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砦の日々  作者: 花屋
≪日常編≫
22/68

18.高級食材と砦の噂


「「なあんだ」」


 現れたのはハイレッドベア――全身に炎をまとった巨大な熊。その特性から直接攻撃がしにくいが、魔法耐性も強いという、どうやって倒せばいいのかわからないシロモノ。


 だけど、あらゆるスキルを自由に使える僕らからしたら、グレートフィアスのほうが倒しにくい。


 それに、


「「おいしそう……」」


 ベア種というのは魔物の中でも肉が上手いと言われている。さらにその格があがっていくほど、美味しくなるらしいのだ。

 つまり、目の前にいるのはまぎれもなくご馳走!


 はいはい、テンションMAXだよー!?


「「《炎耐性アンチファイア》ぁ!!!」」


 叫べばほんの少し体が温かくなる。このスキルは本来は自身の体だけだが、多少融通がきくので、手にもつ剣まで影響を広げる。


 そのまま、何の躊躇いもなく、襲いかかってきたハイレッドベアに剣を振り下ろした。


 ザシュッ!!


 抵抗もなく赤い熊は地面に倒れる。それでも戦おうと体を起こしてきたが、カエデの剣がとどめをさした。


「二足歩行なのがいけないよね」

「狙いやすすぎて困っちゃうよ」


「大丈夫なの、2人とも…?」


「うん、ぜんぜん平気!」

「リアはいる?お肉」


「あー……そうね、せっかくのハイレッドベアだもの、食べなきゃね」


 少しつらそうな顔をしていて不安だったけど、リアのための肉を1/3だけ分けた。


「家で仲間たちが待ってるから」

「これだけもらっていいかな?」


「ええ、もちろん。だって実際に倒したの、あなたたちでしょ。

 でも安心したわ。あなたたちにもちゃんと仲間っていうのが存在するのね」


 僕らは顔を見合わせた。


 仲間……うん、砦のみんなは確かに仲間だ。

 じゃあ、リアは?仲間……?でもない、よね。時々共闘するだけ。そういうのって多分仲間じゃないよね。


 ていか、リアが僕らと仲間(同レベル)だったら、さすがに泣くよ……。


「「うん、ありがと」」


「いえいえ、先輩の余計なお世話だと思っておきなさい」


 リアが微笑む。本当に美人さん。惚れちゃいそう。





「へいへい、討伐完了……っと、ベア種倒したのか、あんたたち!?このコアだと、かなりの上位種だろ!?」


 受付の兄さんは驚愕の声をあげた。

 受付には引退した冒険者とアルバイトがつく。この兄さんはアルバイトみたいだね。


 コアとは魔物が心臓のかわりにもつ石だ。宝石のような価値はないけど、個々で色や純度が違うので、討伐完了の印となっている。

 上位の魔物ほどコアは透明になる。ベア種の上位であるハイレッドベアはルビーのように赤く透き通ったコアだ。


「そうよ~なんとハイレッドベア!すごいでしょ、この子たち」


「リア、子供扱いは」

「やめてくれないかな?」


「あのさ、頼む」


 真剣な顔のアルバイト。いい予感がしない。


「少しでいいから肉を分けてくれ……」


「「ヤダ」」


 却下。ただでさえ量が少なくなるのに、どうして分けてあげなきゃいけないわけ?

 もちろん、期待にすがる目でみられてもリアだってにっこり微笑むだけ。


 まあ、ハイレッドベアが、本来冒険者とは会話ぐらいで、不干渉であるべき受付が頼みこむぐらいの高級食材ってことだ。



「そういえば、アケビとカエデって西のほうに住んでいるんだったわよね?フレアロンティに近いんじゃないの?」


 さすがにフレアロンティにいるってことは伝えてないけど、大体の方向は言ってある。怪しまれるしね。


「そうだけど……」

「それがどうしたの?」


「だって、また人間界から攻めてきたらしいじゃないの」


 それ、いつの話?何回もありすぎて、どれかわからないんだけど。

 1番最近……っていっても1週間も前のことだし。

 というか、そもそも襲撃があったなんて知らされてないんじゃないの?


「何で知ってるの?」

「でも、もう1週間ぐらい過ぎてるよ」


「あそこは普段平穏だからね。あれだけ魔力が放たれれば、あたしならわかるよ」


「へえ」

「すごいね」


「でも、西に住んでたらさ」

「襲撃なんて日常だよ」


 ただの想像だけど。


「そうなの?そういえば西って人間界に近いし危ないじゃないのって、ふと思ってね……。でも砦があるから大丈夫なのかしら?」


「そうだなあ。あの砦には魔王様が自ら選らばれた精鋭がいるって話だし。噂じゃ、魔王様の血族がいるって」


 受付の男も話に加わってきた。

 へえ、そんな噂がねえ……。アルバイトとはいえギルドの連中が言ってるなんて、見過ごせないな。


「え、そうなの?あたしは魔王城と砦がつながっていて、攻めてきたときは魔王様が転移なさるって聞いたけど」


「「あははははっ!何それ!いろんな噂があるんだね。おもしろいな~」」


 思わず言葉を重ねてしまった。受付の青年の話はいい、まだ。でも魔王様が来るって……僕らが戦ってるんだけど!


「それにさ、冒険者してるのに」

「危ないとか言ってたら話にならないよ」


「それもそうね」



「じゃあね、リア」

「また今度寝ようね~」


「あら、バイバイ。また来てね」


「え?ちょ、いま幻聴が聞こえたような……


 肉の入った袋を抱えて、喧騒をあとに《瞬間移動テレポート》した。


 それにしてもさ、噂にまでのぼってるなんて、ちょっとマズイんじゃない、アメ?


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