森の国
=森の国=
此処は、木が踊り。
花が歌い。
草が飛び跳ね。
植物達が、楽しそうに暮らす場所。
『どうなってるんだ?』
セツナは、先程までの出来事や凪の安否、そして今
目の前に広がる景色を
理解するのに必死だった。
観た事のない物達が、人間の様に動き回っている。
シュルルッ。
と何か足元で音がした。
足元を確認すると
木々のツルが、自分の足元に巻き付き始めていた。
気づいた瞬間、セツナの足を引っ張り体制を崩してしまうと
前方からセツナを木の傭兵達が、襲い掛かってきた。
『ヤバいっ!』
必死に足に絡みついた木々を手で引き裂こうとするも
頑丈に巻き付いていて中々取れない。
辺りに何か斬るものがないか確認するとそこには、
凪が使っていた剣が落ちていた。
剣に手を伸ばすも届かず身体が押さえつけられ身動きが取れない。
『もう駄目だ。』っと諦めかけたその時だった。
一気に木の傭兵達を、薙ぎ倒す3匹の動物たち。
その姿もまた
人間の兵士の様で、刀を持ち二足で行動し、
自分よりも立派な服をまとっている。
その動物達を認識した時
セツナに絡みついた木々を切り裂き
1匹のゴリラが、セツナを背負い
剣を回収しその場から走り去る。
他の動物2匹は、追ってくる植物達を剣で切り裂きながら
ゴリラを援護している。
「馬鹿か貴様ッ!!何故 魔女の森なんぞに近づいた!!」
「―—僕は。」
喋る動物、今起きている状況が把握出来ず混乱する
セツナにゴリラは、セツナの姿を確認し言葉を続けた。
「それに、なんだその姿は・・・。まるで人間じゃないか!!」
「・・・僕は、人間だ!!それに此処は、何処なんだよ!あれは、なんだ!?」
「人間だと・・・。笑わせるな。この国の人間は、ほぼ滅んだのだ!!」
「――滅んだ?」
呆気にとられるセツナの表情を確認し
ゴリラは静かに問いかけた。
「なんだお前、他所の国から来たのか?」
『他所の国?ここは、俺の知ってる場所じゃないのか・・・?』
セツナは一旦落ち着きを取り戻し、言葉の通じるゴリラに問いかけた。
「――あんたは、なんだ。それにさっきのは・・・。」
「・・・。」
ゴリラは少し間を開け、深刻そうに話を始めた。
「この国の名は、“ディープフォレスト”」
「我々は、この先の村で暮らしながら魔女討伐を任せられた兵士だ。」
「・・・魔女?」
「そう。あいつ等は、この国に存在する人間の1人。魔女が作り出した 植物の兵士だ」
「植物の兵士? 俺が知ってる植物は、喋ったり襲ってきたりしないはずだ。」
「そりゃそうさ。奴らは植物以外のモノを狩る為だけに、魔女が生み出された感情を持たぬ兵士だ」
確かに今も追いかけてくるあの植物達は、何を想ってる様子もなく
斬られても痛みを叫ぶこともなく。
ただ只管に僕や動物たちを追ってくる。
「他の人間達は?」
ゴリラはまた大きく空気を吐いて答えた。
「この国の人間は、魔女。そして我々の村を作った村長の2人だけだ。」
「・・・2人だけ?じゃあ他の人間は、どうなったんだ?」
「・・・。呪いによって滅ぼされた。」
「――え?」
「我もそう。さっきの奴等もそう。それに。」
「植物の兵士達も。元は、人間だ」
「元人間?!」
大声で驚く僕に、ゴリラはビックリした様子だったが
心配を和らげるように答えた。
「もうすぐ我々の村に着く。村長は凄い人だ。知識も言葉も我々動物に教えてくれた。君も聞くと言い・・・それに。」
ゴリラは、少し言葉を詰まらせたが、セツナの純粋な様子に言葉を続けた。
「あの方は、魔女に対抗できる力を持っている・・・。かつて賢者と呼ばれた一人の魔法使いだったらしい。」




