23話 黄色い轟動
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僕たちは今、先日の誘拐事件の黒幕を追っている。
追跡してもらったチッチとクックからの情報で、実行犯の素性は抑えてある。
しかし、どう考えても、この実行犯たちだけで、あの誘拐事件を計画出来たとは思えないので、おそらくこの実行犯たちの他に、顔を見せていない黒幕がいるだろうということで、この実行犯たちの中でも、役人のおじさんに直接会っていた男にあたりをつけて、この一週間程、行動を監視していたが、とうとう尻尾を出したようで、数名の手下を連れて、重そうな袋を持って、雑草や蔓が生い茂る、如何にも怪しげな屋敷に入って行った。
僕たちは、先行偵察隊として、チッチとクックに建物の中に侵入してもらうと、中では、さっきの実行犯グループの男たちが、屋敷の主人と思しき老婆に袋を手渡していて、袋の中にはお金がたっぷりと入っていたというので、これはもう当たりだろうと、屋敷の中に突入した。
「犯罪者の皆さんこんにちは。」
「ガキどもどこから入りやがった!?」
「もちろん玄関から入ってきました。そちらのフードをかぶったおじさんは、1週間ぶりですね。あの役人のおじさんの所から、うまく逃げたと思っていたんだろうけど、あれから一週間、ずっとあなたの行動を監視していたんですよ。」
「おやおや、とんだドジを踏んだようだね、ロジア。こんな子供にしてやられるなんて、お前も焼きが回ったんじゃないのかい?」
僕がフードの男に話しかけると、奥の回転するソファに座っていたお婆さんが、ソファをくるっと回してこちらを向き、余裕の表情のまま、ロジアと呼ばれたフードの男を、窘める様に言った。
「ママ、面目ない。だが、たかがガキ三人、ノコノコこの屋敷潜り込んでくれたんだ、このままお家に帰したりはしないよ。」
「ロジア、だからお前は考えが足りないって言うんだよ。お前たち、周囲に怪しい動きをしている人間がいないか、確認してきな。」
ママと呼ばれたお婆さんは、険しい表情で周囲の手下に指示を出す。
「まだ、通報してないから、周囲には僕たちの味方はいないよ。でも、騒ぎが大きくなれば、別かもしれないけどね。」
ママは再び僕たちに向き直り、ニッコリと微笑んだ。
「坊やたち、良く頭の回る子たちだね、ウチのバカどもよりも、よっぽど役に立ちそうだ。それに、度胸もある。ただし、三人で乗り込んでくるというのはいただけなかったね、次からはもう少し利巧に立ち回ると良い。しかし、どうだい、私の所で働く気はないかい?」
「生憎だけど、僕たちは悪い事をしてお金を稼がなきゃならないほど、お金には困っていないよ。それに、僕たちをただの子供と侮らない方が身のためだよ。僕たちは、試練の塔に出入りしている冒険者だよ。」
僕たちがプラモを見せて、子供でも戦えるということを示したが、老婆を含めた犯罪者グループの面々は、にやけた表情を崩すことはなかった。
「プラモを纏えるのが、冒険者だけだと思ったか?小僧共。プラモなら、俺達だって持っているんだよ。」
「「アセンドストライク!」」
僕たちと犯罪者グループの数人は、ほぼ同時にアセンドストライクの呪文を唱え、お互いプラモを纏った。
ロジアたち犯罪グループの数名が纏ったのは、おそらくエントリークラスや、ハイクラスのプラモだけど、そのまま組み上げただけのもので、プラモの組み方もとても雑な物だった。
ロジアは、プラモを纏うと同時に、持っていたライフルを、水平に構えて攻撃をしてきたけど、僕のクザンが、その攻撃を背中に背負った放熱板の様な物による自動のバリアで防ぎ、そのまま犯罪グループの人たちを、次々と攻撃して無力化していった。
それでも攻撃をやめようとしないロジアめがけて、アイラが持っていた大剣を振るうと、鈍い音を響かせながら、壁を破壊して、屋外まで吹き飛ばされてしまった。
「バ、バカな……。」
既に満身創痍の体のロジアだったが、それでも立ち上がろうとしてついた手の、わずか数ミリ手前をシャナのビームライフルが撃ち抜き、ロジアは再び転倒する。
「僕たちはもう、塔の中層階にまで達している冒険者だから、そんなプラモで僕たちガチ勢に太刀打ち出来ると思わない方が良いよ。」
こうして僕たちは犯罪者グループと、その親玉を一網打尽にし、警察に突き出そうと、全員を捕縛することが出来た。
「これで少しは、トレイシーおばさんやセレーナさんの気も晴れるといいんだけどね。」
すると、さっきまで大人しく捕縛されていたママが、ふいに大きく口元を裂くように開いた。
「面白いねぇ、あぁ面白い、本当に面白い子たちだよ。あんたたちは。」
次の瞬間、老婆とは思えないほどの大声で、ゲラゲラと笑いだした。
「小僧ども、どうしてこの私が、このまま大人しく捕まると思った?ロジアたち私の手下は、どうして私に付き従っていると思う?教えてやろう、こいつらが束になってかかってきても、私には歯が立たないからさ。ソファに深々と体を沈めた太ったお婆ちゃんには、プラモなんて纏えないとでも思ったかい?あ~っはっはっはっはぁ~~~。」
ママは捕縛されたまま、静かに呪文を唱えた。
「アセンドストライク。」
すると、その体を眩い光が包み、次の瞬間には、黄色くて鈍重そうなプラモが、ママの全身を包み込んでいた。
ママはゆっくりと立ち上がると、持っていたライフルを、その場に捨てて、両腕にビームサーベルを握った。
「坊やの背後に漂っているその細長い板みたいなのがあったんじゃ、こんなもの役に立ちそうにないからね。」
ママのプラモの細長い頭に据えられた緑色の一つ目が、怪しい光を放つ。
「だからって、剣を持っても、その樽に手足が生えたような身体じゃ、何時まで持つのかしらねっ!」
アイラは、ママの左手から一瞬で距離を詰め、持っていた大剣で薙ぎ払う。
と、ほぼ同時に、今度は逆からシャナがサーベルを抜き、袈裟斬りに切りつけた。
ママは二人の攻撃を、身体の位置を変えずに、それぞれ片腕だけで受けて見せた。
「くっ!」
「なんてパワーなの!?」
二人の剣とママの剣が交錯し、文字通り火花を散らす。
「もう一人いるんだけど、その態勢でどうするつもり?」
僕はママを挑発しつつ、持っていたビームライフルで、ママの胴体めがけて撃ち抜いた。
すると、ビームの光閃がママの胴を貫く直前、何かがそのビームを弾き、僕の左の頬を掠める様に跳ね返ってきた。
「ク~ックック。ビームサーベルは、2本で終わりだと思ったかい?」
ママは依然、アイラとシャナの剣を両手に持ったビームサーベルで防いでいる。
しかし、そのプラモの前垂れから、更に2本の細い隠し腕が現れ、それぞれビームサーベルを握っていた。
すると、ママは、アイラとシャナの剣をはじき返し、合計4本のビームサーベルで、二人を相手に剣戟を始めた。
二人に当たってはいけないので、僕も背中の羽武装を使い、隙間を狙って攻撃をしかけたけど、ママは4本の腕で器用に弾をはじいたり、剣を捌いたりと、全くもって隙が無く、おまけに動きが俊敏で、見た目に反して、かなりの機動性を誇っていた。
僕もサーベルを抜き、羽武装も自動攻撃に切り替える。
アイラ、シャナと連携し、三人で攻め立てると、流石のママの防御にも、綻びが出てきた。
僕は、羽武装の一撃が、ママの背中の辺りに直撃した際、一瞬動きを止めた隙を見逃さず、逆袈裟の一撃で、ママの胴を斜めに斬り割いた。
皆がやったかと思って、一瞬手を止めた刹那、ママは両腕と隠し腕を大きく広げ、全身を駒の様に回転させて、僕たち三人に斬りかかって来た。
ママの攻撃をなんとかサーベルで受けたものの、三人ともパワーに押し負けて弾き飛ばされ、壁に激突した。
僕は、確かな手ごたえを感じていたはずなのに、ママの素早い反撃が意外に思えたので、顔を上げてママを見ると、確かにママを斬り割いたはずの場所は、外装が外れて内部フレームが露わになっていた。
「あれは、まさか、ママのプラモは、マスタークラス!?」
「嘘でしょ?」
「いや、あの内部フレーム、間違いない、あれは、マスタークラスよ!」
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次回は2月24日(火曜日)に更新予定です。
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