4話 上級チケット
数ある作品の中から、私の作品を見つけてくださり、ありがとうございます。
読んでいただける方に楽しんでもらえるよう頑張りますので、どうぞよろしくお願いします。
ムーシルトの商店街も、もう終わろうかという街の片隅。
ダンジョン産のドロップアイテム買取屋ルートバイヤー・ハンダーソン。
扉を閉めると、狭くて薄暗い店内には、誰が買うのか見当もつかないような、どうでも良い雑貨が、疎らに、しかも雑然と展示してある以外は、大きめのカウンターがあるだけで、そこには店員すらいない。
僕は少々声を張り気味に、店の奥にいるであろう店主を呼んだ。
「すいませ~ん。買取お願いしま~す。」
しばらくすると、店の奥に繫がる暖簾のかかった出入口から、小柄で禿頭、口の周りに髭を蓄えた初老の男が現れた。
「はいよ。お、なぁ~んだ、坊主か。今日は何だ。面白い物でも出たか?」
「こんにちは、ハンダーソンさん。今日は凄いよ!実はね、やっとプラモを手に入れたから、練習も兼ねて、ミヤビのダンジョンに行ってきたんだ。それでね、2階層でスケルトン狩りをしていたらね、何が出てきたと思う?エクイノクスナイトだよエクイノクスナイト!プラモが無かったら危なかったよ、死んじゃうところだったよ。」
「2階層でエクイノクスか、物騒な話だな。ギルドにはちゃんと報告しとけよ。」
「うん、ここに来る前に、寄ってきたよ。一緒にアイラも行ってたんだけど、アイラったら、エクイノクスナイトを倒したら、怒って帰っちゃったんだよ。でも、ギルドには、先に帰ったアイラが、一足先に報告してくれていたみたいだったよ。」
「そうか、アイラちゃんもビックリしたんだろさ。2階層でエクイノクスなんて出てこられたら、おいそれとダンジョンなんて潜れないからな。」
「アイラもきっと怖かったんだと思うから、今日の稼ぎで次のチケットが買えるなら、買って帰ろうと思ってるんだ。」
「そうか、それじゃあ、早速出た物出してみろ。」
「うん。」
僕は、ボスが出る階層の前の階層まで潜って出たドロップアイテムを、カウンターの上に並べた。
「なかなかの数の魔核じゃないか。おっ、コレは良いな。でもまぁ、上級のチケットには届かねえな。」
「メインディッシュはこれからだよ。まずは、この鎧。さっき言ってたエクイノクスナイトからドロップしたんだよね。あとは、この剣は何だっけ、デュラハンだ、デュラハンが落とした剣だね。そして、最後は、コレ。これってエリクサーだよね?」
「あぁ、そうだ、それに、この鎧、これは良いぞ。運が良かったな坊主。これはノアールシリーズの鎧だろう。エクイノクスから出る装備の中でも特別な物だ。これはな、生身派の冒険者にしてみりゃ、涎が出る程の代物だ。ただ、これだけの物を買い取りとなると、今うちにある現金じゃ足りねぇな。そうだ。坊主、どうせ売った金で、チケット買うんだろ?現物支給でも構わないなら、色付けてやれるぞ。」
「それでも良いけど、チケットのクラスは?」
「コイツだ。」
「うわぁ~!?上級チケットだ!!!」
「これで良いなら、チケット代を1万8千ミルで計算してやる。残りを1万ミルの現金でどうだ?」
「うん、それで良いよ!ありがとうハンダーソンさん!」
僕は、思わぬ形で手に入れることが出来た上級チケットを握りしめ、帰路を急いだ。
僕は、家に着くなり、すぐに隣のアイラの家に向かった。
「こんにちは!アイラいますか?」
「あら、トト君、アイラなら自分の部屋にいるわよ。」
「ありがとう、おばさん!」
僕は、そのまま2階へと階段を駆け上がり、アイラの部屋をノックする。
「アイラ、入るね。」
僕はアイラの部屋のドアを開くと、部屋の中を覗き込んだ。
すると、アイラは自分の勉強机に向い、椅子に座っていた。
「アイラ、あれ、着替えたの?」
「そうよ!ちょっと汗をかいたから、着替えたのよ!」
「そうなんだ。あ、そうだ、ギルドへの報告ありがとう。」
「別に、それくらい当たり前でしょ。」
「うん、でも助かったよ。あ、そうだ、それが本題じゃないんだった。コレだよコレ。アイラ見てよ。」
「それは!チケット買えたの?」
「えぇとね、ハンダーソンさんの所にドロップアイテムを持って行ったら、あのエクイノクスナイトが落とした鎧が、ノワールシリーズっていう、すごく高級なものだったらしくてね、高い値段で買い取るけど、お金が足りないからって言って、現物支給でこの上級チケットと1万ミルにしてくれたんだよ。上級チケットを1万8千ミルで計算してくれたから、2000ミルも儲けちゃった。」
「すごいわね!」
「お金は二人で山分けにしよう。」
「お金の山分けは、次からでいいわ!このチケットで出てくるプラモは、私が使わせてもらえるのよね?」
「うん、もちろんそのつもりだよ。」
「じゃあ、私が戦力になった時に、分け前をくれればいいわ。」
「そっか、わかったよ。それじゃあ、早速召喚してみようか。今回は上級チケットだし、きっと、よほどのハズレを引かない限り、プラモが出てくれると思うよ。しかも、上級以上は、プラモが二つ以上出ることも珍しくないみたいだし、期待しても良いと思うよ。」
「そうなのね、楽しみだわ。」
「それじゃあ行くよ。《時空を越え、我が意志に応えよ。造形は器、器は魂。古の契約に従い、その命を刻み、この地に顕現せよ。プラモ召喚!》。」
辺りを包む眩い光、あまりの眩しさに、僕とアイラは顔を背けてしまう。
やがて、光で真っ白に染まった部屋に、色彩が戻る。
チケットを置いていた部屋の真ん中には、以前ナナハチを召喚した時とは違う箱が顕現していた。
「やったよアイラ、成功だ!って、ちょっとまってこれ、箱が二つあるよ!」
「凄いじゃないトト!どっちも、すごくカッコいいわね!!!」
「これ、こっちの白い方、これは大きさ的にはハイクラスと同じくらいだけど、部品の数がおかしいよ。異常に部品が細かくて、多い。もしかすると、噂で聞いたことのある、リアルクラスかもしれない……。」
「リアルクラス?」
「うん、さっきも言った通り、大きさ的にはハイクラスサイズだけど、内部フレームを搭載していて、マスタークラス並みの密度を誇り、物によっては、マスタークラスを超える強さを発揮する物もあるっていう幻のクラスって言われているんだ。それと、こっちの赤い方は、ちょっと僕の知ってるプラモとは毛色が違うな。角があって、尻尾もあって、まるで赤竜みたいだ。」
「こっちの白いのは羽が付いていて綺麗ね。でも強そうなのはこっちね、赤いし、デカい剣も持ってるし。」
「いっぺんに両方は作れないから、まずはどっちがいい?」
「そうね、早く試練の塔で稼げるようになりたいし、赤い方にしようかしら。」
「わかったよ、これは、30だね、30の後の文字はマスタークラスの箱に書いてあった猫の額の模様みたいな文字だ。その隣はなんとも形容し難い文字だね。よし、これはサーティーキャットって名前にしよう。」
「かわいくて良いわね。気に入ったわ!」
「中身の方はシンプルだし、それほど時間はかからないと思うけど、万が一合わせ目なんかが出るようなら、少し時間がかかるかもしれない。でもまぁ、急いで作るよ。」
「ありがとうトト、でも無理はしないでね。」
「うん、わかった。じゃあ、早速作ってくるよ。」
「うん、じゃあね。」
僕は、アイラの家から、隣の自分の家へと戻り、早速プラモを作ろうと思ったけど、アイラに頼まれたサーティーキャットの方ではなく、白いプラモの方が気になって、一晩中、ひたすら白いプラモの中身と説明書を眺めていた……。
「これ、もしかすると、ナナハチよりも凄いものかもしれない……。」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
感謝の言葉しかありません。
よければ次のお話も読んでいただけるとありがたいです。
次回更新は12月18日木曜日を予定しております。
どうぞよろしくお願いいたします。
このお話が面白いと思っていただけたなら、評価やコメントなどいただけるとありがたいです。




