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この復讐は魔法が解けるまで。  作者: ウキイヨ。
第2章 森の国
12/13

ランギクの物語

――――――――――――――――――――――――――――――――――


誰に、育てられたのか。

何故、此処にいるのか。


ただ、覚えているのは、

物心がついた頃に

僕以外の同い年位の子供達と一緒にいた。


そして気づけば僕は、この森に辿り着いていた・・・。


――――――――――――――――――――――――――――――――――



ランギクは、セツナの姿を見て唖然としていた。

彼も敵なのか。この禍々しい覇気は、なんなんだ。

それにあれ程強かった男が一瞬にして倒れ込んだ・・・。


思考が、追い付かないまま。

オーラが消え倒れ込むセツナに、恐る恐る近づいた。


「・・・おぃ。君!?」

よく見るとセツナの右腕が、火傷しているのを発見し

ランギクは、早急に薬草で応急処置を始めた。


「火傷に効く薬草だ。少しは、楽になると想うよ。」

「――悪い。ありがとう」


「君は、一体なんなんだ・・・。」

「――わからない。」

「え?」

「凪といつも一緒だったのに、あの日から生き残った子供だの。逢った事ない女の子が、頭に浮かんで助けを求められたり。おまけに今さっきの魔法だ。」

「・・・凪。確かさっき僕に聞いた人かい?」


「そう。俺の兄ちゃんみたいなもんだ」

「・・・そうか。実はこの国で、人間に逢うのは、2回目なんだ」

「2回目?」

「そう。ずっとこの森で暮らしてた。周りは、皆動物達と植物だけ。いつの間にか、彼等が、僕を支えてくれて今日までなんとか生きてこれた。」

「じゃあその1回目は??」


「僕が、動物達と話せるようになったのはね、ある日この森に訪れた人がいてね。あの人が、魔法の使い方を教えてくれたんだ。植物に、力を宿したり」

「・・・へぇ。その人は、今何処に?」


ランギクは、少し困った顔をした。

「各地を旅してるらしいんだ。だからここにいた時間も覚えてない位だった。確か名前は、()()()()・・・。」

「そっか。また会えるといいな。」


少しの沈黙の時が流れ、ランギクは、傷ついた動物達をセツナの様に

応急処置し始めながら、セツナに問いかけた。

「これから君は、どうするんだい?」

「・・・そうだなー。やっぱり他の人達に会いに行こうと想う。」


「そうだ。確か7人の子供達を探すとか言ってたね。」

ランギクは、思い出したかの様に、自分の生い立ちを話し始めた。

「そう言えば僕もこの国に来る前に、同い年の子達と一緒にいたんだ」

「そうなのか!?その子供達は??」


「確か・・・。」

思い出そうとしたランギクの言葉が、詰まりランギクの様子が一変した。

「ランギク?」

急に、汗が額から流れ、頭を抱え始めた。

「おい!大丈夫か!?」


「子供達・・・?凪・・・?セツナ??」

ランギクの頭に過った記憶。


同い年位の仲間達と、共に生きる為に、故郷を去り

必死で逃げた先で、一人。また一人と黒い魔道士によって

殺されてしまった記憶。


自分達を護って、真っ先に囮となった年上の凪。

そして、突如姿を消した()()()

その次だった。自分の番は。


次に、我に返った時。

動物達を取り込み、館ごと飲み込む位に、

自分の魔法が暴走し始めていた。


必死で、自分の名前を呼ぶセツナの姿が見えた。

それを止めようとする人影と、その人物を呼び止める声も聞こえた。


『そうか・・・、凪君。あなたの想い。思い出しました』

『あなたは、また僕達を護ろうとしてくれたんですね。』


一瞬だった。黒い影が、セツナと止めに入った人物を覆ったのは。

一瞬だった。ランギク自身が、暴走した魔法と共に、

館を呑み込み、この国をも飲み込んでしまった。

大きな大樹となった。


その大樹の下に、一輪と咲いた白い乱菊。


この国を護ろうとした少年は、いつか憧れた優しかった仲間に憧れ。

悪い魔法使いから、動物達を護り続けた。


この物語は、誰にも語られる事もない。

人間も、動物も存在していたかも、この国で起きた事を知る者もいない。

深い、深い森の国の物語。





記憶。

時に、自分の身に覚えのない出来事が、

まるで、本当に起きたかの様に、鮮明に頭を過ぎる。

あれは、夢で見たのか。将又はたまた、忘れてしまっているのか。



僕の不確かな記憶の淵に、映る記憶は、

お洒落で、凛々しく。よく女の子と揶揄からかわれる程、綺麗な容姿だった男の子。

ランギク。

深い森の中で、静かに。

黒魔道士に殺された。仲間の一人。





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