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砦の日々  作者: 花屋
≪日常編≫
17/68

14.つまり軍人の日常


遅れました……


今回もあんまり中身がないです



Side:シン


「うん、あたしのセンスはやっぱりいい!すっごく似合ってるよ!」


「だからって、無理矢理着せるなよな……」


「何それ。あたしのチョイスに不満があるのー?」


「そういうわけじゃねえけど……」



 まるで恋人同士みたいだな。


 言わないが。


 セドも砦に慣れたみたいでよかった。まあ、ナグサがいる限り「浮いてる」なんてことにはならないか。


「……」


 くいくい、とアメが俺の服を引っ張る。アメにはこの店は不満らしい。そうだろうな。ここはリーズナブルだがアメの趣味とは合わない。


 ナグサが自分の好きな服を買おうと思ったら、ここになるだろうが。


「……」


 アメは無言で通りの奥を指差す。


「わかったよ、行くか」


 セドに別行動をする旨を伝えようと2人のほうをみると、


「ね、可愛い?」


 まだ夏前だというのに(自覚はないだろうが)扇情的に足をさらしたナグサと


「知らん!」


 とか言いつつも、赤くなっている店員に敵愾心を燃やしているセド。


 何だよアレ。おもしろすぎるだろ……。


「くくくっ」


「おいっ、シンてめえ笑うな!」


「え?何でシン、笑ってるの?」


「……馬鹿」


 的確だ。

 相手の気持ちに気づかない奴も、自分の気持ちに素直になれない奴も、馬鹿に決まっている。


「……シンは、馬鹿?」


「……」


 ここで自分に切り返しが来るとは思ってもみなかった。


 だが、そうだな。

 馬鹿になりたくはない。


「セド、ナグサ。俺たちは他の店に行く。終わったら、アレスの花で待ってろ」


 カエデとアケビが聞いたら「「何それ、娼館ー?」」ってききそうな名前だな。ただの宿屋兼定食屋だが。

 アイツらが使ってるのは、フレアロンティから離れた、むしろ王都に近い町の所。スキル使い放題だからって、《瞬間移動テレポート》で色々な町に行って遊ぶのは、俺からみてもうらやましい。


「うん、わかったぁ!」


 服にうもれてご機嫌なナグサの声を後ろに、俺たちは店を後にした。






「……どう?」


 ナグサとは違って、散々悩んだ挙句に試着した2着。ひらひらのティアードワンピに、膝下のパンツ。

 どうと言われても、可愛いとしか言いようがない。隣の店員が見とれて仕事にならないくらいな。


「似合ってるよ。せっかくだから俺が買ってやる」


 アメは精一杯目を見開いたあと、慌てたようにこくこくと頷いた。こういうところは無表情でも感情が溢れ出ていて、他の女子よりもむしろ可愛い。


 あー、これってやっぱり恋人に見えるんだろうな……。


「さっさと買って行くか。ナグサとセドが待ってるだろう」


「……食事してる?」


「ん?ああ、そうだな。ナグサは待ちきれなくて夕食を食べてる可能性もあるな」


 買い物というのはどこの世界でも、女の子を幸せにするものらしい。いつもより高調しているアメの頭を撫でれば、幸せそうに目を細める。


 平和だ。


 初めて戦いの後に町へ行けば、誰だって混乱する。しなかったのは、そもそも心が壊れている――ナグサや双子ぐらいだ。

 だがそのうちに、「戦闘狂の自分」と「平和を甘受する自分」が同時に存在するようになる。これはおそらく、人間側の軍人だって同じことだろう。


 もし、人間との戦争がなくなり、平和な世界になったら。

 俺はどうするのだろう?


「……シン?」


 ナグサの声が心配そうな響きに満ちている。ちょっと考え事をしてただけだ、と苦笑した。





 アレスの花に入って理解した。


 つまり、こういうことだ。


 戦争がなくなっても、平和な世界などない。誰かしらが戦っている。


「おい、てめえ!調子に乗ってンじゃねえぞ!!」

「さっさと女置いて帰れ!今なら許してやるぞ!」


 こうしてセドとナグサがからまれているように。



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