大樹の下で
セツナが目を覚ますと、そこには先程までの風景とは
まるで違う世界が広がっていた。
朽ちかけていたフロアが、木々のツタや茨で覆われていた。
瓦礫の僅かな隙間でどうやらセツナは、巻き込まれずに助かったようだ。
微かに覚えている気絶する前の記憶。
暴走したランギクを止めようと前に出た瞬間
自分を何者かが押して助けてくれた気がした。
瓦礫の隙間から、手探りに出口を探す。
僅かな光を頼りに動かせそうな瓦礫を動かしていくと
先程まで戦っていた玄関ホールに辿り着いた。
中央には大きな大樹が怯え立っていた。
そこから茨やツタが伸びていて、
どうやらセツナは、隣の部屋まで吹き飛ばされていたみたいだ。
巨大な大樹の圧倒間にセツナは息を吞んだ。
初めて見る大樹に、この大樹が先程まで一緒にいたランギクという事実。
夢でも見ているようだった。
ガサッ。
セツナが呆気に取られていると、セツナがいる大樹の裏側で物音が聞こえた。
恐る恐るツタや茨を掻き分けながら確認するとそこには、
茨に絡まった傷だらけの女の子の姿。
その姿を見た瞬間にセツナは、とある少女を思い浮かべた。
夢で見るあの少女。
「大丈夫!?」
セツナは、辺りを見渡し茨を斬るものを探す。
すると茨に絡まった凪の剣を見つけ、必死に茨を手で外そうとするも
茨は分厚く棘が手に刺さり中々外れない。
「くそッ!!」
凪の剣を一旦諦め、少女の元に戻り少女に絡まった茨を棘が刺さり
傷つきながらも両手で外そうとする。
「おぃ!あんた!!しっかりしろ!!くそ・・・なんとか・・・何かないのか!!」
諦めかけたその時だった。
先程セツナが大樹を見た場所の方から
カツッ。カツッと足音が聞こえた。
「“煉逆”」
その一言が聞こえた瞬間だった。
幸い裏側にいたセツナと女の子は大樹に守られたが表側の茨もツタも瓦礫も斬撃で吹き飛んでいく。
「なんだ・・・。今の・・・。」
足音は、ゆっくりこちらへ向かってくる。
セツナが構えると、そこには仮面を被り腰の剣に手を添えている人物が現れる。
「・・・誰だ・・・?」
セツナが問うと、その人物は、「驚いた・・・。」と言って仮面を外す。
仮面を外すと短髪の自分と同じくらいの少年だった。
「まさか生き残りがいたとは・・・。」
「・・・人間?」
少年は、少し苦笑いを浮かべ愛想笑いをして答えた
「人間・・・か。まさか同じ人間にそんな問い掛けさせるなんてね。」
「僕の名前は、アスター。良かったらここで起きた事を教えてくれないかい?」