14話 流星の希い
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試練の塔 25階層フロアボス部屋
アイラが足を止めた瞬間、部屋の奥の方の地面がわずかに蠢いたように感じ、僕は違和感を感じた。
よく見るとそれは、地面の様に見えて、実は蔦が床を埋め尽くすように敷き詰められている様子だった。
「アイラ気を付けて!あの蔦、なんとなく嫌な感じがする。女の子に反応するタイプの魔物かもしれないよ!」
「トトも年頃の男の子ね、エッチな妄想しちゃって!」
「いやいやいや、違うってば!本で読んだんだよ、女性の汗を嗅ぎ分けて狙う魔物がいるって……。」
言い終わるが早いか、アイラの悲鳴がボス部屋内に響き渡る。
「きゃあああああっ!」
「ほら、言わんこっちゃない……。」
アイラの足元から伸びた蔦は、彼女の足元から肩口に至るまでを一気に飲みこみ、あっという間に頭の先まで絡みついていた。
身体を締め上げるというよりは、撫で上げるような動きで、気味の悪さだけが際立っていた。
「トトごめんて、呆れてないで助けてよぉ~~~!」
「はいはい、動くと怪我するかもしれないから、じっとしててね。」
蔦が、アイラの身体全体を巻き取るまで、1秒もかからなかった。
更に、後から後から何十本もの蔦が絡み合いながら、アイラの全身を巻き上げていくので、一本づつほどこうとしても永遠に終わらないだろうことは明白だったので、僕はお尻を付いて、地面を滑りながら、ビームサーベルを抜いて、一気に絡みついている全ての蔦の生え際辺りをまとめて刈り取った。
僕はビームサーベルで焼き切った切断面を確認すると、蔦に含まれる油分で過剰に焼けているとみて、武装をバズーカに換装し、焼夷弾を装填した。
「あとは自分でなんとかしてね。僕はこいつにとどめを刺すよ。」
僕は、言うが早いか、狩り取った蔦の切り口辺りをめがけて、装填した焼夷弾を、一発お見舞いした。
着弾した弾は、一気に燃え広がり、大きな火柱と化して、辺り一面を火の海に変えた。
「このメジュオラって魔物は、植物系の魔物で、なおかつ、この蔦の先端の膨らんでいる部分は、可燃性の油分を多く含んでいるらしいからね。」
「あぁ~もう、ほんと気持ち悪い。なんなのコイツは。一瞬で巻き付かれたと思ったら、その後はジワジワモゾモゾと、きつく締め付けるでもなく、揉みしだかれている様な感覚だったわ。」
「それを生身でやられると、骨が砕けて柔らかくなるまで揉まれて、着衣や鎧なんかも全部はぎとられて、そのまま飲み込まれるらしいよ。」
「うわぁ……。なんか、私的にはちょっとエッチな感じになるんじゃないかと思ったけど、そういうニュアンスは一ミリも無いのね……。ただグロいだけじゃない。」
「女性を先に狙うのも、女性の肉が柔らかくて、メジュオラにとって美味しいからなんじゃないかな。別に男性が狙われないわけではないしね。」
アイラは変顔をして肩をすくめると、自ら気持ちを切り替えるように言った。
「それじゃあ、とっとと次のフロアに行きましょう!次はどんなボスが出るのかしら?」
「次は、26階層か。26階層はね、明確にコイツがボスというのは出ないみたいだよ。ただね、少し厄介といえば厄介かもしれないよ。」
「厄介?」
「うん、ここには角と牙の生えた豚のような魔物が沢山いて、人間を見ると、一直線に突進してくるんだよ。必ずしも倒さないといけないわけじゃないけど、走り出したら止まることも曲がることも出来ないようで、壁に激突して死ぬか、獲物に激突して殺すかの2択という、なかなか極端な魔物のようだよ。」
「それじゃあまるで暴走なんとかね。」
「生身で行くなら、相当な脅威だとは思うけど、プラモを纏っていれば、そうそうダメージは受けないだろうね。ただ、足元を猛スピードで駆け抜けられるから、文字通り足元をすくわれないように注意しないとね。」
僕たちが26階層へ足を踏み入れてすぐに、背後から風圧を感じて振り返ると、いきなりさっき話をしていた魔物“ガルバロン”が突進してきた。
「危なっ!」
「アイラ気を付けてね、ガルバロンは壁か人に当たるまでは止まらないから。」
「階層に到達した途端に、あんな勢いで突進されたんじゃ、危なくて仕方ないわね。」
「事実、この階層での事故率は、階層に入りたての、出会い頭の事故が一番多いらしいよ。不意を突かれるんだろうね。来るとわかっていれば避けられるんだろうけど。」
「そうでしょうね、まぁ、プラモを纏っていれば、当たったところで、大したダメージでもないのでしょうけど、生身でこんなのに、このスピードで追突されたら、たまったものじゃないわね。」
「そうだね。」
僕たちは足元に気を付けながら、地図を頼りに最短ルート進む。
もう、数回角を曲がれば27階層行の階段が見える、そう思った瞬間、視界の端で何かが跳ねるのが見えた。
振り返ると、遠くでプラモを纏った人が、ガルバロンに次々と突き上げられていた。
完全に意識を失っているのか、無抵抗のまま宙に放り上げられ、成すがままにされていた。
「アイラ、あのままじゃ中の人の命が危ないかも。助けよう。」
「わかったわ!って、ちょっとトト、あれって、この間、私たちに絡んできた女じゃない?」
「あぁ、確かに色がピンクだね。あの時の娘かも。」
「ふんっ。あれだけ威勢よく絡んできておいて、アレじゃあザマぁないわね。」
「まぁまぁ、そう言わないで。あの様子だと、放っておいたら死んじゃうかもしれないから、急ごうよ。」
「そうね、後でう~んと嫌味を言ってやりたいから、死なれたら元も子もないわね。」
「あはははは……。(汗)理由がえげつないね……。」
僕は正面へ、アイラは右へ、声を掛けなくても、お互いの動きはわかっていた。
今まさにピンク色のプラモを纏っている娘に突進しようとしているヤツをビームライフルで撃ち抜いた後、左に曲がって、その先にいるガルバロンも全て打ち抜き、ビームの光の終息と共に消えていく。
振り返ると、アイラも難なくガルバロンを片付け終わっていたので、僕はすぐさま赤いプラモを纏った娘に近づくと、完全に意識を失ったのか、プラモの装着が解除されてしまい、生身の状態になってしまった。
「まずい、ここでこの状態は危険だ。アイラ、25階のボス部屋まで引き返して、そこからラウンジに飛ぼう。今ならまだメジュオラもリポップしてないだろうから、魔法陣も残っているはず。」
「わかったわ。この子は私が運ぶわ。トトは前をお願い。」
「任せて。でも、背後だけは気を付けてね。」
「了解よ!」
僕たちは、25階のボス部屋に出現していた、帰還用の転移魔法陣まで、無事にたどり着くことが出来たので、急いで20階のラウンジに移動した。
メイドホムンクルスの手を借りて、休憩所とは別室になっている、医療用ベッドのある部屋へと少女を運び込む。
医療用ホムンクルスの診断では、ガルバロンとの追突による脳震盪と、その際に出来た切創や、靭帯損傷、骨折等はあるものの、命に別状はないとのことだったので、持っていたポーションを飲ませ、そのまま休ませることにした。
僕たちは、彼女を置いたまま進む気にはなれなかったので、彼女が回復するまで、そのままラウンジで休憩を取ることにした。
一時間ほど経った頃、僕たちがラウンジで軽い食事を摂っていると、意識を取り戻した少女が、ふらりとラウンジの休憩スペースに姿を見せた。
「あなたたちが助けてくれたみたいね、ありがとう、お礼を言うわ。」
「どういたしまして、困った時はお互い様です。」
「ありがとう……。」
「ふんっ!今日は弱ってるみたいだから勘弁してあげるけど、この間の事忘れたわけじゃないんだから、次に会った時は覚悟する事ね!」
「ちょっと止めなよアイラ、ごめんね。ほら、アイラも謝って。」
「何よトト、この間から、この女の肩ばかり持って!」
「僕が彼女の肩を持ってるんじゃなくて、アイラが過剰に反応しすぎなんだよ。」
少女は視線を落とし、小さく息を吐いた。
「あの、この間はその、ごめんなさい、私が悪かったわ……。あなたたちの実力や装備を目の当りにしたら、その、ちょっと焦りを感じたというか、それで、ついイライラちゃったみたいで……。」
「僕たちは気にしてないので、あぁ、あなたも気になさらないでください。」
「ちょっとトト!勝手に私を気にしていないグループに含めないでよ。でも、まぁ良いわ、今日はあなたも大変だったろうから、このくらいで勘弁してあげるわ。」
「あの、もしよかったら、名前を教えてもらえませんか?僕はトトで、彼女はアイラって言います。」
「私はシャナ。この辺りでは、『赤い流星のシャナ』って呼ばれてるわ。」
「あ、赤い流星!?」
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