21.こっちと向こう
Side:ナグサ
「ん~……」
シャワーをとめて、大きくのび。
数は少なかったけど、なかなかの精鋭だった。
セドなんてヘマをやらかして左腕をもっていかれちゃったから、わざわざカエデちゃんとアケビちゃんを呼んで《再生》をかけてもらっていた。大丈夫って聞いたら、睨まれたんだよ。何をそんなに怒ってるんだろ?右腕だけになってからは、さらに楽しそうに戦ってたのに。
前の襲撃から1週間。ちょっと間が短いかな。こっちとしては、楽しいからいいけど。
着ていた服は真っ赤に染まっちゃったから、前に買い物に行ったときに買った、新しい服を出した。気分も上がっちゃう。
昼食を食べにダイニングに下りたら、シンとアメがいた。
「アメ、今回は援護してくれてたでしょ?ありがと!」
「……(コクリ)」
アメちゃんってば可愛い。たぶん、あのワンピースってシンと一緒に買った服だよね。あたしは着ないけど、アメちゃんが着るとお嬢様みたいで似合うなあ。……あ、お嬢様なんだっけ。
近寄れば、2人が隣り合って何かをのぞいているのがわかった。
「2人とも、何みてるの?」
「……コア。ミミの」
「ミミちゃんの?」
兎耳の彼女を思い出す。
ちょっと頼りないけど、お姉さんって感じで、みんな懐いてた。結局、遠くの国の聖騎士に殺されちゃったけど。
あたし自身、砦で最初に会ったのがミミちゃんだから、思い入れは特別だ。
「おい、お前ら、かたまって何してるんだ?」
「セド!早くご飯つくってよ!」
階段のからセドが姿を現した。まったく、男子だっていうのに、何をそんなに準備することがあるの?あたしはお腹が空いてるんだから!
あ、毎日2食はセドが作るようになったんだよね。予想通りっていえば、予想通り。
「わかったって。腕が慣れねえから、簡単なものしか作れねえけど」
「何でもいいよ、食べられれば!……それでね、これ。ミミちゃんのコアだよ~」
アメちゃんの前に置かれていたのは、透明なピンク色の石。淡い輝きを放っている。ミミちゃんは力のほうは、あんまり強くなかったからね。性格は優しいんだけど。
「ミミ?俺の前に奴だっけ?……って、ソイツのコアってどういうことだよ」
「セドはコアと俺たちの話を知らないのか?」
「えっ、そうなの?」
セドに尋ねると、しかめっ面で頷いた。
そっかあ……でも、それもあり得るかも。だって、他の人からはコアなんて出ないんだから。ここにいないとわからないよね。
「人間からも魔族からもコアは出ない。コアを持つのは魔物だけ。
じゃあ、魔族より魔物に近い俺たちは、どうだと思う?」
「魔物に近い、って……つまり、あるのか?俺たちにも?」
シンは頷いた。
「正解だ。俺たちには心臓のかわりにコアがある。他の魔族が知ったら、何がなんでも俺たちを滅ぼそうとしそうだよな。
ただ、俺たちのコアは、こんな風に光り輝いてるんだが。
ミミは力が弱かったからな……お前ならもっと光が強いと思うぞ?」
「そんなこと言われたって嬉しくねえよ」
ハハッ、とシンが笑う。確かに。
「やっぱり、あたしたちはこの世界のモノじゃないんだなあ、って感じるよね~」
人間たちは、魔物がどこから来たかなんて考えていない。なんにも知らずに、魔物が現れたって言ったら討伐にしいって、それで終わり。まあ、それしかしようがないんだけど。
あたしたちからしたら、馬鹿じゃないの、って話。
魔物がこの世界に現れるとき、宙に縦に裂け目があらわれる。ナイフでカーテンを切り裂いたみたいに。向こう側は真っ黒。
そうやって、真っ黒な異世界から、こちら側へ魔物が、その裂け目を通ってやってくる。
これは魔族が何度もみかけた光景だから、間違いがない。
向こうの世界で魔物がどうやって生きているのかわからないけど、生殖機能はないんじゃないかって話だ。だって、そうしないと、こっちの世界でも魔物がはびこることになるもんね。
これくらい、魔界では常識だ。
それを、たまたま魔物の量が多いから魔王の力が増してる、とか、馬鹿みたい。
向こうの世界の魔物が持っているコア。
それを、あたしたちも持っている。
あたしたちはこっちより、むしろあっちに近いってことだ。
そりゃあ、戦いたい、殺したい、って、こんなどうしようもない感情を抱えてるんから、当然かも。
「俺たちなら、向こうの世界に行けるかもしれないな」
「それいいね!向こうなら、もっと強い魔物とかいるかな?行ってみたいな~」
「それはどうだ?“行く”じゃなくて“帰る”かもしれないぞ」
「シン、その冗談笑えねえよ」
アメちゃんは黙って、ミミちゃんのコアをみつめている。
あたしたちのコアって綺麗だからね。ずっと見てたいって気持ちもわかるよ。
今度地下のお墓に行こうかな。あそこ、宝石箱みたいにキラキラ光って、幻想的なんだよね。
それよりも、まずは、
「セド、早くご飯!!」
「お前は結局、食かよ……」
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