24話 驕慢 対 蛮勇
数ある作品の中から見つけてくださり、ありがとうございます。
今回の24話で第二章が幕を閉じます。
これまで応援してくださった皆様に感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。
(まだ、完結ではございません。)
ママのプラモの内部フレームが露わになった瞬間、僕たちは思わず息を呑んだ。
マスタークラス。
その言葉の重みを実感し、腑に落ちる。
ママは、僕たちが驚く様子を楽しむように、ゆっくりと首を傾けた。
「そうさねぇ、坊やたち。あんたらの言う通り、これはマスタークラスさ。でもねぇ……。マスタークラスってのは、ただ強いだけじゃないんだ、扱える人間が限られる、いや、使うものを選ぶと言った方がいいかねぇ。」
ママのプラモの胸部が、ギシギシと嫌な音を立てて軋む。
その音と同時に、ママの動きが一瞬だけ、引っかかりのような、不自然な挙動を見せた。
ほんの一瞬。
でも、僕の目はその“わずかな遅れ”を見逃さなかった。
『今の、何だろう?』
ママはすぐに動きを取り戻し、再び僕たちに向けてサーベルを構える。
「さぁ、続きをやろうじゃないか。坊やたち。誰から刻まれたいんだい?」
アイラとシャナが構え直し、剣を握る手に力が入る。
僕もサーベルを握り直し、羽武装を再度展開させる。
『だけど。さっきの“遅れ”……。あれは絶対に見間違いじゃない。』
あのマスタークラスの強さは本物だと思うけど、でも、あの内部フレームの軋みと、わずかな動作の遅れ。
『あれは、ゲート跡をちゃんと処理してないんじゃ?それが原因で、きっとパーツ同士がちゃんと嚙み合ってないんだ。』
刹那、僕は頭の中で稲光が走るような感覚を覚えた。
『マスタークラスは、なんでもかんでも強い訳じゃない。ちゃんと組み上げれば、プラモの弱点になりがちな関節の可動も、強くスムーズに動くし、装甲だって、分割されていることによって、損傷を最小限に抑えることが出来るけど、組み方が悪いと、その出力の高さが、そのまま機体への負荷になる!』
僕たちが塔攻略で学んだ、あの基本中の基本、プラモは正しく組んでこそ、その力を最大限に引き出せる!
僕はアイラとシャナにだけ聞こえるくらいの小さい声で言った。
「ママのプラモは、確かにマスタークラスだ。でも、あれ……、絶対まともに組めてない。きっとバリもゲート跡の処理もちゃんとやってない、だからハメ込みが甘くなって、パーツ間の隙間が出来たせいで軋んだんだ。」
その瞬間、ママのプラモの腰の辺りで、バチッと火花が散った。
「……っ!」
ママがわずかに顔を歪める。
僕は確信した。
『やっぱり、ママのマスタークラスは、その強さ故に、ちゃんと組めていないことによる負荷が大きいんだ、これなら行ける!』
「アイラ、シャナ、ママのプラモはそれほど長く持たない、このまま皆で波状攻撃を仕掛けるんだ!」
「「了解っ!」」
僕たち三人は、それぞれの武装で、精一杯攻撃するが、ママは4本のビームサーベルをぐるぐると回転させ、綺麗な黄色い真円の残像を描きながら、僕たちの攻撃をことごとく弾き返す。
しかし、右側の前垂れから伸びる隠し腕が描く真円が、一瞬そのシルエットを崩したかと思うと、隠し腕の関節の辺りから、パーツが外れてあらぬ方向に飛んで行ってしまった。
そこからは一瞬だった。
アイラの大剣を右腕で受け、シャナのサーベルを左手で受け、僕が左手に握ったサーベルを、残った隠し腕が握るサーベルで受け止めたその瞬間。
僕が右手に握ったサーベルで、ママのプラモの左脇腹辺りから斬り上げ、ママの左腕を斬り飛ばす。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁあああああああああ!」
断末魔の叫びをあげるママ。
その隙を逃さずに正面からアイラが、背後からシャナが、ほぼ同時に斬りつける。
二人がママから離れた瞬間、羽武装が自動でとどめの一撃を叩き込む。
ママはその場に膝から崩れ落ち、ドサっという重い音を立ててうつ伏せに倒れた。
プラモの装着が解除されたママは、そのまま意識を失ってしまった。
「なんだ、本当に腕が切れたりするわけじゃないのね。」
「ちょっとアイラ、グロいこと言わないでよ。」
「あはは、ごめんなさいね、トトはおこちゃまだから、血なんて出ようものなら、そのまま気絶しちゃうだろうからね。」
「そんなことないよ!」
「ほらほら、二人とも、喧嘩してないで、さっさとコイツら縛り上げて、警察に突き出しましょう。」
僕たちは、ママとその手下たちを縄で縛り上げ、一番近くの警官詰所に通報すると、ゾロゾロと沢山の警官が来てくれた。
「あなたたち、やるじゃない。ピンチになるようなら助けてあげようかと思っていたけど、どうやらその必要はなかったようね。ねぇクック。」
「そうね、まぁ、私はシャナとアイラの髪の毛が風で靡いたりしたら、恰好が良いかと思って、少し風を出してみたけど、プラモを纏っているから、あまり意味はなかったわ、とんだ無駄骨だったみたい。」
「それならそうと言ってくれれば、私も攻撃の度に、背後で爆発でも起こしてやったのに。」
「いやいや、それは危ないからやめてね。」
チッチとクックが真顔で話しているのを見ると、本当にやりそうで怖いので、僕は一応釘を刺しておいた。
ママと手下のチンピラたちが次々と拘束され、警官に連行されていく。
意識は取り戻したものの、まだ朦朧としている様子のママが、僕たちがいる方を見て言った。
「あんたたちは確かに強い。だが、所詮は子供だ。大人を舐めるんじゃないよ。誰もが、当たり前に真正面から相手してくれるとは、限らないからねぇ。特に坊や、あんたは頭もキレるようだが、それが逆に仇となることだってあるってこと、覚えておくんだね。」
「勝手にしゃべるな、黙って歩け。」
「吠えるんじゃないよ、このワンコロどもが。」
僕は、ママが最後に言った言葉に、妙な胸騒ぎを覚えた。
きっと、半分以上は負け惜しみの類であることは間違いないとは思うけど、それにしては、妙に具体性のある話だったような気もして、歯牙にもかけずに笑い飛ばす、というふうには思えなかった……。
その後、僕たちは、警察とギルドの両方で聴取を受け、解放された頃にはすっかり日も暮れていたので、一度家に帰り、皆でベリーメリーキッチンに行って、犯人逮捕と、セレーナさん、トレイシーおばさんの無事を祝して、皆で乾杯することにした。
お父さんたちは皆、キンキンに冷えたビールを注文し、僕たちはブドウビールを注文した。
ブドウビールは、言ってしまえば、たんなるブドウの炭酸ジュースなんだけど、大人が飲むビールの様に、細かい泡が出る様になっていて、泡で髭が出来るのを楽しむための、子供用の飲み物だ。
「それじゃあ、犯人グループの逮捕と、トレイシーおばさん、セレーナさんの無事を祝して、乾杯!」
「「「「「「「「「乾杯!」」」」」」」」」
僕たちは、夜更けまでとはいかないので、ご飯を食べてジュースを飲んだら三人で家に帰ったけど、大人たちとチッチ&クックは夜更けまで飲み明かしたようだった。(ちなみにチッチとクックはトトたち以外の人間には見えないので、勝手に飲んだり食べたりしていたようだけど、誰にも気づかれず、好き勝手にやっていたらしい……。)
「ん?なにこれ???ちょっとクック、これなんて書いてあるの?」
「ん~?なになに……。わかんないわね。なんとか大会って書いてあるのかしら。なんでもあり?う~ん、なんだかよくわかんないわね……。」
「ふ~ん、まぁ、いっかぁ~!」
「そうだそうだぁ~!」
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
楽しんでいただけていたら、とても嬉しいです。
次回からは第三章に入る予定なのですが、実は今、別サイト「ハーメルン」にてガンダムの二次創作作品を連載しております。こちらの方も、かなり本気で書いています。
ただ、二作品を同時に進めるとなると、どうしても頭が追いつかなくなってしまうため、まずはガンダムの方を完結させてから、こちらの第三章を再開する形を取らせていただこうと思います。
ガンダムの方は、昨年春に放映されていた
『機動戦士ガンダム GQuuuuuuX』
の“存在していたはずのアムロ・レイ”を主人公に据えたスピンオフ的な作品です。興味のある方は、そちらも楽しんでいただけたら嬉しいです。
それでは、第三章の再開まで少しお時間をいただきますが、また皆さまに読んでいただける日を楽しみに、ガンダムの方をしっかり書き切ってきます!




