18話 迫りくる足音
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僕の呪文によって、10枚あったはずのチケットは、全て消えてなくなっていた。
そして、その代わりに現れたのは、木の色に似た、ベージュの巨大な箱だった。
「これは、物凄く大きいね……。」
「融合召喚が発動したみたいね。」
「ということは、この中には、とんでもないプラモが入っているということかしら。」
「箱だけ大きくて中身は空っぽなんて落ちなんじゃないかしら。ねぇクック。」
「う~ん、どうやらそれはなさそうね。軽い物なら飛ばせる程度の風を当ててみたけど、微動だにしないところを見ると、中身はギッシリと 詰まっているようよ。チッチ。」
「でもさ、実はこれ、大きな箱に普通のプラモが10個入ってました!って落ちも、無くはなさそうじゃない?」
「たしかに、箱のサイズ的には、そのくらいの中身でもおかしくはないかもね。あ、でも待って、これ、相当重たいよ。プラモ10個程度の重さじゃないと思うよ。」
僕は、ベージュの巨大な箱を、抱えて持ち上げようとするも、感じた重量感に負けて、持ち上げるのを断念した。
「確かに重たいわね。」
「ねぇトト、もったいぶらずに開けてみてよ!」
「そ、そうだね、開封しようか。」
僕は、作業机の上に置いてあったナイフを手に取り、ベージュの箱を封印している部分を斬り割いた。
箱を開けると、中には白くて柔らかい、謎の素材が入っていたけど、どうやらそれが中身というわけではなさそうで、その白い素材の下には、さらに透明の袋に包まれた、黒い物体が入っていた。
「これは……。何?」
「まったくわからないよ。黒い箱?」
「トト、出してみたら?」
「そ、そうだね……。よいしょって、重っ!う~ん、外の箱ごと持ち上っちゃうな。アイラ、シャナ、外のベージュの箱の方を押さえてくれる?」
「「わかったわ!」」
僕たちは、三人で協力して、何とかベージュの箱の中の、黒い箱を外に出すことに成功した。
「これ、箱ではないね。横は塞がれてないし、なんだかものすごく重い円筒が横たわってるし、金属製であることはわかるけど、この黒い紐みたいなものも良くわからない素材で出来てるし、ここは何かな、穴が開いているよ。ん?もしかして、あ、この付属の紐がここに接続出来るんだ。あぁ、あとこっちはこのビームライフルのグリップみたいな形の付属品とつながるんだね。」
僕は、金属で出来た砲身のようなものが付いたグリップを握りこんでみたが、何にどうやって使うのか、まったく見当がつかなかった。
「で、結局、これは何なのかしら?」
「見た目だけじゃ全く用途がわからないわね……。」
「このグリップにはトリガーも付いてるし、何かの武装だったりするのかな?」
「あなたたちみたいに非力な子供が持っていたって、戦闘の際に持って移動することすら儘ならないんじゃないの?」
「たしかにそうね、私たちの助けが必要だろうけど、その補助が前提の武器って言うのもね。」
「とにかく、一つ間違いなく云えることは、融合召喚は成功したけど、出てきたのはプラモじゃなくて、黒い謎の箱だった。ということだね。ただ、これは武器ではないと思うんだ。理由は、チケットの召喚で直接武装になるようなものが出たって話は聞いたことが無いからね。あとで、プラモのお店に行って、コレが何なのか、ヒントでもいいから聞いてみよう。」
僕たちは、考えたところで、答えが出るとは思えなかったので、街のプラモショップに行くことにした。
商店街を抜けて、遠目に見えてきたギルドの手前にある小さな店に入ると、中には所狭しとプラモや製作に必要な道具類等が展示してある。
辺りを物色していると、店の奥から店主があらわれた。
「おぉ、坊主か、いらっしゃい。今日はガールフレンドも一緒かい。」
「こんにちは、二人は友達のアイラとシャナだよ。実は、今日はおじさんに尋ねたいことがあって来たんだけど、実際に見てもらった方が良いだろうから、ここに出しても良いですか?」
「あぁ、かまわねぇぞ。」
僕はマジックバックの中から、さっきの黒い金属のアイテムを出して、店のカウンターに置かせてもらった。
「これなんだけど、さっき、普通のチケット10枚で、召喚したら、融合召喚に成功したんだけど、出てきたのが、プラモじゃなくて、この謎の黒いアイテムだったんだ。何に使うものなのか、まったく見当がつかないから、おじさんなら何か知ってるかなと思って、持って来たんだけど。おじさんこれが何かわかる?」
「う~ん、ほうほう、ここがこうなっていて、なるほどなるほど、いや、しかし……。う~ん、ほうほう、こっちのここに、こうか、なるほどな……。」
「どう?」
「う~ん、さっぱりわからねぇが、もしかすると、コイツを動かすには、他にも何か必要なものがあるのかもな。この黒い紐みてぇな物、この先端から、謎の金属板が2枚でてるだろう?これはただの飾りにしちゃあ地味だし、何か意味があるんだと思うぜ。それに融合召喚で出たのがこれってことは、粗大ゴミでしたってわけでもないだろう。坊主がいらねぇなら、買い取ってやってもいいぞ。」
「う~ん、買取はいいや、もしかしたら何か使い道があるかもしれないし、持って帰ってもう少し調べてみるよ。」
「そうか、その方が良いな。ひょっとすると、とんでもなく便利なものかもしれねぇしな。」
「うん、相談に乗ってくれてありがとう。それじゃあまた来ます。」
「あいよ。気を付けて帰れよ。」
「は~い。」
僕たちは、これと言った収穫も得られなかったが、気落ちしても仕方ないので、商店街でスィーツでも食べて帰ろうという話になり、商店街へと続く広い道路を歩いていると、後ろから声をかけられた。
「おいおい、お前ら、ちょっと待て。うんうん、知ってるぞ、俺は知っている。最近塔に出入りするようになった、小僧ってのは、お前らだな。」
振り返ると、そこにはいかにも街のチンピラですという出で立ちの3人組が、ニヤニヤと笑いながら近づいてきていた。
「あんたたち、私たちに何の用?」
「おほっ!赤い流星じゃねぇか。お前、このガキ共とつるむようになったのか、ガキんちょ騙して、うわまえ跳ねようって魂胆か?へっへっへ。」
「そんなことするわけないでしょ!あんたたちと一緒にしないでくれる。」
僕は、シャナがチンピラ三人衆と話している間に、小声でチッチとクックに話しかける。
「チッチ、クック、またお願いしてもいいかな。」
「仕方ないわね、じゃあ、私がこいつらを氷漬けにしてやるわ。」
「え?チッチは火の妖精でしょ?氷漬けっていったい。」
「馬鹿ね、火の妖精と言っても、温度を司る妖精よ。熱くすることだってできるけど、温度を下げて涼しくすることだってできるのよ。当然、灰にも氷にも出来るってわけ。」
「そこに私の風魔法をトッピングすると、それはもう大変なことになるんだから。街のチンピラなんて、朝飯前よ。」
「ねぇトト、人間は、体温が何度まで低下すると死ぬと思う?」
「ちょっと、チッチそんな物騒な事、冗談でも言っちゃダメだよ。」
「何よつまらないわね。まぁ良いわ、じゃあご要望通り、凍えて立っていられない程度に冷やしてあげるわ。」
チッチがクルクルと回りながらチンピラ三人衆の方に飛んでいくと、小さな体をふわっと反らせ、すぅっと息を吸い込むようなジェスチャーをした。
すると、チンピラたちは首をぎゅっと縮め、両腕を胸の前で交差させて抱きしめるようにしながら、
「さ、寒っ……!」とでも言いたげに肩を擦りはじめた。
「なんだ、お前ら、なんかしたのか?急に寒くなってきやがった……。ちきしょう、このままで済むと思うなよ。覚えてろ!」
チンピラ三人衆は、ありきたりな捨て台詞を吐き捨てると、そのまま走り去って行った。
「何しに来たのかしら。」
「あいつら、羽振りの良さそうなヤツを見つけては、金目の物を巻き上げようと、目を光らせているのよ。」
「生身の戦いだと僕たちは分が悪いけど、僕たちにはチッチとクックがついてるから、チンピラくらいなら問題にはならないようだね。そんなことより、早くメリーズスイーツに行こう!」
「「おぉー!」」
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次回は2月3日(火曜日、今年の節分ですね!)に更新予定です。
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