15話 一緒に行こう
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「あ、赤い流星……。」
「トト、その二つ名、まさか……。」
「アイラ……。」
「……。って、知らないんか~い!」
「うぅ、なんで、気づかれたんだろう……。」
「いや、どれだけの付き合いだと思っているのかしら、その顔は完全に何をどうして良いかわからなくて困ってる時の顔じゃないの!」
「あ、あははははは……。(汗)」
「別にいいわよ、それほど有名なわけでもないし、ただ、私のプラモが赤いから、ちょっとからかい半分にそう言われてるだけだし……。」
「シャナのプラモはハイクラスだよね?塗装しているわけではなさそうだけど。」
「そうよ、流石ね。でも、プラモには、色が違うだけで、性能が変わるものもあるのよ。私のプラモも、同じ形の色違いがいくつかあるようだけど、そのどのプラモよりも私のプラモは早く動けるのよ。」
「聞いたことがあるよ。プラモによっては、特定の色で性能が変化するものがあるって。」
「トト、あなたのあの白いプラモ、あれの色違い、私も見たことがあるわ。ハイクラスのプラモだったけど、なかなかの性能だったわよ。ただ、アイラのプラモは今まで見たことがないわね、一般的なプラモのようにゴーレム然としているのではなく、どこか生身感があって、それでいてドラゴンのようにも見えて、不思議なプラモね。」
「そうよ、あれはトトが私の為に引き当ててくれたプラモを、私のイメージに合わせてゴージャスに仕上げてくれたのよ。」
「ゴージャスにしようと思って塗ったわけじゃないんだけどね……。」
「トト、何か言ったかしら?」
「い、いや、なんでもないよ、ただの独り言……。」
困った顔で言い訳をする僕を見て、シャナが少しだけ表情を緩めて言った。
「ふふっ、羨ましいわね。お互いよくわかりあっているって雰囲気を感じるわ。あなた達二人なら、きっともっと高みへと行けるわ。私はもう、自身もプラモも失ってしまったわ……。」
「それじゃあ僕たちと一緒に行こうよ。」
「「え?」」
シャナは持っていたボロボロのプラモを床に落とし、アイラは驚いた拍子で若干椅子からずり落ちた。
「あ、ごめん、驚かせちゃったみたいだね。でも僕、ずっと考えていたんだけど、この間アイラに召喚したプラモ、もう一つの方も実は作り終えてるんだけど、そのプラモ、とても長い砲身の武装があるんだけど、どう考えても、後方支援な感じだから、アイラ一人に前衛を任せることになっちゃいそうで、アイラの負担が増えるなと思っていたんだ。でも、僕が今使っているマスタークラスのナナハチを誰かが使ってくれるなら、前衛二人に僕が後衛をすることで、バランスの良いパーティーになるのになって。」
「あぁ、アレもう作ってたんだ。」
「うん、なんか、拠点の制作部屋に飾ってあるんだけど、早く僕を纏ってって言っているような気がしてさ、僕にとってはシャナが仲間になってくれると、本当に渡りに船な感じなんだよね。」
「ま、まぁ、トトがそこまで言うなら、私は仲間に入れてあげても良いと思わないでもないわね。」
「わ、私は……。」
「今まで大切にしていただろうそのプラモへの想いもあるだろうし、今すぐ返事をしてとはいわないから、考えてみてよ。それより、シャナ今日はこれから何か予定があってりするかな?」
「いえ、特に予定はないけど……。」
「じゃあ、僕たちの拠点に遊びにこない?」
「いいわね、私達の拠点を見たら、きっとシャナの方から仲間に入れてくださいって言うわよ。」
「そ、それじゃあ、おじゃましようかな。」
僕たちは塔から出ると、そのままムーシルトまで転移して、街で少し食べ物や飲み物を買い出しして、自分達の家の間にある、拠点という名の一軒家に向かった。
「あなた達の拠点って、これなの?」
「うん、なかなかいいでしょ?」
「なかなかなんてものじゃないわよ、これ普通に家じゃない……。もっと、ツリーハウス的な簡素な物を想像してたわよ……。ここだって、旧貴族街だし、あなた達って、裕福な生まれの子だったのね。」
「違うよ、この間ミヤビのダンジョンで一攫千金を当てたからだよ。そういうシャナだって、これまでのキャリアで結構稼いでいるんじゃないの?」
「私は、稼いだからと言って、浪費することは出来ないのよ。私にはどうしても手に入れないといけないものがあるの……。」
「どうしても手に入れないといけないものって?」
「私には一人姉がいるの。両親はもう他界しているから、たった一人の家族。でも、そのお姉ちゃんも、医者や魔法では治せない病にかかっていて、もう、長くはないの……。」
アイラがシャナの肩に手を伸ばそうとするが、思いとどまり手を引き、その手を自分の胸に当てて、視線を落とす……。
「そうだったのね。ごめんなさい、辛い話をさせてしまったわね……。」
「いいのよ、気にしないで。だから、私はなんとしてもお姉ちゃんを治したい。その為には、究極の治癒薬と呼ばれる、濃縮エリクサーをどうしても手に入れたいの。あなた達の申し入れは嬉しいけど、あなた達二人を、こんなことに巻き込むわけにはいかないわ。」
シャナは俯いて、両拳を固く握りしめ、肩を震わせていた。
「あ、それって、ちょっと待って。」
僕は、二階のお宝倉庫にしまっていた薬の瓶を探し出して、リビングにいるシャナのところに持って行った。
「探してる薬ってこれでしょ?」
僕が濃縮エリクサーの瓶を差し出すと、シャナは大きく目を見開いて、両手で自分の口を覆った。
「な、なんで……。持ってるの!?」
「塔でドロップしたんだよ。よかったら、これをお姉さんに使ってあげてよ。」
僕が差し出した濃縮エリクサーの瓶を、シャナは両手でそっと押し戻して言った。
「そんなわけにはいかないわ、こんな高価なものを……。」
「気にしないでよ、差し当たって僕たちには必要なものじゃないし、必要な分を使ったら、残りは返してくれればいいよ。足りなかったら言ってくれればまだあるし。」
「まだあるの!?」
「うん、10本セットで出てきたから、あと9本あるよ。」
「これ1本売るだけで、10年は遊んで暮らせるのよ?」
「あぁ、僕たち、ミヤビのダンジョンで、一攫千金を当てたって言ったでしょ。あれって二家族全員一生遊んで暮らしてもたぶん使いきれないくらいの稼ぎになったから、お金には全然困ってないし、そんなにあったらむしろ困るよね、普通。だから、薬のことは気にしないで、お姉さんに使ってあげてよ。」
シャナの瞳から、大粒の涙があふれ出し、漏れ出る嗚咽を抑えようと必死に両手で口を押えていた。
「ありがとう、ありがとう、ありがとう、ありがとう。」
「もういいわ。大丈夫、お姉さんもきっと助かるわ。」
アイラがシャナの震える身体を優しく抱きしめる。
「あなたはもう、私たちの仲間よ、もう一人じゃない。大丈夫、大丈夫よ。」
シャナは声を抑えるのを諦めたように、大きな声で泣いていた。
僕はそんな二人を見つめていると、不謹慎だとは思うけど、ほんの少しだけ、口元が緩むのを感じてしまった。
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次回は1月23日(金曜日)に更新予定です。
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