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この復讐は魔法が解けるまで。  作者: ウキイヨ。
第1章 セツナと凪
2/11

世界が変わって1年

――――――――――――――――――――――――――――――――――


〖・・・け。〗

〖た・・けて・・・・、助けて・・・〇〇。〗


記憶。

時に自分の身に覚えのない出来事が、

まるで本当に身に起きたかの様に鮮明に頭を過ぎる。

あれは夢で見たのか。将又(はたまた)忘れてしまっているのか。


僕の不確かな記憶の淵に映る()()()()は、

真っ白い空間で人形のような少女が、頬に泪を流しながら僕に助けを求める映像。

その子の名前も、何故そのような場所なのかも

それ以上は、覚えていない。


けれど、その景色と声は、どの記憶よりも脳裏に焼き付いていた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――



「また妄想でもしてるのか?セツナ」


目を開けると、目の前に(ナギ)が僕の顔を覗き込んでいた。

僕はびっくりして地面に倒れ込んでいた体が、少し地面から飛び跳ね

また倒れ込んだ。

「いてて・・・。」

凪はそんな僕の姿を見てハハハっと笑いながらも心配そうな表情を浮かべていた。


彼の名は倉本凪くらもと なぎ

凪は、僕が幼少期の頃に両親を亡くした頃に

この街で出逢い弟のように面倒を見てくれて

そして色んな事を僕に教えてくれ

色んな事から僕を守ってくれた。


凪が僕に手を差し出して「立てるか?」とまた僕の顔を除き込み

僕は、凪の手を借りてゆっくり身体を起こし此処から観える景色を眺めた。


「もうすぐ1年だな・・・。」


1年。

それは僕がこの夢を見始めたの同時に、世界が大きく変わった事。

セツナと凪の見つめる景色は滅びた都市。

僕ら2人が、育った故郷だ。


◇1年前。

世界は、突如変わった。


記憶の断片(コネクト)”と呼ばれる前世の記憶が、多くの人々に甦り

記憶の断片(コネクト)”を鮮明に思い出した数だけ魔法が使える世界となった。

つまり前世の記憶を多く思い出した=魔力。


そして厄介な事に、この“記憶の断片(コネクト)”と呼ばれるものは、

前世の自分で在ったモノが、現代の自分自身を飲み込み、

まるで別人の様に変貌する者もいれば、

記憶の断片(コネクト)”を持つ者同士が()()()()で関わる事によりその記憶が鮮明に思い出す場合もある事がわかった事で、

より強い力を得て力を持ちたい者達が、なりふり構わず人々を襲い

そして争いが起き、そんな魔法使い達によって世界は大きく変わってしまった。


しかし僕には()()()宿()()()()()()

もしかしたらこの記憶は、凪の言う通り単なる妄想に過ぎないのかもしれない。



「そろそろ時間だ。」

凪はそう言って、滅びた故郷に進み始めた。

僕は凪の後を追い街への道を辿っていく。


両親が死んだあの日からずっと凪と共に生きて、この1年も生き残ってきた。

凪について行けば、この世界で生き残れる。

それが正しい事だ。


今日の食糧捜索を終え、故郷に帰る。


数十分の山道を下り、廃れてしまった僕らが暮らす街へと辿り着く。

この街では僕等と同じく魔力を持たない人々がひっそりと身を潜め隠れて暮らしている。

家族とはぐれた人たち。

家族だったもの達が家族でなくなってしまって取り残された人たち。

戦う意思を失った者たち。

他の街から逃げてきた人たち。


そんな中、凪が指揮を執り生きていく為のルールを作り助け合う環境を作った。

この街で一番若い凪と僕が街から出て食料を探し街に持ち帰り

大人たちはその食材で料理をしたり、廃墟となった家を人が住める程度に修復し

生きていく上で必要な環境を作り上げてきたからこそ生き残れた。


「凪、セツナ。今日もすまないね・・・。」

「いいって!俺達だってこの街の人たちには良くして貰ってきたから恩返ししてるだけだよ!」

凪の言葉に僕も頷く。大人達は僕らに感謝して少ない食料に文句もつけず

料理の準備に取り掛かる。


「こんな時に魔法があれば便利なんだけどね・・・。」

一人の老婆がその言葉を口にした瞬間、大人達の後ろに隠れるように潜んでいた

一人の男が激昴げきこうしながら老婆の方へ飛び出して老婆の服を掴み怒鳴りつけ始めた。

「魔法だ!?ふざけんな!!俺が住んでた街はあの魔法使い達によって滅ぼされたんだ!!あんなもの人を不幸にするだけの力だ!!」

凪が男を止めに入り、続けて大人達も男を取り押さえ始めた。

押さえつけられた男は、興奮状態で凪や大人達を振り解こうと暴れまくり

凪が大勢を崩した瞬間、大人達もその場に倒れ込み

男はその隙に立ち上がり凪を睨みつけその場から去っていった。


「大丈夫?」僕が凪に声をかけると、へへへと笑い立ち上がり

「仕方ないよな。あの人だって俺達と一緒で魔法使いによって住んでた街を滅茶苦茶にされてここに辿り着いたんだ。そりゃ魔法って言葉を聞くだけで怒りたくなるよな・・・。」

そう言って凪は老婆に怪我はないか確認し、大人達に頭を下げ

僕を連れてその場を後にした。


「今日はもう遅いし、また明日あの人と話そう!」

凪がそう言って僕らは自宅へと帰宅した。


時同じ頃、男は自宅でうずくまっていた。

激しい頭痛が彼を襲っていた。


悲痛の叫びを聞きつけ近所の住民が彼の家を訪ねてきた。

「おい!大丈夫かあんた!?」

駆け寄ってきた住民を男が睨みつけた瞬間、住民は急に悲鳴を上げたと

想えば傷だらけでその場に倒れ込んだ。


「な、なんだあんた!?今何しやがった!?」


男はその姿を見て冷静さを取り戻した。

いつの間にか頭痛が収まっている。

そして男の脳裏に、知りもしない記憶が過っていた。

男は住民に近寄り騒ぎを起こさぬよう右手で住民の口を塞いだ。

「・・・なるほど。確かにこの力があれば好きに使いたくなるよな。」


男はニッコリと微笑み、住民を自室へ引きづり込んでいった。

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