃密な臭いが、いま俺は戦場にいるんだと自覚させる。


 最高だ。


「きさまぁぁぁああああああ!!!!!!!」


 悲鳴にも聞こえる叫び声をあげて、他の奴が切りかかってきた。

 ……ん?何だコイツ。女かよ。さっきのが恋人だったとか?


 でもさっきの奴らより強いじゃねえか。


 俺だって、魔物の血は開花してるし、獣人だ。

 とはいっても、戦闘訓練を受けてるわけじゃない。ほとんど本能で力任せに戦っている。


 つまり、かなり強い奴だと、俺だって危ないな、と感じることはあるわけだ。



 ……と、いま知った。


 しかたねえだろ!今まで戦ったことだって少ねえんだからさ。



 速い。

 力押しの俺と違うそのスピードに、体がついていかない。この女、きっと理性じゃなく感情に任せて動いてやがる。そうじゃねえと、獣人のスピードを上回るなんてできるはずねえだろ。


 髪が数本とばされる。頬をつたう血。やっべえ、られるかも。

 すげえドキドキする。これって、つまり、こういう感情だろ?


 楽しい。


「動くなああっ!!」


 力強い声。一瞬だけ俺の体がかたまる。


 動くな?ふざけんてんじゃねえぞ、っての。


 構わず右手を動かす。お互いの最高の力がこめられた剣が交錯し――女の胸から血が噴き出した。

 ほら見ろ。俺の勝ち。


 勝利に酔い、隙ができたその刹那、


 背後からの殺気。


「――チッ」


 無理矢理、体を反転させる。相手の剣は、無防備になっていた左半身に振り下ろされた。


「セドッ!!」

 

 鮮血。宙を飛ぶ俺の左腕。


 遠くから悲鳴のような声が聞こえる。


「よし!」

「やった!」


 血がぬけて、頭がだんだんと冴えてくる。


 いってえ。


 なのに俺の頭に浮かぶのは、恐怖は怒りじゃなくて、猛烈な歓喜。


「ぁぁぁぁああああああっっっ!!!」


 戦いたい。もっと強い敵と。俺を殺すくらいの。誰と?いるじゃねえか、前に。俺の腕をとばした奴がさ。コイツを殺したら、もっと楽しいんだろうな。

 すげえ奇跡に乾杯。


 満面の笑み――男たちが後ずさる。


「おい……」

「コイツ、やべえって……」


 おいおい、これぐらいの狂気に怯えてたら話にならねえだろ?

 もっと俺を楽しませろよ。


 片腕で剣を持ち上げて、地面を蹴った。


 人生ってくだらねえと思ってたけど、生きるのってけっこう楽しいじゃねえか。





「セド、ちゃんと最初から本気で戦ってよ~……」


「「セド、大丈夫~?」」


 戦闘が終わると、双子が《瞬間移動テレポート》してきた。話をきけば、アメが魔法で頼んできたらしい。


「腕をとばされるってさ……」

「スキル使えば直るけど、ちゃんと動くかわからないよ?」


「いや、動かす」


「出たよー、脳筋発言」

「まあ、セドならたぶん動くと思うけどね」


「「《再生リターン》」」


 双子がスキルを使えば、みるみるうちに、とばされた左腕が復元されていく。

 いろいろ制限が多いスキルだが、肉体を戻すなんて、まさに神業だ。


 過程はかなりグロイけどな。


「すごーい。あたしこれ、初めてみたんだよね~。《治癒ヒール》なら何度もみたけど」


 そりゃ当然だ。《再生リターン》はかなりユニークスキルに近いノーマルスキルなんだからさ。


 スキルが使える人間なんて、すごく限られている。魔力だって、かなり食うわけだし。

 それをこんなに頻繁にみられるなんて、やっぱりここに来てよかったな。


「んー……なんか違和感があるんだが、この腕」


「そりゃあ、仕方ないよ。完璧に戻るなんて思わないでね」

「日常生活に支障はないと思うけど。とりあえず毎日手合わせして、慣らすんだよ?」


「了解」


 双子が真面目な顔をしてるのは違和感があって怖かったので、頷いておいた。


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