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転生したらダンジョン最深部のセーフエリアの中だった俺、実は〇〇だったらしい。

作者: セレンUK
掲載日:2026/08/08

「ここは……」


 見慣れない場所。空には石造りの天井が見える。

 俺は体を起こす。


「……」


 手を握って開いてしてみる。特に違和感はない。

 なんでそんなことをしたかというと、さっき死んだからだ。


 記憶があやふやだが、それだけは覚えている。

 彼女いない歴=年齢の童貞だった俺は、突っ込んできた大型トラックに引かれた。

 生暖かい血の感触が次第に消えていき、そこで意識も途切れた。


「死んだはずなのに生きている……」


 これはつまり異世界転生っていうやつだ。

 異世界転生には何パターンも存在するが、どうやら俺の場合は神様に会ってスキルをもらうという転生チートパターンではないようだ。


 異世界転生直後の話ばかりしても面白くないので、かいつまんで結果を伝えると、ここは魔法やスキルのある世界。俺はレベル1でスキルにはファイヤーが一つだけあった。

 そしてここはどうやらどこかのダンジョンの中らしく、凶悪な魔物がうろついている。

 そんな魔物に襲われてなぜレベル1の俺が生きているかというと、どうやら俺が目覚めた場所は安全地帯セーフエリアのようで、中心にログハウスのような家がある周囲を結界のようなもので覆われているのだ。


 ――ぎゅぉぉぉぉぉぉぉぉん


 ほら聞こえてきた。あれが凶悪な魔物の遠吠え。俺の10倍はあるかという全長、まるでドラゴンのような姿。その割にはつぎはぎだらけの体をしているのだ。

 一度結界の外に出てファイヤーをしてみたが、案の定全く聞かなかった。その上、反撃で死ぬところだった。

 セーフエリアの外は大きな部屋になっているようで、どこかに通じる通路が一つある。そこから別の種類のモンスターがやってくるのだが、そいつらも俺の手に追える魔物じゃなかった。つまりここがスタート地点のはずが、レベルを上げて旅立ち、というわけにはいかない。

 そしてどこかに繋がる通路を通ることが出来ないサイズのつぎはぎのドラゴンはずっとセーフエリアの周囲にいると言うわけだ。

 どうやらその通路からやってくるモンスターを食べているらしく、空腹で死んで俺が脱出できるという未来はなさそうだ。


 そんな俺もここから出ることはできない。

 とはいえ、井戸水は出るし、セーフエリアの中に畑があって、そこで野菜やイモを育てて食つなぐことが出来ている。


 そんな事が分かったのだ。


 一体どうすれば俺の冒険が始まるのか。

 結界の内側からファイヤーを試してみたり、芋を投げてみたりして、レベルがあげられないか試してみたが、何をやってもレベルは上がらなかった。


 だれもやってこないダンジョンの奥地。

 そこで、はや50年がたった。


 最初の5年くらいは、ここから出てやろうという気力もあった。

 10年がたつごろには諦めが先に立ち、50年ともなると、もはや寿命で死ぬのを待つばかりだ。


 体も衰えていき、全盛期のように走ることも出来なくなってきた。

 誰に出会う事もなく、誰とも話すことも無く、ここで死ぬのだろう。

 そんな重苦しい気持ちの日々が続いた。


 あったことも無い神に恨みを募らせた時期もあった。

 でもそれすらも無駄だと思うようになった。

 50年前と何も変わっていない。レベルも上がっていないしスキルも増えてはいない。

 いったい自分はなんのためにここにいるのだろうか……。


 ちっぽけな自分の存在意義を問う事が増えた。

 それは命の終わりを感じているからだ。


 そんな時の事だった。


「あっ、あれだよ、見つけた!」


 転生してこのかた聞いたことのない人間の声。

 それが聞こえてきたのだ。


 俺は重い体を引きずって声の方へと向かった。


「シーラ、エレ、ヨーコ、気を付けて、ドラゴンヴァインだよ!」


 なんとそこには4人の女パーティがいて、俺の脱出を阻んでいる凶悪なドラゴンと戦っているではないか。


 相当高レベルなのだろう。俺が相手にならなかったドラゴンをものともせずに戦っている。


「とどめよっ! 魔王も倒したこの一撃、食らいなさい! サンダーブレェェェェイクゥゥゥッ!」


 仲間のサポートがあり、リーダーらしき女の一撃で、凶悪なドラゴンは地に伏したのだ。


「す、すげえ……」


 思わずそう言ってしまった。言ってから気づいたが、一体何年ぶりに言葉を発したのだろうか。


「ふぅ。なかなかのやつだったね。封印の賢者エーサンを守る守護獣ドラゴンヴァイン」


 チン、と剣を鞘に納める女。

 よく見ると幼い。まだ10代の後半くらいだろう。

 他の女たちも20代までの間くらい。そして誰もかれもが美人だった。


「さて、シーラ、破魔のハープを奏でてくれる?」


「はい、リリアーナ」


 シーラと呼ばれた流れるような黒髪の女性が取り出したハープを奏でると、大きな音と激しい揺れと共に、俺の安全を守ってくれていた結界が消え去った。


「あ、いたいた。あれがエーサンだよ」


 手を降りながら小動物のように駆けてくる女の子。確かリリアーナって呼ばれていたか。


「初めまして封印の賢者エーサン。私はリリアーナ。魔王を倒した勇者よ」


「は、はぁ……」


 これまでの50年、こんなに入ってくる情報が多かったことはなく、俺は生返事を返すことしか出来なかった。

 勇者? 魔王? 封印の賢者? エーサンって、もしかして俺の名前、エーサンって言うの?


「封印の賢者エーサン。一人孤独にダンジョンの奥で生活するかつての大賢者。自分の力を利用される事を嫌い、守護獣であるドラゴンヴァインを作り出して守らせていると聞いていました」


 4人のうちの一人、ピンク髪のモコモコ髪型の子がそう言った。


 まじか。あのドラゴン俺が作ったやつだったのか。そう言えば、思い当たる節がないこともない。いつもじゃれるように俺に飛びついてこようとしていた気がする。それを受けたら死ぬんだけどな。


「そうそう。隠しキャラなんだよね」


 ん? 隠しキャラ?


「というわけでさ、エーサン、私の仲間になってよ」


 ばっと手の平を出してくる勇者リリアーナ。


「ちょ、ちょっと待ってくれ。俺は自分の名前も知らないし、第一、俺のレベルは1だし、ファイアしか使えない。君たちは魔王を倒したんだろ? 俺の力なんかまったく役に立たないよ」


「あー、そうだった。そうだった。じゃあ、最強魔法エターナルフォースブリザードを使えるようになってもらうね。えっと、ヨーコ、ほらあれ、魔法の水」


「おっちょこちょいね、リリアーナ。手順を間違えたら仲間になってくれないわよ?」


「あっはっは。ごめんごめん。じゃあ、エーサン、これ飲んで」


「むぐっ!」


 なんか瓶を押し付けられて、その中の液体を飲まされた!

 もう年なんだからそんなことをされると誤嚥しちゃう!


 げほげほとせき込みながらもなんとかリバースは避けて見せた。

 こんな若人の前で年老いたおじいちゃんの醜い姿をさらすわけには行かない。


「じゃあ、練習ね。こうやって」


「ちょ、ちょっと!」


 先ほどハープを引いていたシーラさんが、俺の手の平を取り、自分の指を絡めるようにして握ってきた。

 それだけで、前世も含めて女耐性のない俺は挙動不審になってしまう。


「大丈夫ですよ。落ち着いてください。落ち着いて、心を静かにして、そして自分の魔力を感じてみてください」


 とは言われても。

 俺は言われるがままに己のうちにある魔力とやらを探ってみる。

 確かに何かがある感じがする。

 次は、次はどうしたらいい? 魔力を形にするのか?


「そして、こう言うのです。エターナル! フォース! ブリザード!」


 いきなり指導が大雑把に!


「さあ、エーサン様、リピートあふたみーですよ。 エターナル! フォース! ブリザード!」


「え、えたーなる、ふぉーす? ブリザード?」


 その瞬間、シーラさんに握られていた手の先から、全てを凍らせるほどの猛吹雪が発生し、ちょうどやってきた魔物たちを一匹残らず氷漬けにしてしまった。


「おおーっ! これがエターナルフォースブリザード! すごい凄い。話によると、即死耐性のあるボスですら一撃の下で葬り去ることができるんだよ。さすがは隠しキャラ。これくらいのぶっこわれ性能が無いとね!」


 リリアーナがぴょんぴょん跳ねて喜んでいる。


「じゃ、いこっか、エーサン」


「ちょ、ちょっと待って。何がなんだか」


「レベルも上がったでしょ。それにエターナルフォースブリザードも覚えた。後はそれを使って魔王を倒した後のこの世界を無双するだけだよ。魔王を倒したご褒美なんだから、エーサンには拒否権はないの。ほら、見える? 選択肢」


 そんなもの見えるわけはない。


「仲間になる、しか表示されてないよ」


 どうやら選択肢は無いようだ。


「リリアーナ。おじいちゃんの姿もいいんだけど、あれはどうする?」


「うーん、あれは後にしようかと思ってたけど、ま、いっか」


「あれとは?」


 もはや何が起きても不思議ではない。


「子作りだよ」


「こ、こづくりぃ!?!?」


 子作りってあれのことですよね。エッチなやつ。


「そうそう。子供を産んでもらうの」


 眩しい程の笑顔でそう答えてくれるリリアーナ。


 あまりの出来事に俺は声もでない。

 前世も含めて2代も童貞な俺が子作りだとぉ!? まって、俺のあれ、よぼよぼだけど立つの?


「エンディングも近いし、もういっちゃうか。じゃじゃーん、若返りのくすり~」


 また口の中に突っ込まれた。

 怪しい丸薬を飲み込むと、みるみるうちに俺は若返って行き、10代のころの姿に戻ったのだ。


「これを使わないと、子作りフラグが立たないからね」


 もはや何も言うまい。

 というか、童貞の俺はこの後子作りをするんだっていう期待でいっぱいいっぱいだ。


「えっと、その、俺はどうしたら……」


 この流れだとリリアーナとエッチな事をするんだろう。作法とか知らないぞ?


「あー、そうだね。シーラだと魔法特化で限界を超えた魔法が使えるし、エレだと攻撃と回復ができるようになるし、ヨーコだと素手でドラゴンすら屠れて回復魔法も使えるんだよね」


「えっ!? リリアーナとじゃないのか!?」


「あ。アタシとしちゃうとすぐエンディングになっちゃうからダメなんだよね」


 まじかよ。リリアーナに劣らず他の3人の女の子も美人ぞろいだ。


 そんな気持ち悪い事を考えてるから童貞だったんだな、とやましい思いを捨て去る。

 そうだ。俺は今から童貞を卒業するんだ。クリーンに生まれ変わるのだ。


 ていうか、他の3人の気持ちはどうなんだ? 急に知らない男と子供を作れとか言われてもこまるだろ。


「やっぱりシーラかな。いいよね?」


「ま、まって、勝手に決めても困るだろ、ね、シーラさん」


「いえ、私は構いませんよ。リリアーナ様の仰せのままに」


「ちぇっ、あたしじゃなかったか。残念」


「ヨーコ、不貞腐れない。リリアーナが決めたことなんだから。そりゃ私だって残念だけどさ」


 え、なんでみんな子作りOKみたいになってるの?

 とうとうモテ期がやってきたのか、と思うけど、そういう訳でもないらしい。だって初対面だしね。俺の子種が目的だっていうんだから。


「うーん、やっぱり一人に選べないよね。挑戦しちゃう? カオスルートに」


「さんせー!」


「か、かおするーと?」


 何それ。恐ろしい名前なんですが。


「エーサンには頑張ってもらうことになるけど、いいよね。もう仲間だし。リーダーの私の言う事は絶対だよ」


 いや、まだ仲間になったわけじゃないんだけど。


「じゃじゃーん。セーブの宝玉ぅ!。じゃあこれを割って、今の状態をセーブします」


 いわんや、ガラス玉のようなものを地面に投げつけて叩き割ったリリアーナ。


「さ、じゃあ始めよっか。カオスルート」


「まって、カオスルートって何!?」


「簡単に言うと、みんなはらませハーレムエンドってやつだよ。さっき言ったとおり、エーサンが子供を作ったら、次の話ですごい強い子が活躍するのね。でも、誰か一人に選ばないといけないの。誰かが孕むとそこでエンディング。続きは無いの」


 んんー?


「だけど、裏技があって、私を含めて、同じ日に4人に子供が出来れば、次の話で無敵のチートデータになるんだよね。もちろん、4人に一日で子供を孕ませる確率はとても低いよね。だからセーブしたの。失敗したら何度でもやりなおせるよ。何度でも何度でも子作りして、絶対にカオスルートに乗ろうね、エーサン!」


 笑顔でそう言ったリリアーナが俺の右腕に腕を絡める。そして他の3人も俺にしなり寄ってきて、俺は長年住み付いた家のベッドへと有無を言わさず押して行かれるのであった。


 どうやら転生した俺はゲームクリア後の隠しキャラだったみたいだ。


 ―完―

どうもこんにちは。新作投稿間近のセレンUKです。

こんな短編書いてないで新作の準備をしろ、というのもごもっとも。

ですが、久しぶりにネタが降ってきたので仕方なかったのです。

これまでと同じく勢いだけで書ききりました。構想20分くらい、執筆80分くらい! おかげで推敲の無い荒い展開ですが、勢いだけの短編だからいいですよね!


お楽しみいただけましたのであれば幸いです!

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