21話 ムーシルトの城
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僕たちは目的のパテオという店の前に到着した。
パテオの外観はというと、一言で言うならサイケデリック?よくある壁画にも見えなくもないけど、微妙に何かがずれている……。
レモンイエローやショッキングピンク、ライムグリーンと、一通りのそれっぽい色を使って書いてはいるが、どうもセンスがズレているので、この店の外観をマジマジと見ようと思う人は少ないように思う。
ということは、つまり、人の心理として、この店からはあえて視線を外したくなるということで、犯人としては、この店の裏というのは、とても都合が良い場所ということになる。
そして、パテオと隣の店の間には、大人がなんとかギリギリ通れるくらいの幅の路地があるが、その路地裏には、人の視線は届きにくいだろう。
そこまで考えての場所の選択というのであれば、これはかなり油断の出来ない相手と言うことになるのではないだろうか。
僕たちは周囲に注意を払いながら、路地を通ってパテオの裏へと向かった。
「犯人がどう出てくるかわからないから、皆警戒してね。」
「いきなり襲ってきたりはしないでしょ。」
「シャナを挟むようにした方が良いんじゃなかしら。」
「そうだね、アイラは後ろをお願い。」
「わかったわ……。」
僕たちがパテオの裏にたどり着くと、まだ日が落ち切っていない時間帯の屋外にもかかわらず、周囲は薄暗くて視界が悪く、意識の行き届きにい、場の全体像をスムーズに認識し難い、そんな不気味さのある雰囲気だった。
「荷物は正面の積み上げられた木箱の上に置け。君達の家族の居場所は、君たちが入ってきた路地の出口の上の方に封書があるから、その中の地図を見れば、簡単に見つけられるだろう。」
突然何処からともなく声が聞こえたけど、周囲を見回しても人影は見当たらない。
しかし、ここで犯人に逆らっても、得することは何もないので、言う通りに持ってきたケースを乱雑に積み上げられた木箱の上に置いた。
そして、僕たちは全員で路地の出口を見上げると、そこには犯人が言った通り、封書が壁の亀裂に挟まれていた。
僕はその封書に意識を持って行かれているように装い、チッチとクックに目配せをすると、二人の妖精たちは、得意げな顔で頷き、隠れていた犯人の尾行を開始した。
僕たちは、その後にも一応、段取り通り一芝居うっておいた。
「あれ!?誰もいなかったはずなのに、木箱の上に置いたケースがなくなってるよ!」
「本当だわ、どこに行ったのかしら!」
「そんなことより、お姉ちゃんたちの居場所はどこって書いてあるの?」
僕たちは、台詞が棒読みにならないように注意しながらも、封書の中身を確認すると、意外なことに、このパテオという店のすぐ近くに監禁しているようだった。
逃走の成功率を上げるためにも、もっと遠くの場所を指定するのかと思っていたけど、よほど自分の魔法に自信があるのか、拍子抜けしてしまいそうになった。
実は、さっき僕たちがパテオの裏に初めて入った時、犯人は裏の広場にいたのだ、おそらく、認識阻害系の魔法を使っていたのだと思うが、動かずにじっとしていれば気づくことは難しいが、いるとわかっていて、ましてや動いてしまえば、いくら認識阻害の魔法をかけていてもわかるし、そうだろうと思って、チッチとクックにはケースから目を離さないように言ってあったので、ちゃんと追跡出来ているようだった。
犯人の地図によると、トレイシーおばさんとセレーナさんを監禁している場所は、このパテオという店の通り向かいの、裏手通りにある、今は使われていない三階建ての建物の一番上に居るらしいので、僕たちは急いで二人の救出に向かった。
三階建ての建物に入った僕たちは、周囲の警戒をしながら上の階へと進んだ。
今はチッチとクックは犯人の追跡に向かっているので、いざという時は自分たちで身を守らなくてはならないので、僕たちは全員、プラモを纏って捜索を進めたけど、最上階まで探しても二人を発見することが出来ず、騙されたのかと思った矢先に、最上階の更に上から、かすかに物音が聞こえたので、僕はクザンのセンサーを使って部屋の更に上を確認すると、屋根裏部屋と思われる空間に、二人の反応があった。
屋根裏部屋へのアクセスは、ハシゴが必要そうだったけど、アイラのプラモは背中に羽が生えていて、少しなら空中に浮くことが出来るので、そのままアイラに屋根裏部屋への救出に向かってもらった。
アイラが屋根裏に入って少しすると、女性の盛大な悲鳴が聞こえた。
アイラのプラモは、顔が怖いから仕方がないけど、折角助けに来て、しかも母親に悲鳴を上げられるアイラに、僕はほんの少しだけ同情してしまった。
その後も屋根裏で、しばらくガヤガヤとやり取りするのが聞こえたけど、話し声が収まったころには、アイラが二人を抱えて屋根裏から降りてきた。
「アイラ、お疲れ様。おばさんもセレーナさんも無事で良かった。」
僕が二人に声をかけるのと、シャナがセレーナさんに飛びつこうとするのがほぼ同時だったが、何とか僕がシャナを制止するが間に合った。
「シャナ、気持ちはわかるけど、僕たち今プラモ纏ってるから、そのまま抱き着いたら、セレーナさん死んじゃうよ……。」
「おねぇちゃ~~~ん。うぇ~~~~~ん。」
「シャナ、ゴメンね心配かけて……。」
「ちがうよ!セレーナさんがあやまる事なんて、一つもないんだ。悪いのは犯人で、セレーナさんじゃない。だから、心配してくれてありがとうって言ってあげてください。」
「そうね、そうよね。ありがとうトト君。シャナもアイラちゃんもありがとう。」
「それにしても、トト、シャナの時もそうだったけど、やたらとそこにはこだわるわよね。」
「うん、僕は悪くない人が負い目を見るような事になるのが許せないんだよね。それと、悪い事をした人も同時に許せないよ。どんな事情があるにせよ、助けを求めるよりも先に犯罪を選び、無関係な人達を傷つけるなんて、許せるわけがないよ。」
「普段はボーっとしてるけど、そういうところは良いじゃない。っと、それよりも、早く二人を家に送り届けましょう。」
「そうだね、二人のことはアイラとシャナに任せても良いかな。僕はもう一度パテオの裏に戻って、クックが戻るのを待つよ。」
「了解、二人のことは任せておいて。」
「帰る時は、路上ではプラモは外した方がいいと思うけど、いざという時の為に、いつでも纏う準備だけは忘れないでね。」
「大丈夫よ!」
「えぇ、私も大丈夫、もう落ち着いたわ。」
僕たちは二手に分かれ、救出出来たトレイシーおばさんとセレーナさんを送り届けるチームにはアイラとシェラを、犯人を特定するチームは僕とチッチ、クックの三人で、という振り分けで対処に当たった。
僕はクックと合流する為、再びパテオの裏の広場で待っていると、程なくしてクックが帰って来た。
「お帰りクック。どうだった?犯人の居場所は特定出来た?」
「当然でしょ!でも、居場所が居場所なだけに、ちょっと面倒かもしれないわよ。」
「面倒?」
「あなたたちの家がある所から、そう遠くない場所よ。あなたたちの拠点の窓からも見えるんじゃないかしら。裏の方の大きい城の中よ。」
「えぇぇぇぇぇ!!! ムーシルト城!?」
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次回は2月13日(金曜日)に更新予定です。
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