20話 救出作戦
数ある作品の中から見つけてくださり、ありがとうございます。
楽しんでもらえるように書いてきますので、どうぞ気軽に楽しんでいってください。
《君たちのご家族は我々が預かっている。
返してほしければ私たちの要求に答えることをお勧めする。
要求はいたってシンプルだ、我々が預かっている君たちのご家族のうちの一人、セレーナ嬢が今こうして人質でいられる原因となる“薬品”これを渡していただきたい。
61゜4415551391に、25゛32゛迄に、この薬品を持ってきさえすれば、君たちのご家族は無事にお返しすることを約束する。
聡明な君達であれば、賢明な判断をしていただけると信じている。》
僕たちは、拠点に集まり、僕の両親とアイラのパパも呼んで、話をしていた。
「本当にごめんなさい。私のお姉ちゃんのせいで、アイラのお母さんにまで迷惑をかけてしまって……。」
「待って、待って。全然セレーナさんのせいじゃないよ。悪いのは誘拐をしたこの人たちであって、セレーナさんも被害者なんだから、シャナが謝る事なんて、これっぽっちもないよ。」
これは、僕の本心だった。
良く聞く話だけど、こういう場合に、原因となった人にまで責任を転嫁しがちだけど、それは全く違う話だと思う。
あくまで悪いのは犯罪を犯した人であって、被害に合った人ではない。
シャナはずっと泣き出しそうになるのを我慢していたんだと思うけど、僕が声をかけたのをきっかけに、顔をグシャグシャにし。
「うぅ~~~。ありがとうトトぉ~~~~~。うぇ~~~~~ん。」
シャナは僕に抱き着いて、大きな声で泣きだしてしまったので、僕はシャナの背中をなだめるようにポンポンと叩いた。
「そうよ、セレーナさんは1ミリも悪くないわ。こいつら、ふん捕まえて、ギッタギッタにしてやるわ!」
アイラは、何時にも増して怒っているようだ。
「そうだよ、シャナちゃんが気に病むことじゃない。皆で対策を考えよう。」
ライルおじさんも努めて冷静さを保とうとしているけど、テーブルの上に置いていた手の震えが止まらないようで、テーブルの下に隠してしまった。
「それにしても、おかしな脅迫文だな。何を何処に何時持って行くべきなのかが、まったくもって明確に書かれていない。しかも、脅迫文というには随分と丁寧な物言いで、気味が悪いな。」
「薬品については心当たりがあるし、場所についても簡単な暗号だね。」
「最初の61゜はパだね、次の44はテで、15がオ。55がノで、13がウ、91はラだから、答えはパテオノウラ、で時間は五時かな。」
「「「「「「「おぉ!」」」」」」」
「トトやるじゃない!パテオって、商店街の外れにある、あの怪しげなお店よね?」
「あぁ、あの、外壁がおどろおどろしいお見せね。」
「ただ、五時にパテオの裏に薬品を持って行ったとして、多分そこにはセレーナさんもトレイシーおばさんもいないと思うんだ。返してくれるにしても、また別の場所を指定されて、散々かき回されてからの解放ということになるだろうね。」
「なんでそんな面倒なことをするの?」
「そりゃあ犯人だって、捕まりたくはないだろうからな。」
「ねぇ、お父さん、お母さん、ライルおじさん、この件、僕たちに任せてもらえないかな。僕に作戦があるんだ。」
「絶対に危ないマネだけはしないでよ。」
「大丈夫だよ。僕たちには強力な味方がいるからね。」
僕の作戦はこうだ。
まずは、犯人の言う通りにする。
犯人が欲しい薬は、文面からも明らかで、“濃縮エリクサー”で間違いない。
なので、僕たち3人で、濃縮エリクサーを持って、パテオの裏に行く。
そこにはきっと、犯人に雇われた人が受取人として待っているだろうから、その人に渡す。
すると、その人は、特定の場所を指定して、そこにいるから的な感じで取引が終わると考えてるだろうけど、そこで、僕たちはチッチとクックにその受取人を尾行してもらって、犯人を特定する。
チッチとクックならば、そもそもが普通の人には見えないので、これ以上の適任はいないだろう。
僕たちは言われた通り、指定された場所でトレイシーおばさんと、セレーナさんを保護する。
仮にそこに二人がいなかったとしても、チッチとクックに尾行してもらっているから、犯人は特定出来る。
犯人が特定出来れば、あとは力ずくでも問題ない。
チッチは犯人を特定出来たらそのまま監視で、クックは僕たちと合流する。
「それじゃあ皆、作戦は説明した通りだから、各自抜かりなくよろしくね。あと、念のため、プラモは忘れずに持って行くようにしてね。」
「「「「了解!」」」」
僕は、拠点二階のお宝部屋から、適当な大きさの箱を選んで、濃縮エリクサーを一瓶中に入れた。
これは完全に僕の個人的な予測になるけど、今回の誘拐を企図した人は、きっとセレーナさんやトレイシーおばさんを傷つけることはしないと思う。
いや、今とても怖い思いをしているだろうから、心の傷は残るんだとは思うけど、物理的な傷という意味では大丈夫だと思ってる。
そもそも、根っからの悪人であれば、こんな要求をすること自体が不自然で、濃縮エリクサーの価値を見据えての犯行であれば、僕たちに換金させて、その出来た現金を要求した方が、足が付きにくいのに、あえて薬品を持ってこいと言ってる時点で、きっと濃縮エリクサーがどうしても必要な事情があるんだと思う。
そう考えると、僕の考えた作戦はきっとベストな選択になるんじゃないだろうか。
警察に通報しても、今回の件はきっとうまく片付くとは思うけど、犯人を特定した後の柔軟性に欠ける。
でも、僕たちが犯人を特定して捕まえられれば、きっと皆が納得できる結末に出来るんじゃないかと期待していた。
なんて考え事をしながら皆で歩いていると、アイラが預けた宝箱を持って、ブンブンと前後に勢いよく振りながら歩いているのが目に入った。
「ちょっと、ちょっと、アイラ!ダメだよ、そんなにブンブン振り回しながら歩いたら。」
「なんでよ?」
「どこかで犯人が見てるかもしれないのに、そんな緊張感のない運び方してたら、折角本物を持ってきてるのに、如何にも中身は偽物ですみたいな雰囲気になっちゃうじゃない。もっと、緊張感もって運んでよ!」
「あら、それもそうね……。」
「アイラ、私が持つわ、丁度本気で緊張もしてるし、適任だと思うの。」
「そう?なら、シャナお願いするわ。」
「逆にシャナは緊張しすぎなんじゃないの?ねぇチッチ。」
「そうよそうよ。そんなに緊張しなくても、私たちが犯人見つけてギッタンギタンにしてやるんだから!ねぇクック。」
「ちょっと、二人とも、作戦の内容は覚えてる?二人は犯人を尾行して、特定したら、僕たちに教える係だからね。制圧するにしても、僕たちと合流して、僕の判断にしたがってよ!」
「わかってるわよ、本当に人間ていうのは心配性なのばかりなんだから、ねぇクック。」
「まぁ、あなたのことが心配なのは人間も妖精も一緒だとは思うけどね、チッチ。」
「ちょっと何よ!あなただって所かまわずピューピュー風起こして、人間に迷惑がられてたじゃない!クック。」
「それを言うなら、あなただって、暑くてアイスが溶けるとか言って、真夏なのに周りを凍り付かせて、人間を驚かせてたじゃない!チッチ。」
「まぁまぁ、二人とも喧嘩しないで、もう少しで目的の場所に着くから、そろそろ真剣に周囲を警戒してよね。」
「「わかってるわよ!」」
誘拐事件となると、本当は子供が対処できるほど簡単な話でもないけど、でも、僕たちには妖精という、特別な協力者と、いざという時の為のプラモがあるから、きっとうまくいくはずだ。
しかし、気になるのは、あのチンピラ集団だ。
別同隊の誘拐を成功させるために、僕たちを足止めする目的で接触してきたんだとしたら、僕たちの行動やお母さんたちの行動を、かなり詳細に把握していたことになる。
それが可能なのは正直な所、僕たち家族の中の誰かだったとしても不可能だろう。
僕たちがプラモのお店に行くことにしたのも、あの時偶然思いついただけだし、お母さんたちの買い物にしたって、行く直前に話て決めたんだろうし、あまりにも不確定要素が多いのに、全てがうまくかみ合っている。
この事件、もしかすると、もっと深い謎が隠されているのかもしれない……。
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次回は2月10日(火曜日)に更新予定です。
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