魔女の正体
必死で、
無我夢中で、
ただ植物の兵士を薙ぎ払った。
倒れ征く仲間の悲鳴や呻き声を聞き流しながら。
意識が、遠のく瞬間もあった。
共に育ち戦士として戦ってきた相方の白熊が隣で倒れた。
横目でそれを確認するも、彼はニヤッと笑いながら木々に埋もれていく。
その姿を見て黒熊は、雄たけび共に持っていた斧を周りに振りかざし
植物の兵士を一掃した。
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目の前にポツリと大きな古びた館が一つそびえ立つ。
セツナは、ゆっくりすーっ。と深呼吸をして、館の扉を開く。
館の扉を開けた先には、広々とした玄関ホールで、
灯りと言うモノは、陽の光ただそれだけの薄暗い印象だった。
足音を立てずセツナは、辺りを確認しながら館へと足を踏み入れた。
すると右の扉から何かが出てくる音がした。
柱に、すぐさま姿を隠し
その音の正体を陽の光を頼りに探った。
その姿は、この国で初めて目にした4足で動く動物だった。
その姿を見たセツナは、驚きを隠せなかった。
自分の育った国では、観た事もないその生き物。
どちらかと言えば、植物の兵士や、動物の兵士達の姿の方が、馴染みがあったのだ。
「無事に、元の姿に戻れて良かったね。」
2匹の動物の後に、出てきた人物は、
セツナから観れば、これまた初めて見る程に美しい姿をした。
人間だった。
この国には似合わなく。
逆にそれが、不気味にまで思えた。
アイツが魔女に、違いない。
そう確信したセツナは、凪の剣をぎゅっと握り。
ゆっくりと魔女の動きを観察し、攻撃を与える隙を探していた。
そしてその時が、来たのだ。
魔女が、動物達を外に出した瞬間。
魔女の姿が何処にも見当たらず柱の陰から出た瞬間に
魔女はセツナの目の前に現れ
セツナは剣を魔女目掛け振りかざした。
がしかし魔女は、ツタを束にして大きな盾を作り
セツナの一振りを防御した。
「なんだい・・・。まだいたのか。」
魔女は、次にセツナが持つ剣にツタを絡ませ、
そのままセツナを拘束した。
「クソッ!離せ!!」
「離せは、ないだろ・・・。そっちから襲い掛かってきたのに。」
魔女は、自分を襲い掛かった正体を黙視した。
そして魔女は、「人間ッ!?」っとぎょっと目を見開き驚いた。
「本当に、人間かい!?君は??」
「そうだよ!何に見えるんだよ!?」
すると魔女は、嬉しそうにセツナの顔を触りほっぺたを引っ張り始め
ブツブツとセツナを研究し始めた。
「おい!わかったら放せよ!!」
「いやいや、万が一もある。さっきの君の行動は、まるで獣だったからね」
「あんたが、魔女なんだろ!?」
「魔女?」
今度は、不思議そうな顔で、セツナを見てこう言った。
「僕は、ランギク。君と同じ人間だ。」
「あっ!そうだ!じゃあ凪って知ってる?僕とアンタと同じ生き残った7人の子供らしいんだけど・・・」
「凪?それも人間かい?それとも動物かい?」
「えっ?人間だけど・・・。」
「・・・すまないね。だとすると僕は、その人を知らない。」
「・・・そっか。」
きっとまだ記憶の断片が、凪位には、ないのかと。
セツナは、ランギクの表情を見て想った。
「さっきのは?」
「うん?あー。動物の事かい?・・・この森はね。元々彼等の物だったんだ。だが、ある日を境に、彼等は、力を持ち僕を狙い始めたんだ」
「――元々は??」
「そう。僕が、物心ついた頃には、植物と動物に育てられたんだ。この森で。」
ランギクはそう言って右手にぱっと花を咲かせそれを見つめてつづけた。
「だから僕は、植物に力を与えこの森を守ってきたんだ。そして傷ついた動物達を元の姿に戻して、この森に帰してきた。」
「えっ?じゃあなんでリクべべが、話に来たのに追い返したり、動物達が、俺を襲ったりしたんだよ!?」
「・・・リクべべ??」
その名を答えた瞬間だった。
セツナの目の前に、リクべべが現れ。
一瞬の内にリクべべの剛腕が、ランギクを吹き飛ばしたのだ。