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砦の日々  作者: 花屋
≪日常編≫
16/68

13.「迷惑ですがいいカモなので我慢してます。」


Side:ナグサ


「おいしかった~」


 相変わらず、マスターのケーキは絶品だよ~。砦のみんなは、「食事?肉を焼くぐらいならできるけど……」ってレベルだから(あたしもだけど)おいしいものを食べようと思ったら、町に出るしかないんだよね。


「で、次はどこに行くんだ?」


 なんか悩んでたセドも、ふっきれたみたい。

 何をそんなに悩むことがあるのかなあ?そんなことしてたら、人生を楽しむ前に死んじゃうよね。

 楽しく戦って、楽しく町を散策する。これのどこに悩む要素があるんだろ?


「うーん、そうだなあ……せっかくだから、服を買いにいこうよ!セドも、血で汚れちゃったでしょ?あたしも新しい服が欲しいし!ね、アメたちもいい?」


「……ん」


「よし、レッツゴー!」


「俺たちの意見は無視かよ……」


「ん?何か言った?」


「いや、何でもねえよ」


 そうなの?それならいいや。


 あっ、あの服屋さん、新作いれてる!



「おい、引っ張るなって!」


「ほら、この服セドに似合いそうじゃん!」


 適当に掴んだ服。下は紺、上はダメージ加工を施した黒というパンツ。んー、でもけっこう高いなあ。このお店安いのが売りなのに。


 セドも気づいたみたいでうげ、って顔してた。


「違うヤツにしろよ」


「わかってるって。じゃあ、これは?」


 これは新作じゃない。けど、前に来たときに見つけたヤツ。男の子に来てほしいなあ、って思ったけど、シンの服は、シン自身かミミちゃんかアメちゃんが決めちゃうからね。あたしの入る余地なんてないんだよね~。


「……それならいいか」


「オッケー!じゃあ、上はー、これかな?これもいいかも!あっ、セド、1着しか上着をもってなかったよね!暑いところから来たの?これなんてどう?いい感じだよね……でもちょっと高いかなあ」


「ちょ、ちょっと待て!俺の服だろ!?どうしてお前が見てるんだよ!自分の分を探せよ!」


「え?あ、そっか!じゃあ、セドはこれを着てね!試着室は奥にあるから」





Side:セド


「じゃあ、セドはこれを着てね!」


 そう言ってわたされたのは服の山。こんだけ、よく短時間で選び出せたな。逆に感心する。


「とりあえず着てみてって!」


「ご試着されますか?」


「あー……はい」


 流されたわけじゃない。

 ナグサのセンスは悪いわけじゃないと思っただけだ。……断じてナグサに押されたわけじゃない!


「アイツ、よく来るのか?」


「そうですね、よく来られますよ」


「いつもあんな感じ?」


「あー……そうですね」


 店員の曖昧な作り笑い。その裏の本音は「迷惑ですがいいカモなので我慢してます」。


 つまり、アイツの大量消費欲求はあらゆるところで発揮されるってわけだ。



「セド、どう?」


 ナグサも着替え終わったらしく、ひょい、と覗き込んできた。


「うん、あたしのセンスはやっぱりいい!すっごく似合ってるよ!」


「だからって、無理矢理着せるなよな……」


「何それ。あたしのチョイスに不満があるのー?」


「そういうわけじゃねえけど……」


「じゃあいいよね!ねっ、ほら、あたしの服はどう?」


「はあ?知るかって――」


 そう言って全身をみせたナグサに言葉を失う。


 貴族と金持ちが通うエリート学校の制服(普通の学校に制服などない)を意識したような、タンクトップのシャツにニット――ストライプのネクタイつき。そしてその健康的な足を惜しみなくさらしたホットパンツ。アメと違ってニーハイは無し。


「……お前、寒くねえの?」


「んー、そんなに?ね、可愛い?」


 可愛い。


 とか言えるかっての馬鹿野郎!!!


「知らん!」


「えー、何それ。ねっ、店員さん。可愛い?似合ってる?」


 赤くなってどもる店員への終わらない追求。可哀相――だと思うが鼻の下を伸ばしているので助けはやらねえ。


 そして何故かその様子をみて爆笑しているシンに、蹴りをいれたくなった。


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