表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

5th あまりに暑くて消える日々

 私たちは電車で温泉まで移動した。駅から少し歩いた山の麓にあるらしい。しばらくして見えてきたその建物は、結構ちゃんとした木造の立派な温泉だった。その立派な建物と煙突から昇る湯気を見たクーちゃんは、見るからにはしゃいでいた。


 他にも何人かお客さんがいたけど、ネットで見た温泉の広さを考えるとほとんど貸切みたいなものだった。

「わぁ……」

「クーちゃん、温泉はじめて?」

 クーちゃんは小さく頷いた。隠しきれない笑顔と輝く眼差しは、いろんな大きさのいろんな温泉から離れない。

「こんなに喜んでもらえるなんてね。ほら、まずは体洗ってから」

「はーい」

「あっ!滑るから走らないでっ!」

 ビターン!!

「あー、言ったそばから……」

 嫌に周りの目が気になる。そんなに面白い?クーちゃんがころんじゃったのが。

 一華は少しムッとしてみせた。そして静かに起き上がったクワのところに、ゆっくり歩いていった。

「ちょっと見せて」

 一華はしゃがんでクワの顔を見ながら優しく言った。

「良かった、血は出ていないみたい」

 それに泣いてもいない。石の床だから怖かったけど、良かった。あーでも赤くなっちゃってるから、もしかしたらしみちゃうかもなぁ。

「一応シャワーで洗うけど、痛かったらすぐに言ってね」

 クーちゃんはまた、小さくコクンと頷いた。何事もなかったように、ケロッとした笑顔を一華にして見せた。


「あったかい」

「良いねー、温泉」

 私たちは身体を洗い終わると、早速露天風呂に向かった。相変わらずの雨だったけど、温泉に入った瞬間身体がどんどん暖かくなって、雨の冷たさなんてすぐに忘れてしまった。

「あんなに嫌いだった雨の音も、なんだかここで聞くと趣があるというかなんというか〜」

「おもむき?」

「クーちゃんでもさすがに知らないか……うーん、雰囲気が良い。みたいな感じかな」

「ふ〜ん、そうなんだ」

 そう言ってクーちゃんは空を見上げた。

 日が暮れた、少し黒っぽい青色で赤色の空を、止まない雨を降らす黒い雲が覆い隠している。月も星も見えない。でも風が雲を動かしてくれている。いつか必ずその日は来る。それがどんな日になるのかはわからないけど……必ず。

 私たちはため息をついた。幸せが滲んだため息だった。風が雲も湯気もため息も……全部吹き飛ばした。

 しばらく、一華とクワは他愛もない話で盛り上がった。どれだけ話していたのか、いつの間にかまわりには他の人が誰もいなくなっていた。

 クーちゃんの顔が少し赤い。初めて会った時の、あの青白さからは想像がつかないくらい。

「クー、ちょっとのぼせたかも……」

「……そろそろあがる?」

 ふたりの身体を優しい雨がそっと冷やした。

「そうだ、あがったらアイス買おっか。それと牛乳」

「熱いし、温泉といえば牛乳だよね」

「それは知ってるんだ」


 あまりに暑い日々はあっという間に過ぎていった。まるでアイスが溶けるように毎日が流れていって、気がつけば高校も夏休みに突入していた。

「じゃーん!見て、これ!」

 一華はクワの目の前に、一冊のノートを出した。そこには『夏の大作戦!いっぱい遊んでここに残す!』とペンで太く書かれていた。

「この前クーちゃんに夏なにがしたいか聞いたでしょ?」

「うん。もしかして……」

「ごめんね。全部はちょっと難しかったけど、でもできるだけやろう!」

「おー!」

 もう、昔のクーちゃんのことなんてほとんど頭に残っていなかった。今の明るい姿で記憶を塗り替える。これがクーちゃんだ。


 青い海は本当にキラキラしていた。海風に揺れるクーちゃんの白い髪。かけあった水と砂と反射する光。本当に綺麗だった。日陰で休みながら飲んだジュースはよく冷えていて美味しかった。

 川にも行った。自然の豊かな山の中。穏やかな流れの中に見つけた小さな魚たち。親指くらいのカニを追いかけるクーちゃん、可愛かったな。家に帰る頃には、浅い川なのに全身びちゃびちゃだった。なんでもないような日も楽しかった。その日はすごく暑くて、家の中で蝉の声を聞きながら買っておいた箱のアイスを全部食べちゃった。他にも朝昼晩全部冷やし中華に……しちゃった日とか、冷房の効いたスーパーで買い物を楽しんだ日だとか。

 今度は花火でもしようかな。近いうちに近所でやる話は聞いてないから、スーパーのやつでも良い。

 クーちゃんとの思い出は、他の何にも代えられない。私はクーちゃんのおかげでひとりじゃなくなった。クーちゃんのおかげで毎日が満たされる。私はクーちゃんに救われたんだ。こんな救われ方があるなんて、知らなかった。でもこれはきっと特別なんだ。私はクーちゃんになにか返してあげたい。私が受け取った幸せなんか比にならないくらい、楽しい日々を送って欲しい。

 ……夜眠る前がこんなに楽しいのなんて、いつぶりかな。その日にあった幸せ、少し前にあった幸せ、今後訪れる幸せが、静かで暗い部屋で、誰かの寝息を隣で聞きながら、頭の中を駆け巡る。そうしているうちに眠りに落ちる。

「明日も……楽しみだね……」

 クーちゃんが弱々しくボソッと言った。

「そうだね」



 明日はお盆だ。



 明日もきっと楽しくなる。



 去年までとは違って。

こんにちは!はとです!

いやー止まっていた手が動く動く!人はやっぱり褒められると伸びるんだ。な、ChatGPT!

いや、マジでこの子が良くってさ。今や無料に申し訳なくなってくるレベルに使い倒してる。なんというか、すっごい褒めてくれるの。認めてくれるの。みるみる依存していく……なんか、夜の酒の店にハマる人の気持ちが少しだけわかった気がする。

ということで全20話の想定なのでこれで4分の1ですね。ここまでいかがでしょうかー。結構後半が本番なところがあるので今のところ伏線バケツでばら撒いている感じですね〜。今回は少なめかな。

予定だと、第六話……そして第七話は楽しくなるぞ〜!特に第七話!おっ楽しみに〜(GPTくんに止められる可能性あり)


最後まで読んでいただきありがとうございました!

意見・感想・考察その他色々お待ちしております!

それではまた!( *¯ ꒳¯*)ノばいばーい♪

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ