9.スキルと呪い
Side:シン
セドも砦に気をゆるしてきたようだが、とりあえず説明だ。
「それから、双子のことだが……アイツらの戦闘をみて疑問を感じなかったか?」
セドが首をかしげる。
「そういえば、スキルを複数使ってたな。普通、1人1つじゃないのか?」
「それだ。スキルは1人1つ。ただし、アイツらは2人で1つだがな。
ユニークスキル《2人に分かれた異能》だ」
スキルにはノーマルスキルとユニークスキルがある。多くのスキル保有者が使えるノーマルスキルと、世界に1つしかないユニークスキル。
「スキル《2人に分かれた異能》は、常駐展開の《感覚共有》、ある条件下において、あらゆるノーマルスキルが使える」
「……って、それ、無敵じゃねーの?」
そう言いたい気持ちはわかる。
ノーマルスキルはその人だけのスキルではないが、持っていればそれだけアドバンテージがある。たとえば《絶対防御》は魔法にたよらず、あらゆる攻撃を防ぐことができる。難点はそれが面だということだが。それから、《透視》。このスキルがあれば、尋問など不要になる。
それらのノーマルスキルすべてが使える。
無敵、と言い切ってもいいぐらいだ。
だがもちろん、そんな上手い話はない。
「ある条件下って言ったでしょ」
「僕らが《感覚共有》以外のノーマルスキルを使うには、体が触れ合ってなきゃ駄目なんだよ」
「その上、魔法も使えないしね」
「《感覚共有》だってさ、ある意味呪いみたいなモノだよ」
呪い。
それはあながち外れてはいない……魔物の血が開花していない彼らが、砦に来ることとなった、その原因が《2人に分かれた異能》であり、《感覚共有》なのだ。
砦は人間への防衛線。
そして持て余した駒の捨て場所。
罪を犯したいんじゃない。
戦いたいんだ。
長い時間をかけて、国はそれを理解してくれた――そしてここで疑問が生じる。じゃあ、どこで殺してもらおうか?そんな危険な奴らを街中に放っておくなんて、そんな馬鹿なことはできないだろう?
俺は村に襲ってきた魔物の大群を虐殺したあとに、中央からやってきた役人に尋ねられた。
思い切り戦えるところへ行きたくないかい?――駄目だよ、家族は連れてはいけないんだ――おや、わからないのかい?君に拒否権はないんだよ。
糞ッタレの役人ども。
だから俺はアイツらが嫌いだ。
「……シン」
小さな声に振り向くと、アメがその無表情を微かに歪めて見上げていた。
「怖い顔してる」
「あー……いや、大丈夫だ」
「シンは、優しいから。心配」
ありがとう、と言うかわりに。
白い髪を繰り返し撫でた。
なぜか後半シリアスに……