13.「迷惑ですがいいカモなので我慢してます。」
Side:ナグサ
「おいしかった~」
相変わらず、マスターのケーキは絶品だよ~。砦のみんなは、「食事?肉を焼くぐらいならできるけど……」ってレベルだから(あたしもだけど)おいしいものを食べようと思ったら、町に出るしかないんだよね。
「で、次はどこに行くんだ?」
なんか悩んでたセドも、ふっきれたみたい。
何をそんなに悩むことがあるのかなあ?そんなことしてたら、人生を楽しむ前に死んじゃうよね。
楽しく戦って、楽しく町を散策する。これのどこに悩む要素があるんだろ?
「うーん、そうだなあ……せっかくだから、服を買いにいこうよ!セドも、血で汚れちゃったでしょ?あたしも新しい服が欲しいし!ね、アメたちもいい?」
「……ん」
「よし、レッツゴー!」
「俺たちの意見は無視かよ……」
「ん?何か言った?」
「いや、何でもねえよ」
そうなの?それならいいや。
あっ、あの服屋さん、新作いれてる!
「おい、引っ張るなって!」
「ほら、この服セドに似合いそうじゃん!」
適当に掴んだ服。下は紺、上はダメージ加工を施した黒というパンツ。んー、でもけっこう高いなあ。このお店安いのが売りなのに。
セドも気づいたみたいでうげ、って顔してた。
「違うヤツにしろよ」
「わかってるって。じゃあ、これは?」
これは新作じゃない。けど、前に来たときに見つけたヤツ。男の子に来てほしいなあ、って思ったけど、シンの服は、シン自身かミミちゃんかアメちゃんが決めちゃうからね。あたしの入る余地なんてないんだよね~。
「……それならいいか」
「オッケー!じゃあ、上はー、これかな?これもいいかも!あっ、セド、1着しか上着をもってなかったよね!暑いところから来たの?これなんてどう?いい感じだよね……でもちょっと高いかなあ」
「ちょ、ちょっと待て!俺の服だろ!?どうしてお前が見てるんだよ!自分の分を探せよ!」
「え?あ、そっか!じゃあ、セドはこれを着てね!試着室は奥にあるから」
Side:セド
「じゃあ、セドはこれを着てね!」
そう言ってわたされたのは服の山。こんだけ、よく短時間で選び出せたな。逆に感心する。
「とりあえず着てみてって!」
「ご試着されますか?」
「あー……はい」
流されたわけじゃない。
ナグサのセンスは悪いわけじゃないと思っただけだ。……断じてナグサに押されたわけじゃない!
「アイツ、よく来るのか?」
「そうですね、よく来られますよ」
「いつもあんな感じ?」
「あー……そうですね」
店員の曖昧な作り笑い。その裏の本音は「迷惑ですがいいカモなので我慢してます」。
つまり、アイツの大量消費欲求はあらゆるところで発揮されるってわけだ。
「セド、どう?」
ナグサも着替え終わったらしく、ひょい、と覗き込んできた。
「うん、あたしのセンスはやっぱりいい!すっごく似合ってるよ!」
「だからって、無理矢理着せるなよな……」
「何それ。あたしのチョイスに不満があるのー?」
「そういうわけじゃねえけど……」
「じゃあいいよね!ねっ、ほら、あたしの服はどう?」
「はあ?知るかって――」
そう言って全身をみせたナグサに言葉を失う。
貴族と金持ちが通うエリート学校の制服(普通の学校に制服などない)を意識したような、タンクトップのシャツにニット――ストライプのネクタイつき。そしてその健康的な足を惜しみなくさらしたホットパンツ。アメと違ってニーハイは無し。
「……お前、寒くねえの?」
「んー、そんなに?ね、可愛い?」
可愛い。
とか言えるかっての馬鹿野郎!!!
「知らん!」
「えー、何それ。ねっ、店員さん。可愛い?似合ってる?」
赤くなってどもる店員への終わらない追求。可哀相――だと思うが鼻の下を伸ばしているので助けはやらねえ。
そして何故かその様子をみて爆笑しているシンに、蹴りをいれたくなった。




