11話 チッチとクック
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「ねぇトト、今の声、どこから聞こえたの?」
アイラが眉をひそめる。
僕も周囲を見回したが、声の主の姿はどこにも見当たらなかった。
「クックが大きい声を出すから人間に見つかっちゃったじゃない!」
「チッチ、やっと外に出られたのよ、声の加減なんて忘れちゃったわよ。それに、普通の人間には、私たちの姿なんて見えやしないわ。」
その瞬間、小さな光の粒がふわりと舞い上がり、僕たちの目の前で形を成した。
「え?チッチ、この人間たち、視線がめっちゃこっち向いてるんだけど、もしかして見えてるの?」
「そんなわけないわよクック、妖精が見える人間なんて聞いたことがないわ。」
光の中心に見える妖精は、体長3㎝にも満たない小ささで、驚いたように目を丸くした。
僕たちは、光の中心にいる自称妖精たちに驚きを隠せずにいた。
「ねぇ、トト、さっきからこの小さいの、妖精って言ってるけど、妖精って、妖精のことで良いのよね?」
「僕に聞かれても……。直接この二人?二匹?に聞いてみた方が良いかもしれないよ。」
すると、赤と言うか、オレンジというか、暖色系の色主体の方の妖精が、その赤味がかった小さな顔を、更に真っ赤にして、僕の方を指さして言った。
「ちょっと、そこの人間!二匹ってなによ二匹って、お二人様って言いなさいよ、人間の分際で!!!」
「ちょっとチッチ、人間の分際もなかなか失礼だと思うわよ。」
「クック、あんたは甘いのよ!甘い果実のジュースに甘いクリームをかけたうえから更に甘いアイスをトッピングしてあるヤツよりも、更に甘いわ!」
「チッチ、あなたの大好物のそのスイーツを考えたのは、人間じゃなかったかしら?」
「あれは別格よ!だってあの人間、最終的に神化したじゃない。あの方とこんなチンチクリンどもを一緒にしたんじゃ、それこそ失礼ってものだわ。」
「あの、僕たち妖精っていうのが、どういうものなのか、まったく知らないので、失礼だったならあやまります、ごめんなさい。」
「ほら、素直な良い子たちじゃない。それに、私たちが見えるって時点で、かなり珍しい人間なんじゃない?」
「まぁ、たしかにクックの言う通り、素直さは認めるわ。あと珍しいって部分もね。あなたたち、魔法の契約はどの精霊としているの?」
「「契約?」」
「え?精霊と契約してないの?」
「アイラ精霊との契約って何かわかる?」
「知らないわ、聞いたことも無いわよ。魔法って、スクロールの呪文を暗記して使う物じゃないの?」
「あらあらあら、この世界の魔法は衰退してしまったのかしら。精霊との契約をしないなんて、もしかして、私たちが長い年月宝箱の中に捉われていたから、精霊との契約の取次に問題が起きてしまったのかしら。」
「チッチ、それはないでしょ。精霊が捉われたのならまだしも、私たちのような中継役の妖精なんて、そこら中にうようよいるじゃない。いるわよね?あれ?そういえば、他の子達はどこに消えたのかしら。」
「あの、チッチさんとクックさん。ちょっといいですか?」
「「何?」」
「この世界の魔法は衰退してるんですか?」
「まぁ、あなたたちの話だけじゃなんとも言えないけど、たまたまあなたたち二人が知らなかっただけってこともあるでしょうしね。でも、魔法は、本来単純な構造ではないから、例えば火を出すにしても、火を出すという現象を再現するための、魔法的な構文というものが存在していて、それがあなたたちの言う呪文のようなものね。でも、例えばお湯を出すという魔法を使いたい場合、水を出すという魔法と、火を出すという魔法を同時に発現させる必要があって、それを可能にするには、口が二つ必要になるでしょ。でも、片方の魔法を呪文なしで使えるとしたらどう?お湯を出せるじゃない。その為に精霊との契約が必要なのよ。」
「お湯を出す魔法なら、お湯を出す魔法のスクロールがあれば、それを暗記して唱えるだけで出せますけど……。」
「「はぁ?」」
「何よそのスクロールって。」
「えぇと、大分昔からあるものみたいですけど、あれ、そういえば、スクロールの生い立ちについて、教科書に何か書いてあった気が、ちょっと待っていてもらえますか?」
「「かまわないわ。」」
僕は家の自室の方に置いてある学校の教科書をとりに戻った。
「それにしてもクック、私たちが宝箱に捉われている間に、世の中も大分様変わりしてしまったのかしら。」
「そういえばチッチ、神の妹を名乗る何とかセージが、魔法について、なんだか色々とやっているとかやっていないとか、噂だけは聞いた記憶があるわね。」
「妖精さん達、ちょっといいかしら。昔の魔法がどういうものかはわからないけど、現代の魔法は、スクロールがあって、魔力さえ持っていれば、誰でも使えるようになっているし、例えば魔法で、異世界から物を召喚することだってできるわ。ちなみに、火を出すとか、水を出すとか、風を出すなどの単純な魔法はもとより、さっき言っていたお湯を出すとか、傷を治すとか、毒性のある物を解毒するとかの、簡単な生活魔法であれば、おそらくスクロールを見るまでもなく、何方でも使うことが出来るわ。」
「「何ですって!?」」
「大変よクック、私たちの存在意義が薄れてしまっているわ。」
「そうねチッチ、だからさっきから他の妖精の気配がないのかもしれないわね。」
「お待たせしました。」
僕は教科書を片手に、そう言いながら部屋に入ると、お二人様の妖精たちが、血相を変えて近づいて来た。
「それで、魔法について書いてあるのはどこ?」
「はい、えぇと、ここです。」
「ふむふむ、なるほど……。まったく読めないわ!あなた、読んでちょうだい。」
「あ、はい……。えぇと、《現代魔法の生い立ちについては、諸説あるものの、最も有力とされているのが、全能神キラが作り上げた魔法体系を、神の妹であり、エバンジェリストでもあったシェラ・パトラムがスクロールとして残した、という説である。》だそうです。あ、ちなみにこれ、家に有った録音用のオートスクロールです。」
「ロクオンって何よ。それに、オートスクロールって。」
「あぁ、まず、録音というのは、音を記録することで、オートスクロールは、開始と終了時に魔法陣に触れることで、録音を開始して、停止を押すまではずっと録音し続けてくれるものです。これは単純にひたすら録音するだけのものだけど、中には、録音する領域が幾つもあって、録音し終わった領域を再生させながら別の録音領域に録音することが出来るものなんかもあるらしいので、多重に録音することも出来るんですよ。音楽SSなんかはこの多重録音オートスクロールを使ったりするんだと思います。」
「どうしましょうクック。」
「どうしようもないことだってあるわチッチ。」
「これ以上考えたら頭が燃えてしまいそうねクック。」
「そうね、だからもう考えるのは止めましょうチッチ。」
「あの、お話し中に申し訳ないんですけど、あなたたちお二人様は、これからどうするのですか?」
「どうするか?とはどういう意味なの?」
「えぇと、そのままの意味です。例えば、仲間の妖精たちの元へ帰るとか、宝箱の中に戻るとか、ここに居つくとか、選択肢は色々あると思うんですが。」
「「え?」」
「え?」
「宝箱から出たんだからお前たちの所有権は俺にあるんだ!とか言わないの?」
「いや、出たのが物ならそうなんでしょうけど、妖精さんが出てきたのでは、妖精さんたちの意思が優先されるのでは?」
「「底抜けの善人ね……。」」
「でしょ?」
「ちょっと、アイラまで……。」
「いいわ、私たちもこの世界がどうなったのか知らない部分も多いから、それを知りたいってのもあるし、あなたたちに対する興味も尽きない、だから、あなたたちの仲間になるわ。いいわよね?クック。」
「えぇ、ただし、私からも一言いっておきたいんだけど、私たちは小さいからといって、あなたたちのペットになるわけじゃない、あくまでも仲間という立ち位置であることだけは忘れないでね。」
「わかりました。チッチさんとクックさんよろしくお願いします。」
「「さんはいらないわ。」」
「じゃあ、よろしく、チッチとクック」
「「「よろしく!」」」
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