託された想い
◆ー100年前
魔女狩り戦争が始まり、半月が過ぎた頃
世界に生き残る魔法使い達は、
魔法界の秩序を司る五大賢者の元へと集まっていた。
半日の会議の末に賢者達が下した決断。
《この先、魔法界を担う7人の子供達に未来を託す》
勿論反対した魔法使い達が多半数。
その多くの魔法使い達は魔法界を去って行った。
魔法使いを引退しひっそりと暮らす者もいれば
国王軍と黒魔導士に挑み敗れていく者達。
更には国王軍に加担して黒魔導士と共に魔法使いを狩る側に回った者達。
一方で一人の賢者が、
7人の子供の内、魔法学校で優秀な成績を収めている3人を集めてこう言った。
「いずれ魔法界を脅かす・・・。大きな闘いが起こる。」
それは黒魔道士と王国軍による“魔女狩り”ではない事。
そしてその時に備えて 3人には、大いなる魔法を授ける為、そして
大きな使命を伝える為に呼んだとの事。
「・・・と言われても」
困惑した一人の少年が、賢者に嘆いた。
そして賢者は、言った。
《―――を護れ。―――――。》
《あの子は、今はそれほど魔力もない。魔法使い見習いだが、“覚醒”すれば、いずれ魔法界を救う存在となるだろう。》
そう言って賢者は、少年の肩を叩いた。
「え?俺ですか??“ガウラ”も“●●”もいるのに!?」
《お前にしか出来ない頼みだ・・・。―――を頼む》
《―――凪。》
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決着は、一瞬で在った。
凪の剣が、風を纏いその風が、男を撃破した。
風を自在に操るその姿は、まるで魔法使いの様に。
住民達も、ざわつき始めた。
凪のその力について。
「・・・凪?」
恐る恐るセツナは、凪の方へ一歩踏み出し問いかけた。
凪は、セツナの方へ振り向き
いつもと同じ笑顔を見せた。
一瞬だった。
白のローブを着てフードを被った者達5名が凪の背後に現れ
凪は、剣をその者達に振りかざす。
しかし一人が右手を前に出した途端、凪の動きが止まった。
その瞬間住民達の時間が止まり
その場で動けるのは凪含め5名のローブの者達だけとなった。
「あんた達・・・まさか。」
凪の一言に別の人物が凪の耳元で何かを囁いている。
その後、凪は剣を振りかざすのを止め何か納得した表情で
ローブの者達に頷いている。
先頭のローブの者が魔法を解除しようとした時だった。
一人のローブ姿の者が何かに気づき構える。
その目線の先へ凪も目線を映した。
「なんだ・・・この・・・」
…
……
………
……
…
セツナが目を覚ますと自分は横たわっていて
激しい頭痛がする。
「・・・痛て。」
ゆっくり身体を起こして辺りを確認すると、辺りは何者かが暴れた様に
建物が、破壊され周りにいた大人達も同じように倒れ込んでいる。
「どういう・・・事?」
セツナが凪がいた場所に目線を映すと、そこにも凪が倒れている。
「凪!?」
凪の元へ駆け寄って身体を揺さって何度も声をかけても返事がない。
先程よりもダメージを負っており凪の周りには、大量の血が広がっている。
「凪!!しっかりして!!凪!!」
「お願い・・・目を覚ましてよ・・・。」
凪の右腕が広がった血に触れた瞬間だった。
広がった血が魔法陣となり
セツナの目の前に扉が現れ、扉が開き扉から吸い込まれるように突風が吹く。
セツナは飲み込まれまいと凪を抱きしめ
地面に這いつくばるも
呆気なく2人は、扉に吸い込まれてしまう。
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記憶。
時に自分の身に覚えのない出来事が、
まるで本当に起きたかの様に、鮮明に頭を過ぎる。
あれは夢で見たのか。将又、忘れてしまっているのか。
僕の不確かな記憶の淵に、映る記憶は、
優しい笑みを浮かべ いつも僕の側にいて、僕を護ってくれた兄の様な存在。
「●●●―、お前なら必ず黒魔導士を倒せる。俺が言うんだ!心配すんな!」
確かに聞こえた。そして思い出した。
彼の名は、凪。
一番最初に、黒魔道士に殺された。仲間の一人。
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目を覚ますとさっきまでいた場所とは、違っていた。
その場所は、観た事もない木々と言う物が踊り、聞いた事しかなかった花と言う物が歌い辺りが緑で覆われた場所。
いつも凪の話を聞いて、想像していた景色。
=森の国 =