化物
◆ー100年前
王国から追われた殆どの魔法使い達は、
魔法使いの王国へ戻っていた。
王国の一番大きな建物。その場所で五大賢者は、対策を練っていた。
「黒魔道士め・・・。魔法界を追放された腹いせに人間の味方をするか・・・。」
「・・・厄介な奴だ。奴は、たった一人で我々5人と渡り合う化物だ」
「どうする?このままでは、我々魔法使いは、全滅だぞ」
不安を抱えた会議の中、一人の賢者が口を開いた。
「今は、闘うべき時ではない。」
その言葉に対し、一人の賢者が、激怒し言い返した
「闘うべきじゃないだと!?では、黙ってやられろと言うのか!?」
「違う。時期を待つのだ」
「“勝つ為に”」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「生き残った7人の子供?」
セツナはリクベベに問いかけた。
「そうか。凪から聞いていないのか?」
リクベベはまた顎鬚をボリボリと掻き答えた。
「・・・100年前。“魔女狩り”を企てた国が、黒魔道士に力を借り、我々魔法使いを全滅させたのだ」
「・・・黒魔道士・・・。」
「そう。そして我々賢者が出した答えは、凪や君達を含む7人の子供達に託すこと。」
その言葉にセツナは、蘇った凪のの言葉を思い出した。
「お前なら必ず黒魔導士を倒せる。俺が言うんだ!心配すんな!」
「・・・凪。」
「落ち込んでいる暇などないぞ。事態は、深刻だ。」
「でも、僕たちに託すって決めたのに、なんでその魔女を倒そうとしてるんですか?」
その一言に、リクベベは困った表情で首を傾げながら言葉を探していた。
「最初は協力を持ち掛けたさ・・・。しかし奴は、吾輩の問い掛けに応じず。仕舞にゃ植物の兵隊で吾輩等を襲い掛かってきよってな・・・。」
「そうなんですね・・・。」
「そう。しかしそんな中お前さんが吾輩の元へやってきた!こりゃチャンスだ!」
「・・・え!?でも僕には魔力が・・・」
「安心せい。」
そう言ってリクベベは、凪の剣を持ち眺めている。
「この剣さえあればお前も凪の魔法を一時的に使うことが出来る!それに・・・」
リクベベが、手を2度叩くと、先程集会所を出て行った動物達がゾロゾロと入ってきた。
「優秀な兵士達を紹介しよう。」
セツナの前に、5体の動物兵が整列する。
セツナをこの村に招いた ゴリラの兵士。
スピード勝負には自信を持つヒョウの兵士。
圧倒的攻撃力を持つライオンの兵士。
そしてこの集会所に入った時にいた2匹の熊の兵士。
「こやつ等は、吾輩が誇る最強の兵士達だ。」
「たった7人で魔女の元まで辿り着けるんですか?」
セツナの一言にライオンの兵士が「失敬な男だ。」と
威嚇しながら答えると続けてゴリラが
「負けっぱなしでは、終われんよ」と、高らかに笑う。
圧倒されるセツナの肩をリクベベが叩きニッコリと微笑み嬉しそうに呟いた
「全てはお前にかかっている。それに・・・」
「辿り着くのだ。でなければ、これだけの兵を出す意味がない。」
そう言って、剣をセツナに渡しもう一言添えたのだ。
「“勝つ為に”」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
時同じ頃、
魔女の森入口付近
100体以上の植物の兵隊が死守する草原の奥に在る
棘の道を抜けた先に、ポツリと禍々しい棘が巻き付き建っている
魔女が住むう館。
植物の兵隊に、引きずられて
その場に、放り投げられる3匹の動物兵。
彼らはゴリラ達とは別の動物兵で、3匹共に狼の姿をしている。
「性懲りもなく。また此処に来たのか。・・・全く。困った動物だ」
動物たちは、その姿を見て震えあがった。
右腕から全身にかけ、植物が身体を覆っていき
自分達よりも、大きく姿を変えて行き
その姿は、まるで化物。
恐怖を感じた瞬間に、3匹の狼を植物が覆いかぶす。
「今、楽にしてあげるからね。」
その男は、動物達から、“魔女”と呼ばれ
女性と見間違える程の長髪と美しい容姿。
その男の名は、“ランギク”
――――――――――――――――――――――――――――――――――――