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砦の日々  作者: 花屋
≪日常編≫
14/68

11.死にたがり少女への追憶


昨日投稿できなかったので、今日中にもう1話投稿します



Side:


 ミミは戦いたがっていた。


「死にたいなあ」


 同時に死にたがっていた。


 だから死んだのは本望で、悲しむよりむしろ喜ぶべきなのかもしれない。


「なぜだ?」


 当時の俺はそれを遺憾に思っていた。まあ、仲間が死にたい死にたいと言ってるんだ。当たり前だろ。


「うーんとね……シンにはわからないかなあ。こう、ふっとね。あ、幸せだな。って思うと、あ、死にたいな。って思うの」


 そう言って微笑むミミは綺麗だった。今にも消えていきそうだと感じた。


「ミミは矛盾している。戦うってのは敵を倒して生き残りたいっていう本能だろ。死にたいってのとは両立しない」


「シンたちこそ、おかしいよ。死にたがり以外の何が、わざわざ望んで戦場に行くっていうの?」


「俺たちも死にたがってるって?」


 春のことだった。窓の向こうから、暖かい風が吹いてきてミミに髪をゆらす。


「そうだよ。私たちはみんな、死にたがっているの」


 その言葉を、今でも俺は忘れられない。






「嫌な夢をみたな……」


 数千人の軍隊を全滅させたあと、俺たちは砦に戻ってシャワーを浴び、俺はそのままベッドに直行した。

 太陽はまだ高いところにあるから、眠ってからそれほど時間は経っていないだろう。


 こういった夢はたびたび見る。俺はそれを夢だと自覚している。でも目覚めることはできない。止められない回想とそう変わりがない。


 「命を惜しまない」。それは暗黙のルールだったが、ミミが死んだあとに、俺はそれを言葉として出した。結果何かが変わったかというと、そうでもない。


 ミミ。死にたがりの少女を、俺は姉に重ねて慕っていた。





Side:アメ


 シン・ナグサ・セドは無事に帰ってきた。それぞれシャワーを浴び、シンは部屋にこもった。ノックをしても返事はない。おそらく寝ている。習慣、問題はない。


 先ほどカエデとナグサが帰宅。――帰宅?帰砦?

 おそらく昼間から盛っていたのではないかと予想。


 本日も晴天。町の案内に適している。


 頭の中で持っている服を検索。――そういえば前回買った服を、まだシンに見せていない。


「……」


 頬が熱をおびるのを自覚。


 決定は――変更なし。






Side:シン


 コンコン。ふいにドアがノックされて、俺は思わず警戒態勢をとった。気配にまったく気づかなかったからだ。

 だが、それが逆に訪問者が誰かを知らせてくれた。


「アメか?もう起きてる。入っていいよ」


 狙撃者スナイパーだからか、アメの気配だけは、俺でも気づくことができない。

 この砦の中で俺が気づかないなんて、アメぐらいだ。侵入者なら、とっくの昔にアメが知らせている。



「……」


 無言はいってきたアメの姿をみて、俺は絶句した。


 いつもは無造作におろしている長く白い髪を、今は左右でくくっている。革にレースとリボンをあしらった、格好よさの中にも可愛さがあるジャケット。これまたレースがついたスカートはマイクロミニ。その細い足を、黒いニーハイが覆っている。


 その上、俺ぐらいにしかみえない微笑を、あえてこのタイミングで。


 ……滅茶苦茶可愛い。


「……シン?」


「いや、あー、その。似合ってるよ。可愛い」


 そういえば、その笑顔が微かに赤く染まる。あーマジやべえ。


「可愛いけど……どうしたんだ?」


「カエデとアケビが帰った……みんなで町に行こう」


 言葉数が足りないが。


 つまり、


カエデとアケビが帰ってきた→砦で留守番する必要はない→じゃあ案内も含めてセドやナグサと4人で町に遊びに行こう


 というわけだ。おそらく。


「セドは?何て言ってるんだ?」


 血の臭いに酔ったみたいだったが……もう大丈夫か?


「聞いてない」


「だろうな。じゃあ一緒に誘いに行くか」


 ん、と頷いてアメは素直に部屋を出ていった。


 それにしてもアイツ、ホントに可愛いな……。


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