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「お嬢様、今日こそお勉強は?」
「いいです」
「そうですか…お嬢様はせっかく神童だというのに、もったいない」
「そうですか」
お勉強より弟との時間を優先する私に、ウルクス先生は残念そうだ。
まあ、ともかく。
私は弟を愛でるのに忙しいのでそんな暇はない。
そうすると、先生は言った。
「ならば、お嬢様が坊ちゃんに詩を読み聞かせるのはどうです?坊ちゃんにとっても、幼い頃から教育を受けられるのは悪くないでしょう」
「乗った!」
弟のためになるなら話は別だ。
私は弟が一歳になるまで、詩の読み聞かせを行なった。
結果、私まで詩をいくつも覚えてしまった。
そして、詩を読むのがちょっと好きになった。
弟はというと。
「きゃっきゃっ」
「フェリシタスも詩が好きなんだねぇ」
詩を読む私に毎回嬉しそう。
そんな弟を見ると、ついつい気が乗って詩を読み聞かせまくってしまっていた。
ぼくはあかちゃんのころからのきおくがあります。
そのきおくにはいつもねえさまがいます。
ねえさまはいつもおうたをうたってくれました。
だっこして、ねんねできるようにあやしてくれました。
だからぼくはとうさまとかあさまなんかよりも、ねえさまがだいすきです。
そんなねえさまは、あるときからしをよみきかせてくれれるようになりました。
だからぼくはしをおぼえました。
しがだいすきになりました。
ねえさまのよんでくれるしが、だいすきです。
ねえさまはときどきせんせいとなにやらはなします。
せんせいはねえさまとぼくのじかんにわりこんでくるからちょっといやです。
でも、ねえさまがしをよんでくれるようになったのはせんせいのおかげらしいです。
だからぼくは、せんせいをゆるしてあげるのです。
私はとあるやんごとなき方の家庭教師に選ばれた。
ところがそのお方は全く持って勉強にやる気がなく、弟君ばかり構われる。
が、歌の才能があり読み書き計算とマナーは完璧、編み物や刺繍も完璧と来たらこれ以上才能を無駄にするのは勿体ない。
そこで私は弟君に勉強を教えることを姫君に提案した。
そうすることで自然と姫君にも知恵がつくと思ったから。
それはどうやら、大正解だったらしい。
お嬢様は、やがて詩を覚えてしまわれた。
そして詩を楽しんでいらっしゃる。
いやはや、将来が楽しみだ。




