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砦の日々  作者: 花屋
≪日常編≫
24/68

20.戦争の真意

Side:アメ


 甘いショートケーキを口に運ぶ。いまはイチゴの季節。その店も力を入れた新作ショートケーキや苺をつかったデザートを出している。

 シンのはラズベリーをつかったチョコレートケーキ。食べたい。じっと見つめる――シンが気づいて1口、口に運んでくれる。


 意外と苦くない。


 シンはケーキを初めとした甘い物が好き。セドは信じられないと言う。彼は甘い物が苦手――苦い物、辛い物を好む。

 回想――確かにあのときのステーキはおいしかった。

 納得。今度から彼に肉を焼いてもらおう。


「どうだ?おいしいか?」


 シンの問いかけ。頷く。甘くてほろ苦い。シン好みの味。


「そうか。よかった」


 シンは機嫌がいい。否。機嫌がよく見える。

 内心は戦闘本能がたぎっている。私と同じ、変わらない。シンの姿は、平静にみせようとしているだけ。


 大丈夫。まだ余裕がある。





 《千里眼セカンドサイト》で人間界をのぞく。

 魔界とそう変わりのない光景。


 笑いあう人々。綺麗な町並み。家族の死を嘆く。子の誕生を喜ぶ。魔物に恐れを抱く。戦う。死ぬ。生きる。


 その光景を、私とナグサだけが知っている。


 小さいころ――《千里眼セカンドサイト》を初めて使ったとき。

 目の前の光景と遠くの光景の違いがわからなくなる。

 違和感。何故その町に獣人がいないのか。後々、それが人間界の光景だと知る。お兄様に言う――そんなことも知らないのかと鼻で笑われる。


 愚かな人間共が向かってくるから戦っているだけで、人間と魔族の生活にそう変わりがないことさえ知らないのか。


 それは王族だけが知る真相。戦場で死んだ少女たちのことなど、彼には関係がない。


 ミミの亡骸を抱いて、それがどれほど残酷なことかを知った。



「敵はいる?」


 シンの質問――《千里眼セカンドサイト》で見る場所を変更。砦から数km離れた人間の軍が駐留している場所。

 各国の軍隊。互いに睨み合いをきかせている――否。1つの中隊が向かってきている。


 数は30ほど。精鋭。


 ――!


「聖騎士がいる」


 聖騎士。正しくは魔物浄化の魔法が付与された剣を帯びた騎士。

 これで切られると、私たちは傷口をふさぐことができなくなる。スキルを使っても不可能。


 ミミもこれで死んだ。


「聖騎士!?そうか……。アメ、頼めるか?」


 了解。頷く。


 ロッド、本その他は必要ない。要るのはこの体ひとつ。


 その体をシンに預ける。私が世界で1番信頼している人。


 そして旅立つ。





 私は聖騎士の前に立っている。


 魔法は本来、自身を中心にしてしか発動できない。ただ、絶対ではない。無意識下で自身が制限しているだけ。


 《千里眼セカンドサイト》で遠くの地に視点を置き、擬似的にその場所にいるように錯覚させる。これによって、遠くで魔法を発動させることができる。


 問題点は、自分の体から意識がぬけるため、無防備になること。

 だが体はシンが守ってくれている。


『其は風。


 疾風となりて駆けて、すべてを追い抜く。


 渦を巻き、小さな果実となりて、すべてを貫く。


 《風切る弾丸(リトルラピル)》』


 目立つ火系統は使わない。


 この詠唱は彼らには聞こえない。はるか遠くで音となっているから。


 風切る弾丸(リトルラピル)。風の渦でつくられた小さな粒が、刹那、聖騎士の心臓を貫いた。

 男は馬の上から落ちる。


「スピッド様!?」

「どうされたのですか!?スピッド様!返事を!」


 あっけないほど早い幕引き。


 聖騎士さえいなければ問題はない。



 意識を体に戻す。

 目を開ければ、シンの顔がアップで映っていた。


 ……格好いい。


 頬が火照る。


「おいおい、しっかりしろよ。いきなり意識とばすから、体を支えきれなくなって、倒れそうになったんだぞ?」


「……ごめん」


 狙ってた。


 とは言わない。





 また人を殺した。


 お兄様の判断に文句はない。


 お兄様は見下している人間と対等にならなくていい。

 私は好きなだけ戦える。


 利害の一致とも言う。


 ミミは?


 実の兄よりも慕っていた少女は、仕方ないというように苦笑するだろう。


 久しぶりに彼女のコアに触れたいと思った。


体さえ無事なら、アメは抵抗させずに、どれだけでも殺せます


なにげにアメが無敵ですね~


銃を持たせて狙撃させたかったんですが、

魔道具にするにしても、合理的じゃないなって思ったので仕方なく没に…


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