11.死にたがり少女への追憶
昨日投稿できなかったので、今日中にもう1話投稿します
Side:
ミミは戦いたがっていた。
「死にたいなあ」
同時に死にたがっていた。
だから死んだのは本望で、悲しむよりむしろ喜ぶべきなのかもしれない。
「なぜだ?」
当時の俺はそれを遺憾に思っていた。まあ、仲間が死にたい死にたいと言ってるんだ。当たり前だろ。
「うーんとね……シンにはわからないかなあ。こう、ふっとね。あ、幸せだな。って思うと、あ、死にたいな。って思うの」
そう言って微笑むミミは綺麗だった。今にも消えていきそうだと感じた。
「ミミは矛盾している。戦うってのは敵を倒して生き残りたいっていう本能だろ。死にたいってのとは両立しない」
「シンたちこそ、おかしいよ。死にたがり以外の何が、わざわざ望んで戦場に行くっていうの?」
「俺たちも死にたがってるって?」
春のことだった。窓の向こうから、暖かい風が吹いてきてミミに髪をゆらす。
「そうだよ。私たちはみんな、死にたがっているの」
その言葉を、今でも俺は忘れられない。
「嫌な夢をみたな……」
数千人の軍隊を全滅させたあと、俺たちは砦に戻ってシャワーを浴び、俺はそのままベッドに直行した。
太陽はまだ高いところにあるから、眠ってからそれほど時間は経っていないだろう。
こういった夢はたびたび見る。俺はそれを夢だと自覚している。でも目覚めることはできない。止められない回想とそう変わりがない。
「命を惜しまない」。それは暗黙のルールだったが、ミミが死んだあとに、俺はそれを言葉として出した。結果何かが変わったかというと、そうでもない。
ミミ。死にたがりの少女を、俺は姉に重ねて慕っていた。
Side:アメ
シン・ナグサ・セドは無事に帰ってきた。それぞれシャワーを浴び、シンは部屋にこもった。ノックをしても返事はない。おそらく寝ている。習慣、問題はない。
先ほどカエデとナグサが帰宅。――帰宅?帰砦?
おそらく昼間から盛っていたのではないかと予想。
本日も晴天。町の案内に適している。
頭の中で持っている服を検索。――そういえば前回買った服を、まだシンに見せていない。
「……」
頬が熱をおびるのを自覚。
決定は――変更なし。
Side:シン
コンコン。ふいにドアがノックされて、俺は思わず警戒態勢をとった。気配にまったく気づかなかったからだ。
だが、それが逆に訪問者が誰かを知らせてくれた。
「アメか?もう起きてる。入っていいよ」
狙撃者だからか、アメの気配だけは、俺でも気づくことができない。
この砦の中で俺が気づかないなんて、アメぐらいだ。侵入者なら、とっくの昔にアメが知らせている。
「……」
無言はいってきたアメの姿をみて、俺は絶句した。
いつもは無造作におろしている長く白い髪を、今は左右でくくっている。革にレースとリボンをあしらった、格好よさの中にも可愛さがあるジャケット。これまたレースがついたスカートはマイクロミニ。その細い足を、黒いニーハイが覆っている。
その上、俺ぐらいにしかみえない微笑を、あえてこのタイミングで。
……滅茶苦茶可愛い。
「……シン?」
「いや、あー、その。似合ってるよ。可愛い」
そういえば、その笑顔が微かに赤く染まる。あーマジやべえ。
「可愛いけど……どうしたんだ?」
「カエデとアケビが帰った……みんなで町に行こう」
言葉数が足りないが。
つまり、
カエデとアケビが帰ってきた→砦で留守番する必要はない→じゃあ案内も含めてセドやナグサと4人で町に遊びに行こう
というわけだ。おそらく。
「セドは?何て言ってるんだ?」
血の臭いに酔ったみたいだったが……もう大丈夫か?
「聞いてない」
「だろうな。じゃあ一緒に誘いに行くか」
ん、と頷いてアメは素直に部屋を出ていった。
それにしてもアイツ、ホントに可愛いな……。